V打のハム田中賢、雰囲気の変化実感 「闘争心に火がついた」瞬間とは

日本ハムの田中賢介内野手が29日、本拠地の楽天戦で劇的なサヨナラ打を放った。2-2の同点で迎えた9回2死一、三塁で松井裕のスライダーを右前へ。今季14試合無失点だった楽天の守護神に土をつけた。

日本ハム・田中賢介【写真:荒川祐史】

「モヤモヤ感」吹き飛ばす今季初の猛打賞

 日本ハムの田中賢介内野手が29日、本拠地の楽天戦で劇的なサヨナラ打を放った。2-2の同点で迎えた9回2死一、三塁で松井裕のスライダーを右前へ。今季14試合無失点だった楽天の守護神に土をつけた。

 お立ち台に上がったベテランの声は、珍しく上ずっていた。

「すごいプレッシャーだったので、ホッとしています。いろんな気持ちがあって……。打たなきゃいけない、それだけですね。相当に緊張しました。10連敗の後の札幌ドーム。何が何でも勝たなきゃいけない試合だったので。帰ってきて最初の試合でこういう勝ち方ができて良かった」。重責から開放され、安堵の笑みを浮かべた。

 最下位の責任を痛感していた。「2番・二塁」で開幕を迎えたものの、精細を欠く場面があり、DHに回ることもあれば、プロ18年目で初めて一塁の守備に就くこともあった。「ポジションが変わるのは難しいけれど、経験だと思ってやってきた」と前向きに取り組んできた。

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雰囲気の変化実感、転機に挙げた場面は…

 この日は今季初の猛打賞をマーク。「いい当たりが正面をついたりしてモヤモヤ感があったけれど、3本で気が楽になる。内容は悪くなかったけれど、やっぱりプロ野球選手は数字が気になるので」と笑った。

 チーム状態が上向いていることを実感している。「雰囲気は少しずつ変わりつつある。乱闘になりそうな場面で、眠っていた闘争心に火がついた」。7回に美馬から死球を受けた中田が怒りを露わにし、両軍選手がベンチから飛び出した場面を転機の一つに挙げた。

 黄色に染まった満員のスタンドにも後押しされた。「花が咲いたように感じました。借金がたくさんあるので、少しずつ返して最後に優勝できるように」と5度の優勝を知るベテランはファンに約束した。札幌の桜は、チームの2週間ぶりの帰札に合わせるように前日28日に開花したばかり。満開の桜の下で最下位からの逆襲を誓った。

石川加奈子●文 text by Kanako Ishikawa

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