【神戸製鋼の技術経営・コングロマリット経営の将来展望(中)】〈川崎博也会長兼社長〉「複合経営モデル転換」

「独自路線で十分やれる」

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――高炉は今年の10月31日に加古川に集約しますが、次の改修時期はいつごろでしょうか?

神戸製鋼所・川崎会長兼社長

 「第2高炉は2007年に巻き替え(改修)したので、20年程度持つとすれば2030年ごろで今から10年後ぐらい。そろそろ検討を始めなければ、との意識を持っている」

――今の設備の問題を含めて神戸製鋼の、さらには、日本高炉メーカーの10年後を展望した技術課題をどう考えていますか?

 「製鉄そのものの技術をどうするかという課題がある。例えば、今は焼結に向くような良質原料が枯渇してきている。原料品位の変化にどう対応するか。これはまだ深刻ではないが、どこかで深刻になってくる技術課題だと思う。この課題に対しては、当社の特徴で言えばペレット工場を持っていることが大きい。歴史的には、焼結に乗り遅れたから焼結向きでない劣質原料を使うペレットに入っていったのだが、ペレットのオペレーションで培った技術や経験を焼結に活用・応用できるかもしれない」

――なるほど。

 「また高炉設備の維持、寿命判断も課題だ。高炉設備の改修スケジュールは、今まで炉底レンガ(耐火物)の寿命年数が律速してきたが、耐火物そのものが改質されている。将来は、レンガの寿命ではなく原料装入設備など含めて構成機器を総合的に見ながら判断することになるだろう」

 「高炉改修には数百億円のコストがかかる。当社は高炉を3基から2基に集約するが、これはそうした将来にわたる改修コストを抑えたいとの意味合いもある。改修コストのかかる高炉の数を減らしても、粗鋼量をある程度維持しようとすれば出銑比を上げなければならないが、リスクも高まる。ここにも課題がある」

 「CO2排出量削減も課題の一つ。国家プロジェクトで進んでいるCOURSE50の技術をどこかで導入・移植してCO2対策をしていくことになるだろう」

――韓国・中国の鉄鋼メーカーの技術力の追い上げをどう認識していますか? 日本の鉄鋼メーカーと比べて、どれだけ差があるでしょうか。

 「高炉(製銑)は同じレベルではないか。製鋼の吹錬(精錬)以降のプロセスに関しては差があると思っている。いかに高度な、難しい品種を造れるかに関して違いがあると思う。例えば、高強度、高加工性といった性能を有するハイテン鋼板で差があるだろう。特殊鋼線材に関しては鋼板よりももっと差があるのではないか。しかしながら、中国でもハイテン鋼板でいえば590メガパスカル級を自前で造れる会社は増えてきているし、確実に底上げは進んでいると思う」

――そこには強い危機感を?

 「当社は中国の鞍山鋼鉄と合弁で自動車向けハイテンを生産する合弁会社の設立を13年に決めたが、その当時と現時点で比べて、中国ミルの製造実力が上がっている。この3年間で危機感は増した。当社としても、ISMAプロジェクトなども活用しながら、高強度・高加工性を両立した次世代ハイテンの開発にスピード感をもって進めていく必要がある」

――ひとまず区切りをつけて、次に神戸製鋼の複合経営・コングロマリット経営についてお聞きしたい。世界の鉄鋼メーカー、金属素材メーカーを見渡して、これほど幅広い業種を手掛けている企業は珍しい。

 「総合商社である鈴木商店から始まる当社の歴史を振り返ると、いろいろなメニューを持っているのが当社のDNA。他社から見れば稀有だろうが、さまざまな事業を手掛ける会社であるのが当社としては当たり前であり、複合経営で強みを発揮していく」

――日本の鉄鋼・非鉄金属で再編の動きが加速する中で「乗り遅れた神戸製鋼」との見方もありました。

 「当社の強みを生かせば、独自路線で十分にやっていけると当時も思っていたし今でもそう思っている。ただ、これまでの複合経営というかコングロマリット経営は十分ではなかった面がある。複数の事業を持ち、プラスの事業もあればマイナスの事業もある中で、プラスとマイナスを相殺してプラスが残るのがコングロマリットの強み・メリットであるはずだが、当社の過去の利益はそうなってはいない。過去30年間の業績を振り返ると経常損益で赤字が6回。最終損益では赤字が12回。3回に1回が赤字では…ね。複合経営のメリットが発揮できていない」

――はい。

 「やはり利益レベル、絶対額が低いということ。過去30年間の経常利益の年平均額は500億円に届いていないし、中国バブルで経常利益が1800億円超にもなった05~07年度の3年間を除けば、平均値は300億円強にすぎない。その程度の利益しか出せないことをコングロマリットのメリットと言えるのかと。(少し間をおいて)それは明らかに違う。何年かに1回、無配になってしまうような今の利益水準ではいけない。複合経営モデルを転換したいと思っており、すでに転換に入っている」(一柳 朋紀)