《追跡》学校史切り取り 何のため? 不安広がる

画像3冊の学校史と記念誌がそれぞれ4~8ページ切り取られていた

 群馬県立図書館(前橋市日吉町)が所蔵する小中学校の学校史や記念誌3冊の一部が切り取られる被害が発覚してから10日がたった。目的が不明なだけに関係する学校の卒業生に不安が広がり、図書館は公共物である図書を守ることと、閲覧の自由との間で対応に苦慮している。同様の被害は群馬県を含む少なくとも22都道府県で判明しており、専門家は学校生活に不満を抱く人物や詐欺グループによる犯行の可能性を指摘している。

■「気味悪い」

 「あっ。ページが丸々切り取られている」。9日、県立図書館の閲覧コーナーで職員が声を上げた。他県の図書館の被害を受け、学校史関連の書籍約200冊を調査していたという。

 被害に遭ったのは(1)榛名町立第七小の1974~81年度の卒業記念写真と卒業生名簿8ページ(2)長野原町立第一小の72~87年度の卒業写真8ページ(3)伊香保町立伊香保中の85年度の学校生活を記録した文集と写真4ページ。いずれもカッターのような刃物で切り取られていた。3冊は自由に閲覧でき、申請すればカラーコピーも可能だった。

 85年度に伊香保中3年だった男性会社員(47)=渋川市=は「どういう目的なのかが分からず、気味が悪い。特定の学年を狙って切り取っている可能性もあり、同級生らに状況を伝えたい」と心配そうに話していた。

 「貴重な郷土資料を傷付けられるのは、とても悲しく、憤りを感じる」。県立図書館の関口裕子調査相談係長は表情をこわばらせる。監視の強化は閲覧の自由を妨げかねず、利用者のモラルに委ねているのが現状だ。今回の件に限らず、図書の被害は少なくない。関口係長は「ルールを守って、気持ち良く利用してほしい」と訴える。

■「スリルか」

 全国の公立図書館の8割が加盟する日本図書館協会(東京都)は緊急調査を実施するよう加盟図書館に呼び掛けた。県内では被害が確認されているのは県立図書館だけだが、調査が進めば増える可能性がある。

 被害が全国に広がった今回の事件の背景は何か。東京福祉大の久保貴教授(犯罪心理学)は「学校生活に不満を持つ人物が恨みを解消するためか、何者かが切り取ることにある種のスリルを感じて犯行に及んだ可能性が考えられる」と分析。

 県警OBで、関東学園大の藤原重紀教授(警察法、刑事政策)は「何百枚も切り取られているケースがあり、合理的な説明がつかない。詐欺グループが悪意を持って切り取り、写真や名簿などがなりすまし詐欺に使われる恐れもある。関係者は注意が必要だ」と指摘する。

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