4試合で4本塁打…今季1軍で覚醒した「2軍の強打者」ソフトバンク上林

ソフトバンクの上林誠治が目覚ましい働きをしている。本来、外野手登録の内川聖一が一塁手で出場しているため、柳田悠岐、中村晃と共に外野を守って、代打を含めると29試合中26試合に出場。規定打席には未達だが、5月2、3日に2試合で3本塁打10打点の大暴れをして、外野の一角に手を掛けようとしている。

ソフトバンク・上林誠知【写真:荒川祐史】

2軍屈指の強打者だった上林、15年には首位打者、最多安打、盗塁王を獲得

 ソフトバンクの上林誠知が目覚ましい働きをしている。本来、外野手登録の内川聖一が一塁手で出場しているため、柳田悠岐、中村晃と共に外野を守って、代打を含めると29試合中26試合に出場。規定打席には未達だが、5月2、3日に2試合で3本塁打10打点の大暴れをして、外野の一角に手を掛けようとしている。

 上林は仙台育英高校から2013年ドラフト4位でソフトバンクに入団。4年目だが、昨年まで2軍暮らしが長かった。2年目の2015年には打率.343でウェスタン・リーグの首位打者を獲得。最多安打、盗塁王も受賞。
3年目の昨年は打率こそ.247だったが、12本塁打、57打点の成績で、2軍屈指の強打者だった。

 しかし、3軍まであって層が厚いソフトバンクでは「2軍の強打者」でも、なかなかポジションが獲得できないのが現実だ。

 ここで、過去3年のウエスタン・リーグの安打数ランキングを見てみよう。

○2014ー16年ウエスタン・リーグの安打数ランク
           試合  安打  HR   点
1.塚田正義  (ソ)  298  317   30   165
2.猪本健太郎 (ソ)  285  282   44   165
3.武田健吾  (オ)  271  244   16   88
4.牧原大成  (ソ)  172  226   6   79
5.カニザレス (ソ)  241  225   40   137
6.堤裕貴   (オ)  267  225   5   59
7.釜元豪   (ソ)  250  213   6   79
8.奥浪鏡   (オ)  274  209   19   104
9.陽川尚将  (神)  230  207   23   116
10.古本武尊 (中)  259  201   17   116
12.上林誠知 (ソ)  195  199   22   104

 上位10傑に、実に5人もソフトバンクの選手がひしめいている。ソフトバンクは、2012年からウエスタン・リーグで5連覇。今季も首位を走っているが、打線も投手陣も圧倒的な戦力を誇っている。塚田正義、猪本健太郎、昨年限りで退団したカニザレスという中軸は、リーグ最強だった。上林や釜元も含めて、圧倒的な戦力だったのだ。

 しかし、ソフトバンクの1軍も分厚い戦力を誇る。2軍で好成績を上げても、なかなか1軍で活躍するチャンスが巡ってこなかった。こういう形で強豪チームでは、「2軍の強打者」が日の目を見ないケースが散見される。

1軍昇格のチャンスに恵まれずに引退したロッテ青松

 イースタン・リーグの過去3年の安打数ランキングを見てみよう。

○2014ー16年ウエスタン・リーグの安打数ランク
            試合  安打  HR   点
1.青松敬鎔(ロ)    305   287   41   169
2.松本剛 (日)    250   258   11   91
3.岸里亮佑(日)    291   254   6    58
4.加藤翔平(ロ)    199   253   21   105
5.山川穂高(西)    216   238   54   173
6.三好匠 (楽)    234   217   19   118
7.井上晴哉(ロ)    181   216   36   136
8.石川慎吾(日・現巨) 202   214   21   104
9.辻東倫 (巨)    260   214   6    72
10.中川大志(楽)    238   210   20   123

 最多の287安打を打っていたロッテの青松は、昨年限りで戦力外となった。「2軍の強打者」のままキャリアを終えたのだ。ロッテの井上晴哉や加藤翔平、西武の山川穂高などは、1軍でも活躍し始めているが、一方で、チャンスに恵まれず、青松のように球界を去るケースもある。

 ドラフト上位で入団した選手の中には、1年目のキャンプで頭角を現し、開幕1軍、スタメンと順調に出世して、2軍知らずでレギュラーになる選手もいる。昨年の楽天・茂木栄五郎や、今年の西武・源田壮亮などがそうだ。

 しかし、ロッテの井上のように与えられたチャンスを活かせなかったり、評価が低くて1軍ロースターに入ることができなかった選手は、2軍でも厳しい競争に勝ち抜かなければならない。「2軍の強打者」は、実力だけでなく、こうした事情や運も作用して誕生するのだ。

 上林が強打者ぞろいのソフトバンク2軍で抜擢されたのは、好打、快足に加えて、21歳という「若さ」が大きかったのではないかと思われる。

 MLBでは、マイナーで好成績を上げているのにメジャーに昇格できない若手選手が他球団で新たなチャンスを得られる「ルール5ドラフト」とい制度がある。他球団に移籍した後にレギュラーの座を獲得し、スター選手になった例もたくさんある。

 NPBにもこうした制度があればいいかもしれない。

 1人でも多くの「2軍の強打者」が、1軍で活躍の機会を得てほしいと思う。

広尾晃●文 text by Koh Hiroo

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