クリ・ヨウジさん、初モチーフ挑戦 89歳、色気もしゃれっ気も

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愛用のパイプを手に創作への意欲を語るクリ・ヨウジさん=東京都千代田区のアトリエ

 福井県鯖江市出身のアニメーション作家で画家のクリ・ヨウジさん(89)は、米寿を過ぎた今も第一線に立ち、意欲的に創作に取り組んでいる。昨年刊行した漫画集「クレージーマンガ」(ふゅーじょんぷろだくと)は今月9日、第46回日本漫画家協会賞の大賞を受賞。「うれしい」と喜びを口にする。さらに新しい絵のアイデアを生みだそうと、アトリエにこもる日々だ。

 「これが新作だよ」。4月末、東京都千代田区のアトリエを訪ねると、クリさんは右手を差し出してきた。薬指にはめられていたのは直径2センチほどの平べったい球状をした金色の指輪。表面には得意のアクリル画で打ち出の小づちを描き、絵の具が落ちないよう特殊加工を施している。

 指輪の造形は10年ぶりの挑戦で、打ち出の小づちを描いたのは初めてという。「人が幸せになるのは楽しい。(着ける人に)優しい心を持ってほしい」との願いを込め、フランス製の小筆を操った。「絵は進歩していくもの」とチャレンジ精神旺盛だ。

 89歳で健康でいて、モチベーション高く描き続ける秘訣(ひけつ)は食事の工夫と運動。自宅からアトリエまでは毎日、坂道を含め1キロの道のりを歩いて通っている。愛用のパイプでたばこを吸い、瞑想(めいそう)にふけると新たなアイデアがわいてくるという。その瞬間、一心に筆を動かしていく。

 米寿の昨年刊行した漫画集「クレージーマンガ」は500ページを超す大作。性描写も含め、超現実的で不思議なストーリーを自由奔放に展開したエネルギーが評価を受けた。

 漫画集のほかにも、クリ作品を象徴する女性キャラクターのジュリアンヌをテーマに、大小多くの絵を描いた。うち5点が鯖江市糺町のギャラリーKで今月末まで開催中の企画展で、展示・販売されている。サムホールサイズの繊細なペン画で、パンクヘアの髪をオレンジや紫に染めたジュリアンヌがヌードになったり猫と戯れたりといったシーンが展開する。

 同ギャラリーを主宰する木水美枝子さん(66)は「持ち前のユーモアとセンスにあふれ、ヌードも描こうという、そんな作家としての色気を失わず、この先も頑張っていただきたい」と地元からエールを送っている。

 クリさんは、6月には鯖江市内での教育イベントに参加する予定。都内では、同月から11月にかけて4回の個展を開催する計画だという。

 【くり・ようじ】1928年、鯖江市生まれ。旧制武生中を卒業し、50年に上京。共同通信社など勤務を経て、58年に文芸春秋漫画賞、62年にアニメ「人間動物園」がベネチア映画祭で青銅賞。テレビ番組「ひょっこりひょうたん島」「みんなのうた」なども手掛け、戦後日本のアニメーション界をけん引した。2011年に旭日小綬章受章。16年に「久里洋二」からカタカナ表記に改名した。

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