病気と個性、共に伝えたい レット症候群の家族会

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 女児に発症する難病「レット症候群」への理解を深めてもらおうと、兵庫県でも患者と家族でつくる「スプリング」が地道な活動を続けている。阪神間を中心に約15家族が参加。情報交換したり、悩みを共有したりしている。乳児の段階で発達が止まり、重い知的障害を伴うケースが多いものの、症状はさまざま。家族らは「病気を知り、患者一人一人に個性があることも知ってほしい」と訴える。(阿部江利)

 「スプリング」は2002年に結成。患者は10~20代が多く、定期的に集まって音楽療法などを楽しんでいる。

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 世話役の一人、兵庫県猪名川町の石上勝久さん(56)の長女有沙さん(20)は1歳半で発症した。わずか3カ月で表情が乏しくなり、おもちゃが持てなくなった。2歳半でレット症候群と診断された。

 周囲に同じ病気で悩む人がいなかった。親の全国組織「日本レット症候群協会」の存在を知り「わらにもすがる思い」で参加。ほかの患者と家族らが深い絆を結んでいるのに励まされた。同会を通じて近隣の家族とも知り合い、スプリングを結成した。

 今年、有沙さんはピンクの振り袖に身を包み、自分の足で歩んで成人式に出席した。小中学校の同級生が盛んに声を掛けてくれ、一緒に写真を撮るなど楽しいひとときを過ごした。言葉では意志を表現できなくても、ずっと笑顔で思いを伝えたという。

 戸惑いや悲しみと向き合う日々を、娘の笑顔が癒やしてくれた20年。“先輩”の患者家族にも支えてもらった。勝久さんは「大変な時期を乗り越えてきたが、今では家族のかけがえのない宝物になった。成人式の喜びもひとしお」と話す。次の交流会では、他の患者らが有沙さんの振り袖を着るモデル体験会を計画しているという。

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 今年3月には神戸・ポートアイランドで、レット症候群に関する国際シンポジウムが開かれ、日本やアメリカ、台湾の患者家族会が意見を交わした。

 主催団体の一つ、NPO法人「レット症候群支援機構」(大阪府枚方市)の谷岡哲次代表理事は治療法の研究を進めるための寄付を募り、患者のデータベースを作る活動などにも取り組む。谷岡さんは「患者が動くことで、社会を変えたい。治療法が見つかる日を胸に、活動をさらに進めたい」と話している。

 【レット症候群】1万~1・5万人に1人の確率で発症する神経疾患で、患者はほとんどが女児。染色体の遺伝子異常が原因とされ、治療法は見つかっていない。生後半年~1歳半ごろに発症し、知能や運動能力が後退してしまう。重度の知的障害を伴うことが多く、手を口に入れたり、常に手をもんだりするなどの動作が特徴とされる。国内に推定で約5千人の患者がいるとされる。

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