拡張知能を使えば、人間の成長スピードは2倍になる


人工知能。私はこれ以上にいんちき臭いものは思いつかない。人々がターミネーターやマトリックスを観て、人工知能が何なのかを推し測ろうとするのもうなずける。だが60年にわたり学会や映画がAIを取り上げ続けた結果、ようやく我々はそれが単に人々を征服するロボットではないということを理解しつつある。

テクノロジー業界で働いているが、皮肉なことにAIが注目を集めるようになったのは、機械学習やエンジニアリングの進歩に伴うものではなく、我々人間が抱えている技術的課題に伴うものだ。

YahooとAppleに在籍していたときは、現代的なクラウドに役立つのみでなく、毎年前年比2倍以上で成長する業績を下支えするテクノロジーの一端に触れられたことは素晴らしい経験だった。しかし人事の観点でみると、新しいデータセンターを開くということは知識と経験を持つさまざまな分野の専門家たちを年に100人以上雇わなければならないことを意味する。これらのスキルを持つ人を探すことはますます難しくなっており、昔のように人数を揃えることができないため、スキルを持たない人を使ってどうするかを考えなければならなくなったのだ。

我々が住むこの世界では、技術の革新が人の進歩のペースを追い抜いている。AIは機械が知恵を持ち、独自の知見を持つことを可能にする。センサーは感覚へと進化し、機械は視覚や聴覚、触覚などを理解できるようになる。

IoTにより、機械は自分の考えや感覚から自律的に行動できるようになる。これまで生気を持たないツールだったものは、AIによって意識を持った共同作業者へ飛躍を遂げようとしている。我々人間の責任は、この新しい共同作業者を管理することである。

包括的な機械学習インターフェイスにより、すべての人々が自然言語を通じて効果的に新たな共同作業者に学ばせることができる。人の知見はAIを実態のあるものにするための基礎である。このことからもAIが人の知性に代わるものではなく、それを拡張するのに役立つものであるといえる。もはや人工知能は、拡張知能として受け止められるようになるだろう。

 

拡張知能の登場

AIは人の知性を拡張し、世界中に蓄積された専門知識の収集を可能にする。何かの専門家になるために必要な学習期間をこれまでより少なくできるだろう。これまで初心者の学習成長は急速であるのに対し、専門家の学習成長は遅いものだった。

拡張知能によってこの状況は一変する。実現すれば既にコンピュータに見られるように、我々の知能の成長率は毎年2倍、もしくはそれ以上になるだろう。毎年倍以上賢くなる拡張知能を手にした専門家を目にする日がやってくるのだ。

リーダーを務めているとき、私の成功は拡張知能と、私一人でやる以上の成果をあげてくれるチームの能力に大きく左右されることを学んだ。同じことが知能や能力を拡張してくれる新しいパートナーにも当てはまるだろう。今日の観点ではこういったことは異端な超人思想のようにとらえられ、恐れられるかもしれない。だがこのような恐れはかつて、すべての人々が文字を読めるようになったらどうなるかという考えが出てきたときにも同じく沸き起こったものだ。

成長は人生だ。未来を受け入れよう。

Scott Noteboom

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