【神戸製鋼・アルミ板事業で大型投資】〈金子明副社長(アルミ・銅事業部門長)の一問一答〉米ノベリスとノウハウ共有 自動車パネル母材を中国拠点に供給

 神戸製鋼は10日、ノベリスとの提携や真岡製造所の増強について会見した。金子明副社長(アルミ・銅事業部門長)の一問一答は次の通り。

神戸製鋼所・金子明副社長

――ノベリスとの提携に至った経緯は。

 「提携交渉は16年11月ごろから本格的に検討を開始した。非常に短期間で合意に至ったと認識しているが、当社は20年以降の需要見通しに対して生産能力が不足するという大きな課題を抱えており、その解決に向けて時間が掛かっていた。対してノベリスは蔚山(ウルサン)工場の低稼働という課題を抱えており、両者の思惑が一致したのでスムーズに話し合いが進んだと思う」

――さまざまな選択肢があった中で、なぜノベリスと?

 「歴史的にはアルコア(現アーコニック)との関係が強かったという指摘もあるが、資本関係があるわけではないのでオープンな姿勢でさまざまな企業と交渉に臨んだ。母材を他社から調達するという計画ももちろんあったが、折半出資の自前の工場を持つことは、現場への影響力や品質に対する信頼性が格段に違ってくる。またノベリスは米国(UACJとのローガン工場)や欧州(ハイドロとのアルノルフ工場)などの地域でJVを実施するなどノウハウを持つ企業だと認識している」

――工場の運営はどのように。

 「生産機能のみを持つ蔚山では両者がノウハウをオープンにしてより良い母材を作っていくという形となる。技術の流出という点について懸念を抱くが、自動車パネルは熱処理などの下工程が非常に重要でこれは天津などで行うので心配はしていない。なお蔚山におけるノウハウは、他工場で使用しないという契約を結んでいる」

――自動車パネルの需要見通しは。

 「日本と中国は16年時点で年間4万~5万トン規模の市場だが、昨今の自動車軽量化ニーズを追い風にして25年には年30万トンレベルまで拡大する可能性があるとみている。今回は真岡製造所にも国内では初めてであろう、自動車パネル専用の仕上げラインを増設する。これは年産能力10万トンで天津拠点と同規模のもの。国内の需要の伸びに対しても積極的に対応していく」

――ウルサン・アルミナムの今後のスケジュールは。

 「9月の会社設立後、速やかに天津拠点へ母材を供給し、顧客の認証作業に入る考えだ。顧客によって違いはあるが、認証には1年程度の時間が掛かるのが一般的。ただし、蔚山の材料はノベリスが中国・常州の拠点に母材として供給しているので、品質面での信頼がある。前倒しで作業を進め、より短期間で認証を取得できるように取り組む」

――韓国から米国への母材輸出の可能性は。

 「蔚山は中国と日本を意識した工場であるので、米国への母材拠点としてはまったく今は考えていない」

――日本と韓国で年産50万トンの生産能力を持つことになりました。

 「もともと真岡製造初にしかアルミ板を造る能力がなかったが、韓国に折半出資の工場を持つことで、この数年間の最大の課題だった〝生産能力不足〟にめどをつけることができた。国内35万トン、韓国15万トンの50万トンという数量であれば、20年以降の我々が予測する数量をカバーできると見ている」

――4月末に発表した米国のアルミ鍛造拠点の増強と合わせると、自動車軽量化というテーマに対して約700億円の投資を実施します。

 「大きな投資にはなったが、種まきという意味ではまだまだ。今後もさまざまな選択肢を持って取り組んでいきたい」

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