<E番ノート・球譜>岸と嶋、配球の妙/直球3球で柳田三振

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14日、ソフトバンク戦で力投する東北楽天・岸

 五回に茂木の満塁弾などで一挙6得点して、東北楽天が首位攻防第2戦に勝った14日のソフトバンク戦。直前の四回、1-0の最少リードで相手の中軸を抑える岸の好投が打線の援護を呼び込んだ。中でも1死走者なし、前日に今季初の3安打を記録し調子づく3番柳田を直球3球だけで空振り三振に仕留めた場面が象徴的だった。直球に抜群の切れと制球力がある岸と、持ち味を引き出す嶋のリードが真骨頂を見せた。

<前打席を伏線に>

 1球目は外角低めいっぱいの143キロ。柳田が待ち球と違ったような雰囲気で見逃して1ストライク。続く2球目の142キロも同じコースを突いて、2ストライク。柳田は途中まで振りにいって止めた。3球目は内角膝元へのボール球の141キロ。追い込まれた状況で柳田のバットは空を切った。

 バッテリーが柳田を手玉に取った理由は三つある。

 一つ目は、一回の前打席を伏線にして柳田の裏をかいた配球。一回、初球で内角を突いた後に外攻めを続けてからの4球目、外角低めへのチェンジアップを拾わせて中飛にさせた。

 四回の対戦、バッテリーは、前の打席に打ち取られた球を狙う打者心理がある、というセオリーを生かした。初球は、一回の決め球と同じようなコースでも変化球を選択せず、「調子が抜群だった」(嶋)という直球を配した。

 二つめは、岸が針の穴を通すような制球力で外角低めを突いたこと。打者の手が届きにくく、見極めが難しい外角低めへの直球でストライクを取れるかどうかは、投手の力量そのものを示す。嶋が若手時代に指導を受けた野村元監督が「原点能力」と呼んだ一流投手の条件の一つだ。

<巧みな内角攻め>

 この日、岸の直球には普段以上に打者がミートしづらい伸びがあり、嶋は「当てられてもファウルになる」と確信。岸も「狙ったところに大体投げられた」と2球連続で応えて、一気に2ストライクに追い込んだ。

 三つめは、巧みな内角攻めだ。柳田が最後に空振りした膝元への直球は意外にもボール球だった。内角を意識付けさせ、その後の配球の幅を広げるための見せ球で、嶋は「勝負球のつもりではなかった」。だがなぜその球で勝負が決したのか。与田投手コーチは「岸なら内角攻めで、甘いストライクは投げない。だから結果的にはボール球でも、際どくストライクになりそうな球に相手は手を出してしまう」と分析する。

 単に小気味いいだけではなく、岸と嶋の技が凝縮された珠玉の奪三振シーンだった。(金野正之)

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