労災手続き 異例の速さ/外国人実習生ら不明の漁船転覆

画像陸揚げされた第78正栄丸。不明者2人の死亡推定書では、左舷側の損傷が激しいことから横波を複数回受け短時間で転覆。2人が海に飛び込むか投げ出されたと推測した=2月20日、八戸市河原木

 今年2月、青森県八戸市の八戸みなと漁協所属の小型イカ釣り船「第78正栄丸」(19トン)が大間沖で転覆した状態で見つかり、八戸市の榊俊宏船長=当時(53)=ら2人が死亡、インドネシア人の漁業実習生2人が行方不明となった事故で、不明者2人の労災保険の申請が今月、八戸労働基準監督署に異例の早さで受理されたことが19日、関係者への取材で分かった。

 八戸労基署によると、海難事故で不明となった際の労災申請は、不明となった日の3カ月後から受け付ける。申請には一般的に海上保安部が作成する死亡認定の書類が用いられるが、海保による死亡認定は、事故から3カ月以降に不明者家族が申請し、完成までに1年ほど要するという。

 榊船長の妻や実習生が所属していた石川県漁協門前支所は、インドネシアの実習生の家族のため、法的手続きを迅速に進めようと、仙台市の海事代理士に依頼、死亡推定書をまとめた。

 推定書は、船が航行する時間帯に2人が友人にスマートフォンでメールを送信していること、船内から2人のスマートフォンや在留カードが発見された状況などから、いずれも乗船していた-と説明。

 また船の破損状況から、左舷から破壊力の大きい横波を複数回受け短時間で転覆し、2人が海に飛び込んだか、投げ出されたと推測。事故が考えられる時間帯の津軽海峡の水温(8度)や気温(2度)から「生存している可能性はない」と結論づけた。

 労災申請は船の発見から3カ月が過ぎた5月11日、八戸労基署が受理。担当者は取材に「提出された書類は不明者の死亡が推定できる内容だった」と話し、今後、労災認定の審査に入る。八戸みなと漁協によると、海難事故で不明者となった際の労災の手続きとしては異例の早さだという。

 榊船長の妻らは5月上旬、インドネシアを訪問し、実習生の家族に事故を報告した上、各書類に署名、押印してもらった。20日、同船長の百か日法要を迎える妻は「船主側としては、できるだけ早く手続きしてあげることしかできない。実習生の家族と話すこともでき、区切りが付いたことを主人に報告できる」と語った。

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