ごみ処理施設広域整備で登別市が不参加を正式表明

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 登別市は19日開いた、市議会生活・福祉委員会で、西いぶり広域連合(連合長・青山剛室蘭市長)が進めるごみ処理施設の建設事業を含む広域整備への不参加を正式表明した。一方、「西いぶり広域連合からさらなる提案があった場合において改めて協議を行う」とし、将来的な広域化の方針は維持するとした。

 「市民感情を考え現時点で現実味のある方向性を選んだ」。室蘭民報社の取材に小笠原春一登別市長はこう経緯を説明した上で、「市独自の検証は継続して進めていく」との考えを強調した。

 委員会で登別市は、継続運営に比べ「全体的に一定の財政負担の軽減が図られる」としたが、市民感情や一部の経費増が見込まれるため「参入断念」の考えを明らかにした。

 具体的な理由は(1)クリンクルセンター従業員の雇用損失による市内経済への影響(2)年度負担額が平準化していない(3)一時的に多額の一般財源が必要で他公共事業への影響懸念(4)ごみ焼却による予熱供給の停止(5)ごみ搬送距離延長に伴う利便性の低下―を示し、「影響を払しょくすることは困難」(市幹部)とした。

 また、住民説明会で出た分別方法の変更のほか、自己搬入の利便性低下、不法投棄の増加の懸念問題にも触れた。「迷惑施設として敬遠されがちな廃棄物処理施設だが、出席した市民から出た意見の全ては継続運営を希望するもの」とし、「市民負担の増加もやむを得ないとの意見も寄せられた」と語った。

 広域ごみ処理施設を巡る議論は、小笠原市長が昨年11月の記者会見で「将来のごみ処理を考える上で広域参入も選択肢の一つ」と表明。今年4月にはメリットの共有を前提に「共同処理」に向けた方向性を打ち出した。

 登別の不参加方針を受け、西いぶり広域連合長の青山市長は「登別と白老の議論の詳細を把握した上で、今後の対応を検討する」とコメントした。 (本社報道部、中部支社、西部支社、白老支局)

◆―― 登別市が異例の決断、財政効果より愛着

 ごみ処理の効率化に向けた広域協議が事実上、終結した。住民生活に密着する重要な問題だが、本格検討から3カ月の「異例の決着」(構成市幹部)となった。西いぶり広域連合と登別は「財政メリット」を見いだしたが、結果的に登別は一部の市民のクリンクルセンターへの「愛着」といった感情を重視し「物別れ」となった。連合構成市から「シルバー民主主義」の弊害を批判する意見が出た。 (本社報道部、中部支社、西部支社、白老支局)

 ■ シルバー民主主義

 伊達市の菊谷秀吉市長は住民説明会での市民意見を尊重した判断には「現状しか考えないシルバー民主主義で本当によいのか」と語気を強め、「今ではなく将来の住民負担を予見しなければいけない案件だった。登別市には間違った経営判断をしないよう期待したい」と述べた。

 ごみ焼却施設の新設は巨額の建設費、場所の選定工事、稼働まで時間を費やす。室蘭市幹部は「小さな施設を各地に建設するより大規模施設で連続稼働の方が経済的にも環境面でも優れている」と説明する。

 登別の決断は広域連合構成市町に(1)決定までの時間が短い(2)住民意見集約方法への疑問―を与えた。広域協議は負担金割合や施設距離など「条件闘争」に時間を割き、登別は年間約3800万円の財政効果が出るとしたが施設継続を選んだ。「財政的な問題をいくら重ねても登別側の合意形成は得られない」(構成市)と指摘した。

 ■ 先送りの不利益

 今後、広域連合と登別には課題が山積する。連合側は場所選定など5市町による新設に向けた話し合いが本格化する。登別・白老は「サービス向上に努めたい」(白老町幹部)と力を込めるが、厳しい財政の中で、ごみ量と人口推移を見極めた延命化策を再度練り直す必要に迫られる。

 課題の先送りは、住民の不利益につながる。地方自治法第2条は「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」とする。西胆振各市町は住民と議会へ結果の丁寧な説明が求められる。

◆―― クリンクルセンター、現状の利便性守る

 登別市は、ごみ処理施設を巡る共同処理を見送り、クリンクルセンターを継続運営する判断を、19日に正式に示した。市民の反応はこれまでの住民説明会同様、肯定的な声が多く聞かれた一方で、想定される人口減少や財政面などを踏まえた否定的な意見も上がった。

 「重く、慎重に取り扱うべき課題だった。どの分野でも広域連携の必要性はあるが、クリンクルセンターは1市1町で運用していく方針を決めた。心配や不安を与えたが、理解していただきたい」。この日市内で行われた市連合町内会の定期総会。居並ぶ町内会役員らを前に、来賓あいさつに立った小笠原春一市長は継続運営への理解を求めた。

 これまで開催された住民説明会では、市民サービスの低下や自己搬入の距離増に伴う不法投棄の懸念など、発言者の大勢は現状維持を求める意見だった。

 今回、市の方針が正式に示され、現状の利便性が維持されることに、60代の男性は「長年親しんできた施設であり、継続されることで安堵(あんど)している。雇用やごみの運搬など生活に直結するだけにほっとしている」。

 30代の女性会社員は「子育てする身としては、負担額が大きくなるのは困る。ただ、どちらにしても負担額は一定時期に上がる。それなら現状のままの方が市民にとっていいのでは。ごみの分別や室蘭までごみを運ばなければならない手間を考えるとなおさら」と述べた。

 一方で、広域化への参入見送りに批判的な意見も。新生町在住の50代男性は「メルトタワーで共同処理した方が経費が削減できるとの試算が出ているのに、市単独で処理する方針としたことは理解できない。市民がごみを直接搬入するのも年に1回あるかないか。財政面を優先すべきで、感情で物事を判断すべきではない」と批判した。

 70代男性は、広域処理を見送ったことについて「市民の意見に配慮した結果」と一定の評価をするが、「人口減少など将来不安はある」と今回の判断が最善かどうか疑問を呈していた。(石川昌希、高橋紀孝)

【写真=広域連合と登別のごみ処理協議は「物別れ」に終わった(合成写真)】

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