鉄鋼・非鉄関連業界活躍する女性群像(4)

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「一生懸命やった分、還ってくる」/山陽特殊製鋼監査部長/須多敦子氏

 6年前、同社初の女性部長として経営企画部長に就任。15年から総務部長を務め、今年4月から監査部長。

 業務や財務の内部監査が仕事で、コンプライアンスや内部統制の有効性、リスクマネジメントの観点から社内業務全般をチェックし、企業価値向上への的確なアドバイスをしていく。

 「経営企画、総務と会社全体を見渡していかなければならない業務を担当してきたことが、改めて武器になる」と新職務に静かな闘志を燃やす。

 「冷静沈着。厳しくかつ優しい部下思いの上司。仕事はテキパキ、決断も的確」が部下評。

 平日フル稼働のため、休日はしっかり息抜きといきたいが、洗濯・掃除・買い物と主婦業で忙しい。同じ会社に勤める夫が食事その他を手伝ってくれるのがありがたい。

 同社では「女性にとって働きやすい職場は、男性にとっても働きやすい職場である」との認識を基に女性の活躍を先駆的に進め、15年3月には鉄鋼メーカーとして初めて「ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれた。

 3月末時点の女性社員は164人で全社員の13%。現場など技術職が50人で3交代勤務者や作業長もいる。女性管理者は8人で部長など役職者が4人。

 「仕事はイマジネーションが大事。それと一生懸命やった分だけ還ってくる」。勤続27年。改めて感じている。

探査は難しいけど毎回新鮮/JX金属探開地質部主任技師/上田祐子氏

 上田さんは、JX金属グループ初の女性地質エンジニアだ。大学でも鉱床学を学んでいたが、直接的な入社動機は「当社の面接官が一番仕事を楽しそうに話していた」こと。「こんな人たちと一緒に働けたら楽しいだろうと思った」というのが理由だ。

 昨年6月まではチリのカセロネス銅鉱山に赴任し、主に操業管理業務に従事。採掘現場での目視確認や鉱石の分析品位などから日々、鉱石か捨石かの判断をしていた。標高4千メートル超の高地という過酷な作業環境のため、「体調管理にはとても気を付けていた」という。

 帰国後も様々な探査プロジェクトに加わりつつ、カセロネスでの経験を生かし春日鉱山の金品位管理などにも携わる。「今年はもう少し探査の仕事を増やしたい。チャンスがあれば海外にも」と話す様子からは自発的に仕事を楽しもうとする姿勢が伝わってくる。探査の仕事は「全く同じ条件の鉱床はないため、他の現場で通用したルールが通じない。それが難しいけど毎回新鮮で面白い」と話す。最近は後輩指導も意識しながら「その過程で自身に足りないことを明確化し、基礎をかためる」ことも目標だ。

 プライベートでは着付け教室に通うことを計画中。海外に行くことで「和文化を一つでも身に着けておきたい」と考えるようになったそう。昔から海外旅行が好きで、チリ滞在中も休暇を利用して各国を訪問。アルゼンチンで陸から間近に見た野生のシャチがとても印象的だったそうだ。

仕事が自分を成長させる/アイ・コミュニケーションズ社長/臼井弥生氏

 五十鈴(当時は五十鈴鋼材)に入社したのは「人の縁」。同じ高校を卒業した大先輩の誘いがきっかけで配属は人事や総務部署だった。入社して7年目。五十鈴が「社内改革」を目的にOD(組織開発)を導入する。このときに受けたコンサルタント研修に強く感銘。仕事の動機づけや働く意義などを学び「すっかりハマったんです」。

 OD導入を機に人事考課制度も年功序列型から能力実力主義となり、26歳で総務人事部の女性管理職に。会社が推し進める変革プロジェクトの若手メンバーにも選ばれ、学習や実践の機会を得ることに喜びとやりがいを実感。仕事が自分(人)を成長させてくれることに気づくとともに「私自身の職業観も形成されていった」。

 その後「OD部」の課長職に異動。このOD部が、五十鈴が機能分社を図る流れのなかで「アイ・コミュニケーションズ」(1988年設立)となる。創業メンバーとして携わり取締役、常務、専務を経て99年に社長に。「自律的に成長・進化する組織と人づくりで企業価値を最大化するコンサルティング会社」を標榜し、全国に顧客を持つ。

 五十鈴グループにおける女性管理職のパイオニアは、これまで何度も悩み、もがき、壁にぶつかってきたが、その都度勉強し、人に助けられ、励まされて苦労を成果にしながら〝世界〟を広げてきた。「仕事が生き甲斐」で、寸暇を惜しんで足を運ぶ映画や古典芸能鑑賞も「つい、仕事に結びつけちゃうんですよね」

鉄の仕事、奥深さ実感/富安札幌支店長/伊藤真紀子氏

 経理課勤務で入社し、気が付けば建築・土木関連の営業、そして2年前には北海道でも他に例を見ない同社初の女性支店長として、事業会社を含めた北海道の富安グループを束ねる立場に就いた。酒席やゴルフなどの機会も多いが、「楽しくお付き合いさせて頂いている」と感謝している。

 道内の富安グループは札幌支店のほか、倉庫・鋼材加工の富士鋼材センター、防雪柵・雪崩予防柵総合メーカーのマルエイ三英、農業用鋼製コンテナ・太陽光発電架台製造の北日本サッシ工業と、建築・土木用鋼材や住設機器、加工品など地域特性に根差した幅広いメニューを持つ。その中で12人の支店メンバーや事業会社が、「いかにして成績を残すか」を常に考えている。また、「チームワークを重視し、各自に自信を持ってもらえるような仕組みづくり」も模索する。それには人知れず苦労も多いはずだが、「充実している」と前向きだ。

 業界は変化の時代で、「変化に対応することが大切」とも。「課題であり目標」と言う支店から支社への昇格に向け、「支店や事業会社が一体となって機能を発揮し進みたい」と目指すところは明確。「若い人が働き易い環境づくりに取り組みたい」との役割も承知している。「鉄の仕事は奥深い」と実感し、その世界で「女性の活躍の場を作ることも私の仕事」と笑顔を見せる。そして、2年後の同社創業100周年へ向け、〝一歩前へ〟を自らの行動で示す。

3交替勤務で現場支える/新日鉄住金君津製鉄所設備部冷め電計整備課/一ノ瀬歩氏

 24時間稼働する製鉄所は、昼夜を問わず細かなトラブルが発生する。一ノ瀬さんの部隊は冷延・めっき鋼板の設備故障に3交替勤務で備え、早期復旧に力を奮っている。

 新日鉄住金の採用ホームページで先輩社員の声を読み「女性でも現場でバリバリ働けるんだ」と興味を持った。入社試験の前には製鉄所を見学し、そのスケールの大きさにすっかり魅せられたという。故障対応はいかに原因を早く突き止めるか。「自分の考察がピタリと当たった時が面白い」と笑みを見せる。そのためにも自身が対応していない故障の申し送り書や図面を読み、点検をすることで日頃から備えている。

 入社2年目の2014年には新日鉄住金グループの電計技能競技会に出場。競技は制御盤組立、トラブルシューティング、電計品の据付・芯出し、制御装置の調整の4種で、5位という優秀な成績を挙げたが「芯出しがうまくいかなかったので」と悔しがる。上司の北直樹課長は「改善活動にもしっかり取り組んでいる。年3件のノルマに対し、彼女は6件の提案を出してきた」と評価する。一ノ瀬さんに秘訣を聞くと「工場のオペレーターの方と話し聞いた要望を元にしました」と。高い向上心と現場との良好な関係が仕事ぶりにつながっている。

 今春には女性の後輩もできた。「同じ3交替を希望しているので、いろいろ教えてあげたい」。将来のライフイベントにも「君津製鉄所に保育園ができたので」と仕事を続けていくつもりだ。

「いつか船長に」/JFE物流二等航海士/伊藤絹代氏

 毎日の仕事場は大海原を行くJFE物流の原料内航船「みらい」。「小学生の頃にイルカショーを観たこと」をきっかけに海に憧れを抱き、鹿児島大学大学院水産学研究科を経て航海士の道に進んだ。乗船中に野生のイルカと併走するときは心が躍ると笑顔をこぼす。

 「みらい」は主に神奈川県川崎市のJFEスチール東日本製鉄所京浜地区と高知県須崎市の石灰石積み出し港を往復する。航海自体は片道30時間余りだが、接岸した後は荷役をこなし、陸には上がらずまた航海へ。いったん乗船すると3カ月間帰宅しない生活だが、「満員電車も遅刻もないですよ」と屈託がない。

 船長に代わって舵を握る航海当直は午前0~4時、午後12~4時の一日2回。船内設備の整備もこなす。「みらい」は女性の働きやすさも考えて設計された最新鋭船。女性専用のトイレや風呂も備えた船内は快適という。「部屋も広い。下船のとき、掃除は大変だけど」

 航海を終えると1カ月間の休暇だが、仕事を離れても海と動物に心が向かう。これまで南極やアラスカ、南アフリカなど世界各地の海を旅しては野生のクジラやイルカと触れ合ってきた。

 JFE物流では二人目の女性船員。昨年秋に他社から転じて入社したばかりで今は「みらい」で3度目の航海中だ。二等航海士の今は「まだ教えてもらうばかりだけど」。いつかは船長に――。そんな夢を抱いている。

一人ひとり、正面から話し合う/YKKAP黒部製造所素材管理総括ライン長/松井三枝氏

 YKKAPの主力生産拠点である黒部製造所として女性初の総括ライン長。サッシの中間製品であるアルミ形材の在庫を管理する現場で、30人以上の部下を束ねる。在庫数量は様々な工程の効率を左右する重要な要素。最適量を手配するため「技術や新製品の動向も含めた幅広い目配りが重要」と話す。

 実家は吉田工業(現YKKAP)の製品を扱う建具店。同社は小学生時代から親しんできた存在だ。家に来る営業担当者の活気に触れたことや父の仕事を手伝った楽しさから、子どもの頃から「この会社に入りたい」と感じていたと振り返る。

 納期回答などを担当する生産管理の窓口業務で入社し、社内結婚を機に素材部門に異動。業務の違いに当初戸惑いもあったが一から学んで新しいことを理解する喜びを得た。2008年には管理職に昇任。「信頼され、話に耳を傾けてもらうには自分が変わらないと」と懸命に考え続けた。

 総括ライン長としていま大切にしているのは「一緒に汗をかく中で、一人ひとりと正面から話し合うこと」だ。積極的に声をかけ成長した点を伝えること、思いを聞き、共に将来を考えることで仕事への心持ちは変わる。また現場の士気を高めるため納期や安全、若手育成などの役割に挑戦できる仕組みも作った。

 黒部では20年に向けて再構築を推進。構内物流などの最適化も行われる。「これまで以上に様々な仕事で皆に活躍してもらえるよう、人づくりを進めていきたい」と前を見据える。

きめ細かな顧客連絡で信頼関係/カナメ関東支店係長/鈴木真知子氏

 カナメが大卒で営業部門に配属した女性社員の第一号。出身地の栃木県で就職先を探す中、最初に採用試験を受けた同社の面接で渡部渉社長(現会長)が発した「やればやるだけ、評価される」との言葉で入社を決めた。

 金属屋根はおろか、建築の世界も初めての鈴木さん。当時はふた回り以上年長の男性社員が少なくなく、社内の競争も激しい中で存在感を発揮するのは容易ではなかった。

 試行錯誤を重ねるうち、「自分をきちんと知ってもらった後に金属屋根を売り込もう」と信頼関係の構築に軸足を置くようになった。可能な限り所長や先輩に同行してもらったり、対話する相手に応じて接し方を変えたりするなど創意工夫を積み重ねた結果、1年目には最優秀の成績で新人賞に輝いた。

 結婚・出産を機に退社後、パートで復帰。正社員に再登用後も限られた勤務時間の中で最大の成果を発揮すべく「5分単位でスケジュールを練り、常に効率と戦略を考える」ようになった。持ち前のバイタリティで雇用体系にかかわらず、営業成績は毎年全体で上位に名を連ねる。新旧の顧客にきめ細かく連絡を取り、合間を見つけては顔を出す。世間話の延長戦で商売の話にたどりつくこともしばしば。

 昨年には、支店に女性の営業チームを立ち上げるなど後進の指導にも余念がない。新たな営業方法や企画の発案で営業の前線をリードする。