歴史公文書、東北の自治体で散逸危機

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空き校舎の体育館を活用した大仙市公文書館の大型書庫
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 東北の自治体で、歴史資料として価値を持つ公文書が散逸の危機にさらされている。統一的な管理ルールを定めた公文書管理法が2011年に施行後、青森、山形両県や大仙市が保存・公開のための施設を開設する一方、岩手県や大半の市町村では動きがない。専門家は「全自治体が歴史公文書を後世に受け継ぐシステムを作るべきだ」と警鐘を鳴らす。

 公文書は道路やダムなどの建設に絡む都市計画や土木の全記録、議会の各種議事録、学校日誌を含む教育文書など多岐にわたり、いずれも情報公開条例の開示対象になる。

 多くの自治体は内部規定で永年か30~1年の保存期間を設定。期限が来ると作成部署が事務的に延長・廃棄する。特に価値が高い歴史公文書を選別し、公文書館に移すシステム構築が長年の課題だった。

 法施行を受け、青森、山形両県が小規模な公文書センターを開設。先行して設置した福島、秋田、宮城と合わせ5県が公文書館機能を備えた(表)。福島は昭和期以降の目録作りが終わらず、開示対象は明治、大正期の歴史公文書と民間の古文書にとどまる。

 国立公文書館によると、公文書館は関東、関西を中心に37都道府県が設置済み。大仙市は今月3日、市町村としては全国で36カ所目、東北では初となる公文書館を開設した。仙台、横手両市なども設置を目指す。

 公文書管理の在り方と住民の知る権利を明示した条例制定も相次ぐ。秋田市は14年4月、東北の自治体で初の公文書管理条例を施行。新庁舎建設に合わせ書庫と歴史公文書専用の閲覧窓口を設けた。全国では同市を含め4県13市町が同趣旨の条例を定めている。

 東日本大震災の被災地では今後、震災関連の歴史公文書をどう保存・公開するかが焦点となる。岩手、宮城、福島3県は保存期間延長などの措置を取ったが、市町村の取り扱いは不明。

 公文書管理に詳しい渡辺英夫秋田大教授(日本近世史)は「全自治体は、公文書がいずれ歴史資料となることを視野に入れた文書作成システムを整えなければならない」と指摘する。

[公文書管理法]国や独立行政法人の文書を国民共有の知的資源と位置付け、作成から選別・廃棄、公開に至る統一ルールを規定。歴史資料として残す文書の選別を早期に行う仕組みや専門家の関与を盛り込んだ。自治体に対しては文書の適正管理を努力義務とした。社会保険庁の「消えた年金記録」など重要文書の散逸・廃棄問題が法制定のきっかけとなった。

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