【鋼材流通・加工業の魅力と将来性】鉄鋼新聞社-名鐵会共同企画「鉄屋さんフォーラム」

パネラー=伊藤豪誌氏(会長、三重鋼材社長)、浅野嘉之氏(副会長、浅野鋼材社長)、青山高久氏(幹事、青山商店社長)、井桁幸保氏(幹事、丸鐵鋼業社長)、司会進行=片岡徹(鉄鋼新聞)

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 「鉄の商売をもう一度考えてみよう」―鉄鋼新聞社と名鐵会(名古屋地区流通親睦団体)は、今年、ともに創立70周年を迎えたことから、共同企画による「鉄屋さんフォーラム」を名古屋市内で開催。名鐵会の若手会員を中心に47人が参加し「鋼材流通・加工業の魅力と将来性」について語り合った。参加者からも多くの質問や感想が寄せられ、打ち解けた雰囲気の中で「鉄屋」にかける夢や魅力、流通加工業の意義と重要性などを思い思いに語り、再認識するきっかけともなった。

――「鉄の世界」に入った理由から。

伊藤 社会人となったのは1978年。某商社に正社員として入社し修業したあと、三重鋼材に入社しました。

浅野 私が社会人になった頃は、大変な就職難。当時は銀行、証券、商社が人気の職種。今考えてみると、当時競ってそこに就職した人たちは、のちに非常に苦労することに。私は中堅商社(建材商社)で3年間サラリーマンをやり、一区切りと思って家業に入りました。

青山 最初に当社に入る話が出たときは「絶対いやだ」と言い就職活動をしました。しかし、幼い頃からの洗脳教育というのは恐ろしい(笑い)。懸命に活動をした結果、入ったのが特殊鋼会社。3年経って名古屋に戻ってきたときに父が病気に。安心させてあげたい、という思いもあり、家業に入りました。

井桁 私は、川鉄商事(現JFE商事)に入社しました。私も「縁故はいやだ」と思って、大学の先輩が当時活躍していた川商に入りました。5年間働き、鉄の部署以外に異動する可能性が高まったので、家業に入ることを決意しました。

――家業とはいえ、やはり「鉄」の商売に魅力を感じたから決意されたのだと思います。では、皆さんの考える「鉄の世界の魅力」とはどんなものですか。

伊藤「鉄は息の長い商品」

伊藤氏

伊藤 まず、流行がない。腐らない。デッド・ストックが本当に少ない。当社が扱っているのはSS材が主体で、もっとも利用頻度の高い、社会のあらゆる場面で使われている商品だということ。これに代わる素材はまずない。我々のやっている鉄の商売というのは、息の長い商売といえます。

青山 鉄の「流通網」というのは本当に素晴らしいと、つくづく考えます。通販のアマゾンは翌日配達だが、右から左に流していくだけ。一方、我々の業界は数十年も前から「加工したものが翌日配達」できるほど、流通が整っている。ほかの素材産業にはない世界的にも非常に進んだ誇るべき業界だと思っています。そうしたことに、皆さんもっとプライドを持って仕事をしてもいい。我々は、そうした整った環境の中でしっかり利益を出し、その環境を守っていく責任があるといえます。

浅野 鉄屋さんは「大儲けも出来ないが、大損もしない」業種だと思っています。それが、数十年前からあまり変わっていない。最近はサービスが過剰になって利幅が縮小し、悩んでいるというのが流通業の実態ではないでしょうか。商売としては決してなくなるジャンルではないし、無理をしなければ成り立っていくと思います。

井桁「鉄資源とその商売は尽きず」

井桁 地球は鉄でできています。ということは、資源として尽きない。商売も尽きないでしょう。かつてインターネットを活用した鉄の流通業が模索されましたが、結局は放棄された。その理由はきっと、我々のような存在がないと信用して鉄が買えないということだと思います。鉄鋼メーカーは再編など様々に変遷していくでしょうが、鋼材流通は絶対なくならないでしょう。

――ここで会場の皆様にお聞きしたい。パネラーが言われたようなことを、各社で言っているのかどうか。いかがですか。(会場から手が上がる)

熊谷(三重鋼材) 普段から、社長はよく言っています。私は、鉄の世界に入って仕組みが分かってくると「ミネラルウオーターより安い鉄」(トン当たり換算)を、どうやって収益を確保して売っていくか、を考えていました。しかも、重量物を、危険を冒して販売するという業種です。

鈴木(青山商店) 普段、当社の社長は違う話が多いです。きわどい話とか(会場笑い)。月曜日の朝は全体朝礼があり、そこでは今の話を含めていろいろな話をされます。

竹下(丸鐵鋼業) 社長と一緒に行動しているときは、今のような話を聞かせてもらいます。それ以外では違う話が多いですね。大変勉強になっています。

――経営は「やりくり」。様々なやりくりをして事業を継続・発展させていく。社長として経営のどんなところに工夫していますか。

若手会員を中心に47人が参加

浅野 「若い人材が育たない、募集しても若い人が集まってこない」というのが、私の経営上の悩みでした。我々世代の経営者に共通した悩みなのかもしれません。現在の業界を見渡すと、若い人たちが結構いる。定着率が上昇している。皆さん苦労されているのでしょう。人は大事に考えていきたいですね。

青山「世界一の環境を守る責任」

青山 人をどう採用し育てるかは、やはり重要です。入ってきた人材をどのように戦力として育てていくか。それには、社員に高いモチベーションを持ってもらい、円滑に仕事をする環境をいかにつくるかが決め手です。

――具体的な取り組みなどは。

青山氏

青山 「我々が加工した鉄が、実際にどう使われ、どうなっていくのかを見てみよう」という研修を兼ねた社員旅行などを企画しています。それによって自分の仕事の意味が分かり、会社に対する愛着も増してくるのではないかと考えています。

井桁 当社は「チームワーク」を大切にしています。超優秀な人材は必要ない。2~3人で組んで、局地戦で取り組めば、超優秀な「スーパーマン」にも勝てる。採用面でもチームワークを大切にする人材を重視しています。

伊藤 名鐵会の活動にも通じる「和」というのが非常に大切ですね。会社の和が広がって業界の和となり、商売も円滑に行く。各社での立場・セクションは違っても、よく知り合い、他の仕事を知ることは重要。我々の企業規模では「多能的な人材」が求められます。定期採用も継続しにくいし、各人が多能的な人材として育っていく必要がある。

――商売は顧客あってのものでもあります。お客様に対しどういう接し方をすべきですか。または、社員の皆さんに、お客様にどのように接してほしいと考えていますか。

伊藤 当社では「迅速・丁寧・親切」を大事にしています。お客様の要望に対して、すぐに・しっかりと対応する。自分がされたら快適だな、と思うことをお客様に提供していくことが大事だと思います。

浅野「現場知る運転手が顧客と情報交換」

浅野 「自社の製品は自社で運ぶ」ことを基本にしています。現場経験を積んだ人材が、運転手としてお客様のところで様々なコミュニケーションをする。現場が自然にお客様のことを理解して仕事をするようになる。これも情報交換であると考えています。

青山 当社の「あおやま」をそれぞれ頭において「明るく元気に、思いやりをもって、やる気満々に、まじめに誠実に」というスローガンを毎週唱和するのですが、これがお客様に接する基本だと思っています。これらの要素が欠けている人からは、ものを買いたくないのが人情ではないか。

井桁 配達、加工のスタッフも営業の意識を持つ、ということがまずは大事だと考えています。現場はお客様のためにやっている。そして、一人の担当者が長期間、特定のお客様と接するので、大手商社などと比べても優位性があると思っています。担当者は当社のため、というより自分のために取り組んでほしい。

――そのような話でしたが、会場の皆さん、それに対しての意見や自分で取り組んでいることなどはありますか。

磯田(丹羽鐵) 当社でも、常にお客様の立場に立ち、喜んでもらうことを第一に考えています。そのことで次につながりますし、紹介もしてもらえる可能性が高まると思います。

鈴木(青山商店) 私は、お客様に喜んでもらおうとはあまり考えておらず「お客様に笑ってもらおう」というのがスタイルです。当社の社長から教わったことでもありますが。

奥(三重鋼材) これと言ってポリシーがあるわけでもないですが、とにかく「お客様に嫌われないように」やっています。好かれるうちは商売が広がっていくと思っています。

――ある若手世代の社長が、お客様に「貴社の仕事は誰にでもできる」といわれて落ち込んでいましたが、本当にそうでしょうか。

浅野「営業は素直さと冷静さ大切」

浅野氏

浅野 鉄の商売は、季節感のない、特徴の出しにくい部分があります。それで営業される皆さんも苦労している。逆に言えば、素直な人柄、よく考えて冷静に行動する必要が出てくるのではないか、と思います。

伊藤 誰でもできる商売とは、到底思えない。鉄の営業には、非常にたくさんの知識・ノウハウが必要ですし、一見違いが分かりにくい自分の商品も詳細に知っていなければならない。プロになるためには時間がかかるし、今日来て明日できるという商売ではまったくない。プロフゴルファーのスイングは簡単に見え、自分にもできると錯覚しがちですが、やってみるとできない。それと同じでは。

青山 お客様に育てられてここまでやってきた、という部分は大きい。だが、例えば自動車をつくるにしても、我々流通の機能がなければできないでしょう。支えられている一方で、ものづくりを支えているわけです。決して誰にでもできるとは思いません。

井桁 同感です。最近、当社も新入社員を採用し、先輩が教育していますが、すぐに教えられるものではない。また「信用」に基づいて取引をしているので、その点も簡単なものではありません。

会場の様子

――名鐵会は70年続いてきたのですが、今の名鐵会は鋼材流通にとってどんな存在ですか。

伊藤 始まりは、名古屋市内の流通業者の番頭格などが集まって、人同士のコミュニケーションをしようと出来た会です。昨今は交通網の発達などで広く愛知県内全域にエリアが広がってきました。また、業種的にも多様になってきました。

(ここで会場から手が上がる)

荒川(荒川鉄鋼) 以前から伊藤会長の勧めで加入を考えていましたが、懇親ゴルフなどをきっかけに、楽しい会だなと思い入会しました。会の良さを実感しています。

加藤(アカシ) 当社は厚板加工業で、会に入るまではあまり他の業界の方と接する機会はありませんでした。入会してみると、同業の方も結構おられ、いろいろな方と接する機会も増えました。

――会の世代交代も進んでいます。

井桁氏「変化対応策、名鐵会で情報交換」

井桁氏

井桁 会員会社の世代交代も進み、先輩からいろいろなことを面白おかしく教えてもらえますし、各社の取組みなども情報交換できるのが役に立っています。そうした情報交換を通じて、先行きの変化に対して各社がどう取り組んでいけばよいか、という流れも分かってきます。

青山「次代への経験伝承を継続」

青山 私は、変化や変動は20年周期で起こってくると考えています。名鐵会を通じて20年前の経験を直に経験者からお聞きする機会も出来、非常に有難い。当然、これから先も色々なことが起こるでしょう。今後は我々が、さらに若い社員なり後継者に様々なことを伝えていく立場に成長していかなければならない。それを継続していく基盤が名鐵会だと思っています。

――業界の世代交代も進みそうです。

伊藤「自分で考え真剣に実践」

伊藤 これは大事なことです。当社も世代交代の時期を迎えつつありますが、何も言わずに見守っているというのが実態です。何事もけじめよくやるべきなんでしょうね。何でもそうですが、責任を持って取り組むことで、自分で考えて自分で結論を出し、仕事を本当に自分で実現していくということにつながると思います。

伊藤誓悟(三重鋼材) 私の立場から言っても「邪魔をしないでほしい」ということになります(会場笑い)。しかし、社長の責任がなくなったら何もなくなってしまいますし。

井桁 私は、専務時代からいろいろな仕事を任され、余り口出しもされかったので、父には感謝しています。今後、業界の世代交代も進みますが、簡単にできる仕事でもありませんし、マニュアルで伝わらないものも含め、急ぎすぎずゆっくり引き継いだ方がいいと思っています。

――だいぶ皆さんのいろいろな話を聞くことができました。この辺りで、締めの言葉を鬼頭洋史鬼頭鋼材会長からお願いします。

鬼頭 名鐵会は、上部団体もなく、上納金を取られることもありませんが、その代わり幹事の皆さんが手弁当で企画・運営をするスタイル。よい会にしかならない構成となっている。また、オヤジ同士がうまくやっている会社間で、過度な争いは起きにくい。当社は、地区の各団体に加盟していますが、他の団体の全国大会ではいつも「名古屋の業者はどうしてあんなに仲が良いのだ」と質問されます。そのベースには、名鐵会の存在というのがあるのかもしれないですね。今後も末永く続く名鐵会であってほしいと願っています。

業界紙の活用術講座を開催/「読んで得する鉄鋼新聞」をPR

 フォーラムに先立ち、鉄鋼新聞社の創立70周年記念企画として名古屋地区で実施している「業界紙の活用術」講座を開催した。

「業界紙の活用術」講座

 近年、若手を中心に新聞離れ、活字離れが進んでいることから「なぜ業界紙を読むことが必要か」という観点で情報の扱い方、新聞情報を営業活動、経営判断に取り入れることのメリットなどを説明した。

 また、情報活用の際の参考として「循環型のものづくり」を前提に、業界紙記者が業界と接していて気づくことなども話した。さらに、昨秋からの原料炭の大幅な値上がりの歴史的背景、変わる日本のものづくりなどもテーマとして取り上げ、シンプルな業界情報から思考を掘り下げ、将来を予想する自己訓練の大切さなどもPRした。

 同地区では、名鐵会をはじめ、地区メーカー、商社、鋼材問屋などで計11回、講座を行う予定。