【四国の鉄鋼市場は今】造船、「2019年問題」迫る

公共土木は今期も堅調

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 四国の鋼材需要は年間180万トン前後。このうち約100万トンが造船向け。流通業者経由を含む建設向けが50万トン、建産機が10万トン弱とみられる。2008年のリーマン・ショック以前は200万トンを維持していたが、その後は減退が続いている。

 香川県丸亀市の今治造船・丸亀事業本部。1300トンクレーン2基が据え付けられた新設の大型ドッグで世界最大級の「2万個積みコンテナ船」の建造が本格化している。愛媛・西条でも同型のコンテナ船を建造する。

一層の厳しい受注環境が予想される造船業界

 「今造は別格。他の造船各社は新規受注が途切れる『2019年問題』の荒波を乗り切れるかという厳しい状況に立たされている」。瀬戸内沿岸で厚板加工や船体ブロック組立を行っているこの会社も「今期売上高は前期比減少の見込み」という。

 同社によると、造船各社は今年1~3月以降、手持ち工事量の維持を図ろうと、コスト見合いの選別受注に少しずつ動いている。「2014年問題」で味わった苦境を何としても回避していく構えだ。

 造船工程のピッチダウンや、造船加工の内製化も進んでおり、厚板加工・組立業界や形鋼・鋼管など造船向け鋼材販売業界は厳しさが出ている。ただ「厳しいことに変わりはないが、4~5年前の厳しさに比べると少しはまし」という状況だ。

 建設用鋼材もいまひとつ伸び悩んでいる。高知、徳島など太平洋沿岸の南海トラフ地震対策や、四国横断自動車道の新ルート工事および片側二車線化工事は引き続き堅調だが、工場・倉庫・店舗やマンションなど民間投資が伸び悩んでいる。

 「四国全体を見渡せば、病院、倉庫、店舗などそれなりに建築工事が進行しているが、鋼材流通業者の業績はあまりよくない」と高松市内の流通業者。

 鉄骨加工業者は大型物件の加工で忙しいが、中小物件向け鋼材販売を主力にしている流通業者は販売減から前期並み利益の確保は厳しい状況が続いている。

 昨年3月、小野建(本社・大分市)が香川県丸亀の秋山寅吉商店を買収。今年4月には阪和興業が松山市の老舗・亀井鉄鋼を買収した。需要縮減で事業継続が厳しくなった地場流通の一つの選択である。一方で、しっかりした足腰を持って生き残り策を進めると同時に、成長戦略を実行している流通も多い。(小林 利雄)

【四国鉄鋼流通の課題】〈岩崎一雄氏(アムロン取締役相談役)に聞く〉「いかにするか」が経営の根幹、生産性の追求で競争力強化

 四国の鉄鋼流通業界はこの数年、商社による地元特約店の経営権取得など大きな変化が起こっている。鋼材需要が縮減する中で、業界再編は避けられないが、四国の変化は全国の縮図ともいえる。長年、鉄鋼特約店を経営してきたアムロン(本社・高松市)の岩崎一雄取締役相談役に話を聞いた。

――四国の鉄鋼流通に変化が広がっている。

アムロン・岩﨑一雄取締役相談役

 「四国に限らないことだが、全国の鋼材需要が縮減する中で(流通再編の)方向性としては想定された方向ともいえる。経営権を手放すには、それぞれ個別の事情と決断した理由があり、そのことにコメントする立場ではないが、鋼材流通業の一つの方向性を示していると思う」

 「四国は造船向けも多いが、鋼材流通の多くが建設向けをベースにしている。『変化』のきっかけの一つには四国で営業してきたスーパーゼネコンが首都圏にシフトしたことが挙げられる。そのため大手の下請けが主力だった地場ゼネコンにも変化や格差が生じた。四国の建設業も人手不足が広がっているが、その変化を先取りして人手不足対策などきちんと手を打っているところが勝ち残っている。そうしたゼネコンの変化は、鋼材流通の変化に直結している」

 「実需減が進み業績が停滞あるいは低迷する過程で、鋼材販売だけでなく鋼材加工や不動産業その他、多様な展開を図るところや、首都圏など他地区に進出して業容を確保するところなど生き残り策を講じている。しかし経営が判断していくことは『何をやるか』ではなく『いかにするか』ということが大事と思う」

――「いかにするか」とは。

 「『経営をいかにするか』にはいろいろな方法があると思うが、当社で追求してきたことは生産性をいかに上げていくかということ。『生産性基準原理』に則った経営を志向してきた。事業の中で生産性をあげるチャンスは必ずある。そこを見逃さずに手を打つこと。鋼材流通は相場を見ながら手を打つことが多いが、これでは経営は安定しない。私自身、『相場で儲けてはならない。収益の源泉は生産性にある』と考えて行動してきた。生産性を高めることが付加価値の向上につながり、チャレンジする体質にもつながる」

 「生産性を高めていくには、それを考え実践していく人材の確保が欠かせない。当社では厳しい状況でも毎年学卒を定期採用して人材の育成・確保を目指してきた。企業の強さはそこで働く『集団』の基準がいかに高いか、で決まるが、集団基準の高さは一人ひとりの質の高さの集合だ」

 「価格競争だけの営業でなく、競争を回避でき、しかもお客の役に立てる営業ができる人材がたくさん居る会社が強い。営業の質が問われる時代だ」

――設備投資面では。

 「設備投資は慎重にすべきだ。設備投資はリスクでもある。当社も最近、薄板加工の投資を行った。ニーズに対応した投資は必要だが、脇が甘くなってはいけない。早期回収のめどがなければ相当慎重に考えるべきだ。間違った投資は経営の屋台骨を崩す。収益を積み重ねることはたいへんなことだが、消耗するのは簡単。M&Aの時代では皆、取引先の財務体質に関心を持っている。常に資本のバランスを意識して経営しなければ足元をすくわれる」

「四国新幹線」構想に期待

――四国の将来について。「四国新幹線」構想が盛り上がっている。

 「4県に『四国は一つ。四国全体で地方創生していこう』との機運が盛り上がっており、『新幹線』もその一つで、実現への可能性も高くなりつつある。四国の面積は岩手県とほぼ同じで、人口も約400万人で横浜市とほぼ同じという中で、国政レベルでは反対も出てくるかもしれないが、四国の政財界や民間ともに強い希望を持っている。四国が一つにまとまることができるプロジェクトだ」

 「このほか四国では『無農薬による日本の食糧供給基地』構想、香川県では『健康寿命日本一』を目指す取り組みも進行中だ。元気な四国を創生して、四国を訪れる人・移住する人が増えてくれればと思う」