「DVD=3」 エリック・クラプトン『ライヴ・イン・サン・ディエゴ withスペシャル・ゲストJ.J.ケイル』 おだやかな熱狂に酔う、2007年のライブ映像

エリック・クラプトン『ライヴ・イン・サン・ディエゴ withスペシャルゲストJ.J.ケイル』

 ロックにもギターにも詳しくない、私なんかが踏み入れてはいけない領域かな……と思いつつ、つい手にとってしまった。2007年サンディエゴで行われた、クラプトンUSツアーでのステージを収めた本作。ドイル・ブラムホール☆(ローマ数字2)、デレク・トラックスとともにトリプルギター態勢で臨んだ、スペシャルなワールドツアーのなか、この日はさらなる特別ゲストとして、クラプトンが「大きな影響を受けた」と言ってはばからないグラミー賞受賞アーティストJ.J.ケイルを招いている。

 ステージ上のどのメンバーを観ても超一流。最高に最高を重ねたような一夜だが、そこにいるクラプトンの表情は、まるで暖炉の脇でギターを爪弾いているかのようにリラックスしているのが印象的だ。彼を取り囲むメンバーも、またしかり。のちにバラク・オバマ元大統領の招きでホワイトハウスにてライブを行うことになるデレク・トラックスはこのとき27歳。すでに天才の名をほしいままにしていた彼だが、それでも父を見つめるように、ときおりクラプトンの手元を尊敬の眼差しで見つめているのが微笑ましい。

 会場を包む空気は、おだやかな熱狂、とでもいうのだろうか。奇抜な演出も派手な衣装もなく、ただただ良い音と素晴らしい技術に触れて震える。演者にも観客にもリスペクトを感じる、あたたかく豊かな時間が詰まっていた。

(ワーナーミュージック・ジャパン・4500円+税)=玉木美企子

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