【神戸製鋼の技術経営・コングロマリット経営の将来展望(下)】〈川崎博也会長兼社長〉「自動車向けスチール&アルミ狙う

電力が安定収益基盤になれば…「素材系、機械系でリスク取れる」

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――複合経営路線は肯定するが、今までの複合経営モデルでは駄目で、新たなモデル構築が必要だと。

神戸製鋼所・川崎会長兼社長

 「そうだ。前期は建機事業の中国での一過性の貸倒引当金の発生で大幅な損失となったが、それがあったからといって全社利益が赤字になるようでは駄目。(身を乗り出して)以前の複合経営がうまくいったから複合経営を続けたいのではなく、これまでの複合経営には課題があったが、そこから学んで、複合経営のメリットを享受できるモデルを構築したい」

――複合経営の難しさはどこに?

 「投資のプライオリティ(優先順位)をつけるのが難しい。どうしても素材系に傾きがち。投資額が1オーダー(一ケタ)違う。経営資源が分散するし、一つ一つの事業規模が大きくなりにくい」

――経営モデル転換の一つの策が電力事業だと。

 「絶対水準を上げるには、2023年度以降に400億円以上の経常利益を確保できる電力事業は大きい。当社のROS(売上高経常利益率)は5%に届いていないが、仮にROS5%として400億円から割り戻すと売上高8千億円に相当する。ROS10%だと4千億円。これは現状のアルミの売上高を超えるくらいのレベル感だ。これによって全社の利益レベルがグンと上がる。向こう20~30年先を見据えて、神戸製鋼の損益を赤字にしないために、電力事業は大きく貢献してくれると期待している。素材系・機械系・電力の3本柱で、安定的に利益を確保する事業モデルが描けるようになる」

――電力事業はリスクが極めて小さく、利益のぶれが少ないことが魅力。神戸製鋼の鉄鋼事業のノウハウがあったからこそ、できた事業でしょうか?

 「当社の場合、製鉄所で自家発電方式を採用していたのでノウハウが自社で蓄積できた。共同火力だったら、そうはいかなかった。だから神戸でも真岡でも、電力会社との合弁ではなくて独資でできる。1995年の阪神・淡路大震災が電力事業進出決断の背中を押したのは間違いないが、その前から戦略として狙っていた。法改正のタイミングを捉え、自家発電の経験をビジネスにつなげたのは大きな決断だった」

 「リスクがあるとすれば、将来の契約更改時に世の中がどういう環境にあるかだろう。ただ、どう転んでも赤字になるようなものではなく、極めて安定的だ。将来的には、これまで培ってきたノウハウを移転すれば、例えば海外での事業展開も考えられないことはない。技術的には独資でやれる技術とノウハウがある。まずは22年度までに計画している発電設備をきっちり立ち上げる。さらにその先もできることはあると思う。それ(経常益400億円)で終わりじゃない」

 「400億円以上と言っている数字を少しでも上積みして、安定収益基盤をつくる。そうすれば、素材系や機械系でもリスクを取って挑戦できるようになる」

――素材系はこの先どうやって利益を伸ばしますか?

 「重点分野は自動車の軽量化対応。日本でも中国でも米国でも、グローバルで自動車向けのスチール&アルミを狙う。アルミはパネル材に加え、サスペンション向け鍛造品やバンパー材向け押出材も拡大する。そのための戦略投資は、今中期計画(16~20年度)の5年間で1千億円と言っているが、それでは足りないぐらいだ。4月に自動車ソリューションセンターを設立したが、鉄とアルミの接合技術なども磨いて自動車メーカーからの採用拡大を目指す。20年度以降には、自動車の軽量化対応で、利益がどんと上積みできると考えている」

――最後に人の問題を。人材のダイバーシティ(多様化)、さらには働き方改革について。

 「国内はマザー工場であり、地域貢献の意味からも国内の生産拠点を減らす考えはない。となれば、労働者人口が減っていく中で『ものづくり力』をキープするには男性だけでなく、女性にも入社してもらわないと。新卒採用における女性比率の目標を掲げて取り組んでいるし、今年度入社でも目標を達成している。最近はCSRの一環としてトップの私が直接、学生に神戸製鋼について紹介する場を設けている。その中でも当社が働きやすい会社を目指しており、女性が特に嫌う長時間労働の是正にも以前から取り組んでいることを説明している。現在、女性の管理職比率は1・6%とまだ低いが、直に効果が出てくるはずだ」

 「当社の良さは自由闊達で個性的な社員が多いことだが、ここ最近のグループ経営を考えたときに、遠心力が強く働き過ぎた面がある。それが品質問題などの不祥事や事業会社の経営リスクにつながった面もあるかもしれない。いま一度原点に返って、次の100年を見据えて企業理念の見直しを行い、グループ求心力を高めるための取り組みを今年度から始める。風土改革とも言えるものだが、グループ従業員が自社に愛着を持ち、自信と誇りを持って働ける企業にしたいと常日ごろから思っている」

――長時間にわたり、ありがとうございました。(一柳 朋紀)