【発言】韓国は北が吸収、仏も暗い未来

国際政治学者・藤井厳喜氏

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国際政治学者の藤井厳喜氏

 フランス(7日)、韓国(9日)と世界的に注目された大統領選が続いた。これらを受け世界はどうなるのか、日本にとってはどんな意味があるのか。昨年の米大統領選で、専門家としてほぼ唯一トランプ氏勝利を予測した国際政治学者の藤井厳喜氏(64)に聞いた。

 ▽吸収合併

 ―韓国では、北朝鮮の核・ミサイル危機が叫ばれる中、対北融和を唱える左派の文在寅氏が当選した。

 「韓国は国家によって国民の大切な価値を守るということがついにできなかった。北の独裁政権によって吸収合併される道を歩み始めた」

 「文氏は選挙戦中、米国が対北先制攻撃を決断したらどうするかと聞かれ『北朝鮮に伝え、米国には攻撃をしないよう説得する』と答えた。同盟国の米国を裏切るということだ。文氏は、韓国の保守政権の対北政策が危機の誘因だとする北朝鮮と同じ主張をしていた。今後は、北朝鮮に無限に妥協していくだろう。任期5年のうちに一国二制度までいくだろう」

 ―米国は韓国を見捨てるのか。

 「韓国は、米国が第2次大戦後に李承晩(初代大統領)を連れてきてつくり、朝鮮戦争では米軍が数万人の犠牲を払って守った国だ。米軍がいなくなればおしまい。酷な言い方だが、韓国の運命を決めるのは韓国人ではなく米国だ」

 「米国が朝鮮半島から引き揚げる選択をすることはあり得る。経済合理主義的に、中国にこびる韓国にコストをかけ守る必要はないと判断した時だ。トランプ流に言うなら、不良資産の処分といったところか。その場合、今は北緯38度にある防衛ラインを対馬海峡まで下げ、中国、ロシアに対処することになる」

 ―米軍による北朝鮮への軍事行動は。

 「現在はトランプ氏が、中国に経済制裁で北朝鮮に核放棄を迫る試みをさせており、小康状態だ。ただこれはうまくいかないだろう。トランプ氏は年内に訪中予定でそこまでは軍事行動はない。習近平氏との首脳会談で何らかの結論を出す。そこで様相はガラッと変わるだろう」

 ▽国家否定

 ―フランスでは、親欧州連合(EU)のマクロン氏が、反EUや厳しい移民制限を掲げたルペン氏に勝利した。

 「フランス国民の生活は悲惨なことになるだろう。まず治安がますます悪化する。マクロン氏は、ルペン氏が唱えたような国境検問復活といった具体的、厳格なテロ対策はしない。移民、難民の流入を適切にコントロールすることはできない」

 「経済面の見通しもよくない。ルペン氏はEU残留か離脱かは国民投票で決めるとしていた。それなら、EUの実質的盟主ドイツはフランスを引き留めようと、これまで決して認めなかったユーロ共同債発行や財政規律緩和といった妥協に踏み切った可能性が高い。しかしマクロン氏相手なら妥協の必要はない。マクロン氏はかつて『メルコジ』と言われたサルコジ前大統領以上にドイツのメルケル首相べったりになるだろう」

 ―ルペン氏当選なら、EUが一気に崩壊に向かうのではとの懸念もあった。

 「EU維持派は、今回の結果を喜んでいるだろう。しかしEUに未来はあるのだろうか。私はEUができた時、これは欧州人の幸せ、利益を作り守るための超国家的国家になるのだろうと思った。が、そうはならなかった。EUは秩序の根本たる国家を否定、破壊する方向に向かった。グローバリズム幻想の中でボーダーレス経済を進める単位としてしか機能してこなかった」

 「現在、英国に続くEU離脱に近づいているのはイタリアだ。早ければ年内にも総選挙が予定されており、来年以降はイタリアを中心にEUの混乱が続く展開となるだろう」

 ▽本音と建前

 ―日本にとっての教訓とは。

 「韓国の文氏勝利は、日本の憲法改正を4歩も5歩も前進させたのではないか。日本人も国防の現実を見つめて、今までのやり方を反省し、必要な決断を下していくためのいい契機になるはずだ」

 「北朝鮮があれだけ核・ミサイル開発を行い、韓国が北朝鮮との一体化を志向するような大統領を選んだ。5年以内に一国二制度ができ、10年後には北優位での統一もある状況だ。その時には竹島(島根県)や釜山にミサイル基地ができ、難民が大量に押し寄せるだろう」

 「本音は安い労働力として、建前はヒューマニズムで移民、難民を受け入れてきた欧州諸国がどうなったか、われわれは実際に目にすることができる。そうした状況にあって、英国はどうしたか、フランスはどうしたか、それらの選択の結果はどうなるのか。日本自身の危機管理のために注意深く観察する必要がある」(聞き手 共同通信=松村圭)

 藤井厳喜氏 1952年東京生まれ。早大政治経済学部卒業。米クレアモント大大学院を経てハーバード大大学院で政治学博士課程を修了。現在は「ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ」代表取締役。近く飯柴智亮氏との対談本「米中激突」を刊行。

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