明治の園芸、一冊に 横浜、エピソード満載

 横浜の花と緑の歴史などをひもといた「明治の園芸と緑化」(誠文堂新光社)が出版された。共著者の一人、東京農大の近藤三雄名誉教授(68)=横浜市都筑区=は「明治の園芸は現代に通じる一番重要な時代。当時の逸話、秘話を盛り込んだ」と話す。

 老舗の園芸会社「横浜植木」(南区)の協力で、「第33回全国都市緑化よこはまフェア」の開催に合わせて刊行した。

 3章で構成。「横浜を舞台とした花と緑の文明開花物語」の章では、明治期の精密な絵図や写真を数多く載せた。園芸における海外交易のきっかけをつくったユリをはじめ、アサガオ、バラなど多彩。市史資料室主任調査研究員の平野正裕さん(57)が主に執筆し、昭和初期まではユリ根輸出の大半を横浜港が担ったことなどを記している。

 横浜国際総合競技場の芝生検討委員会の委員長も務めた近藤さんは、横浜におけるスポーツターフ(運動用芝生)の歴史を解説。横浜の外国人居留地に、屋上庭園がある建物や室内庭園が設置されたホテルが描かれた絵はがきからは、横浜における近代の緑化事業の萌芽が見られる。

 近藤さんは「日本の園芸、造園は国内外の博覧会で進化した。国威発揚の場で、技術を競い合った」と強調。第5回パリ万国博覧会(1900年)に出展された「大作菊」は一つの茎に数百個の花を付け、欧州の養菊家を驚倒させた逸話を紹介している。明治期に欧米で評価された植物のリストも本書で初公開する。1890年創業の横浜植木の歩みを解説した章もある。

 B5判192ページ。3500円(税別)。問い合わせは、誠文堂新光社電話03(5800)5780。

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