【どうなる関西鉄鋼市場展望と課題3】関西鉄鋼関連企業首脳に聞く

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――安定稼働を維持していくためにはコストも増えます。

松野氏/海外展開、国内製造基盤強化が不可欠

松野「価格のことはこの場で申し上げるべきものではないが、一般論として、再生産可能な収益をあげられないメーカーは市場から退出せざるを得ないこととなろう」

松野氏

 「もうひとつの大きな課題は、人手不足および人材の確保・育成だ。当社としては中長期的な事業計画および要員見通しなどを踏まえて採用を安定的に実施しているが、これからはその中身も問われる。高齢者や女性の活躍を図っていくことがさらに重要になっている。女性採用に関して申し上げると、製造部門の交替勤務を含む職場で女性の活躍を促進しており、現在は全採用のおよそ2割が女性になった。また女性が元気に長く働けるための職場づくりについても取り組んでいる。子育てと仕事が両立できるよう育児休暇の拡充、製鉄所における託児所の設置などの施策に加えて、やむなく、出産・育児で辞めた人に対しても再入社しやすいような道を作るなど、多面的な支援措置を講じてきている。また、日本に滞在する留学生についても、2007年から毎年継続的に数名ずつ採用しており、この取り組みはかなり定着してきた。いまは多くが日本で仕事しているが、いずれは当社のグローバル展開の中核を担ってもらいたいと考えている」

――高炉の海外展開はさらに進んでいます。

松野「企業の拡大・成長という面から見ると、拡大の場はやはり海外になる。これまで日本国内で一流の技術を持ったお客様に鍛えられ、当社も技術を伸ばしてきた。老朽化対応・人材育成をしっかりと進め、国内製鉄所をマザー工場として確立し、その技術を海外に移植していく。これが大事なのではないかと思う。成長戦略として重要なポイントは技術先進性・コスト競争力・グローバル展開の3点。そのためにも国内製造基盤の強化が欠かせない。高い技術力・コスト競争力など国内で培ったベストプラクティスを海外に展開していく」

――森さんの会社ではベトナムでの事業展開に加えて、昨年12月に米国で電炉メーカーを買収した。

森氏/〝地産地消〟の電炉、海外進出で活路も

森「国内はお話にあったように、もう需要の大幅増は期待できない。それに加え、われわれの業界は需給バランスで見ると、供給が相変わらず多い。国内に拡張の余地はもはやなく、成長するには海外に出るしかない。これはもう必然ですね。出ていかないとしょうがない。また、高炉さんと違うのは、電炉業は『地産地消』であるということ。その国で造り、その国のお客さんに買っていただく。この特性も、輸出するのではなく海外に出る理由のひとつだ」

森氏

 「もうひとつ言うと、国内電炉メーカーは昼間操業せず、人が寝ている間や休んでいる間に電炉を動かしている。製鉄所としては24時間操業が本来の姿だが、そういう基準で考えると、電炉の稼働率は半分程度しかない。大幅な需要増が期待できない以上、これ以上の稼働率向上は難しい。また、夜間操業の職場には人がなかなか来ないという問題がある。非常にきつい労働環境であり、改善のためにはかなり省人化しないといけない。省人化が難しい部分については、高齢者の活用をもっと進める必要もある。シニアでもまだまだ働ける方は多い。そういう人が働きやすい職場環境にしなければと考えている。その点は、高炉さんに比べて随分遅れていると思う。徐々に改善していきたい」

松野「海外事業の展開に関しては、高炉メーカーも同じようなところがある。お客様については、海外の日系企業や現地企業を含めた非日系企業など、品種によっても多様である。いずれにせよ、海外でも需要家に近いところで、日本と同様の品質・競争力のあるものを提供できるかが勝負になる。他の高炉メーカーも含めて海外に随分拠点があるが、国内がシュリンクするからという理由ではなく、成長するための海外進出であると思う。当社についても、今年3月から新たに日新製鋼がグループに入った結果、海外における下工程の生産能力は2100万トンになった。これを活用しながら、日本のお客様に提供しているサービス・ソリューション・製品を海外でも同じように提供する。これが成長のための大事な要素だと思っている」

――普通線材製品メーカーでは海外展開は少ない。国内主体で事業していく中でどう成長戦略を描きますか。

山下氏/高品質・即納・少量多品種で輸入材に対抗

山下「メード・イン・ジャパンでがんばっているのは、海外進出が難しいから。中小企業が海外に出るとき、各国のいろいろな事情に対応しないとならない。そうした難しさに対応するには、私たち中小企業では『ヒト・モノ・カネ』が続かない。だから国内で量が増えなくとも、がんばるしかない。量は追わずに何ができるか考えないとならない」

山下氏

 「日本が最初に対米輸出した鉄鋼製品は釘だった。最初に輸出できた製品だったということは、逆に言えば最初に輸入材にやられやすい製品でもある。すでに日本では釘メーカーがもう3社くらいしかない。8割くらいが輸入材だ。米国も同じような状況で、ドメスティック・メーカーは2割しかない。日本、米国ともにすでに状況はもう最後のほうだ。これ以上輸入材は入らないと思う」

 「こうした厳しい状況で、我々が何を守っているかというと、まずは品質。次にクイック・デリバリーであり、少量多品種だ。これは中国メーカーができないこと。中国メーカーは量を求めるが、私たちは薄利多売の商売はしない。それでやっている。我々が成長戦略を考えたとき、量でいくのか、利益でいくのか。やはり利益を重視する必要があると思う。そのためには付加価値の高い新製品が欠かせない。ただ、釘なんて新製品がなかなかできるものじゃない。値引きされないような新製品が生まれる、そういう分野に進出していくべき、というのが成長戦略ですな。我々中小企業が生き残っていくのはそれしかないのでは。やはり量を追いかけると、どうしても値段を下げないとならない」

――商社では合従連衡が進み、総合商社の建材部門はエムエム建材と伊藤忠丸紅住商テクノスチールの2社に統合された。

中西氏/国内は収益安定的確保の最重要地域

中西氏

中西「商社にとっても将来のさらなる拡大や成長の場は海外だと考えている。メーカーさんの技術力と同様に、商社にも長年蓄積した機能やノウハウが国内にあり、これが今後ますます発展していく海外で生かせるものと思っている。国内はすでに成熟しているものの、国内はわれわれのトレーディングの原点でもあり、お客様とともに培ったノウハウや人材の宝庫でもあり、そして今後も一定規模の収益を安定的に見込める最重要地域という位置づけには変わりはない」

――流通での生き残り策・成長戦略はどう描いていきますか。

阪上氏/「単純流通」業者は国内生き残りが必須

阪上氏

阪上「国内需要は大幅に減らない、しかし増えることもない。これは衆目の一致したところで、量の拡大を目指すなら、海外に出るしかない。よく流通とひとくくりに考えるが、大別すると、加工流通と単純流通があって、加工流通のポイントは生産効率や品質などであって、単純流通は物流機能になる。加工流通の場合は、品質だとか、効率だとかで、現地企業と差別化を進めることができ、そこに進出する余地がある。一方、単純流通は〝機能は物流だけです〟とならざるを得ず、現地企業と差別化する手段がなかなかない。差別化できなければ、競争に勝てない。海外ユーザーがどの企業から資材を購入するかと考えると、外資と自国企業があった場合、〝どっちを優先しますか〟となれば、当然自国。外資はそれ以上の魅力がないと勝負にならない。単純流通の場合、現地企業との差別化は難しく、海外進出のハードルがきわめて高い。現地企業をM&Aする場合、つまり完成したものを買うなら進出は可能かもしれないが…。やはり、山下さんがおっしゃる通り、海外進出にはヒト・モノ・カネの問題もつきまとう。こう考えると、〝国内でがんばるしか方法がないよね〟となる」

 「国内に目を向けると、何だかんだと言いながら、マーケットは引き続き巨大であり、まだまだやりようはある。ただ、これから業者はどんどん集約され、業者数は減っていく。集約が進む中、どう生き残っていくか。その選択肢しかない。そこで物流機能の効率化を進めるのは当然だが、これに加え、近年需要家は『(1カ所で複数の鋼材を購入できる)ワンストップ購買』を求めている。それを受け、都市部の流通は、ワンストップ型に変化している。これに対応できないと生き残るのは難しい。単純流通から他業種に転換するのは、うまくいくものではない」

――加工流通の立場ではどうですか。

北氏/CCは国内で勝負/利益確保が必須

北氏

北「実際は、うちの業界が一番厳しいですね。海外は考えにくく、国内しかまずない。ただ、製造業が海外に流出していく潮流は確かにあるが、内需の6千万トンはしばらくキープできると思っている。昔から議論されているが、コイルセンター(CC)はプロフィットセンターなのか、コストセンターなのか。言い換えると、量で勝負するかどうかということだが、数量で勝負していたところは、すでに合従連合で集約化され、グループ化されている。それでは、なぜ独立系が生き残ったのか。まず利益は、ほぼ毎年黒字にする。黒字化でないと、中小企業に対して銀行は厳しい。それで、その利益をどうするのか。大手メーカーさん、商社さんには申し訳ないが、系列CCは、その利益を親会社に配当しないとならない。当社は50人そこそこの会社だが、必要な利益は従業員全員が食える分、つまり彼らの給料はどうしても稼ぐ必要がある。これが生き残るために最低限必要なものだ」