【どうなる関西鉄鋼市場展望と課題・完】関西鉄鋼関連企業首脳に聞く

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北氏/求められるCC〝コンビニ化〟

北「そのために何をしていくか。CCはこれまで、いいものがあるが、都市部に行かないと買えない、少し不便な〝デパート・百貨店〟みたいなものだったが、だんだん消費者にとって便利で安い 〝スーパー〟に変わってきた。いまは、もう〝コンビニ〟だ。阪上さんがおっしゃったように、何でも揃うことに加え、『多少高くてもいいから、何でもすぐもってこい』というニーズに変わった。その機能ができるかどうかが大きなポイントになる。その機能を充実させようとしたとき、オーナー系が手を組むのは、同じ業種・CCはだめ。同じ板厚、品種を切っているところ、または熱延CCが熱延CCとくっついても意味がない。過剰設備なので、設備をなくせれば、多少の意味はあるだろうが…」

北「これから流通加工に求められるのは、『あなた、コンビニができますか』ということ。黒皮、冷延、表面処理、ステンレス…。マーケットからは『少し高くてもいいから、なんでもすぐに持って来てくれ』と要求される。丸棒やH形鋼をCCが揃えるのはまだ難しいのだろうが、仕組みができれば、丸棒、H形鋼もできる。他企業とコラボレーションすればいい。こうしたなんでもできるというのは、オーナー系が残っていくすべだと思う」

座談会の様子

 「関西圏の需要動向を見ると、薄板出荷量は約400万トンで、ここ数年はプラスマイナス1%で動いている。甲信越を含め関東の落ち幅が大きく、東海も自動車が落ちると、へこみ幅はどうしても大きくなる。関西が比較的安定しているのは、CC各社が目に見えないところで、いろいろがんばっているからだろうと思う。CC同士で話をすれば、成長戦略は出てこないかもしれないが、生き残り戦略なら出る。もちろん、これで中部や関東に、山陽道を攻め込むのはダメ。メーカーさんが困るだけだ。CCはメーカーさん、商社さんといった川上ともコラボする必要がある」

――第4次産業革命への動きが広がっています。鉄の世界でも人手不足や技能伝承問題の解消、品質やコスト競争力強化、安全対策などAIやロボット、IoTなどが予想以上に早く導入されていくのではないか。

松野氏/高度IT、AI技術活用を

松野「意外と早くというよりも、できるかぎり早くそうならねばならないでしょう。鉄鋼業は日本製造業の中で、一番歴史のある産業のひとつ。それだけに製・販・技で膨大なデータが蓄積されており、これらのビッグ・データを活用した競争力強化への取り組みを進めてきている。また、高度IT、AI技術を組み合わせると、安全対策・設備管理などにたいへん大きな力になる。当社も安全対策、設備故障の予兆診断、技能伝承、シミュレーション技術への適用など、これらの実現に向け鋭意取り組んでおり、組織的には昨年4月に業務プロセス改革推進部内に高度IT活用推進室を設置。技術開発本部、グループ企業の新日鉄住金ソリューションズとも連携しながら、こうした技術を大いに活用できるよう、取り組んでいる」

――電炉ではいかがですか。

森氏/熟練技術の機械化など成果

森「当社でも取り組みを進めている。人手不足で熟練技能者の技術すべてを継承することは難しいため、機械で代替するしかない面もある。製品のキズ検知器の開発や、機械の振動・温度などを継続的に計測し、不具合が発生すればそれを検知して知らせてくれるような検査機の導入など、予防保全に関する取り組みが中心。少しずつ成果が見えてきたかなという段階だ」

――ロボットなどの導入は?

森「炉前作業など安全対策をさらに高めるべき職場ではロボット化を考えていきたい。ご存知のように、千数百度もの溶けた鉄が溜まっており、炉前での作業にはどうしても危険が伴う。ロボットで代替できないかと取り組みを始めている」

――山下さんのところでは?

山下氏/ローテク商品を先端技術管理

山下「釘は、ローテク商品。逆にローテクそのものだと自慢している(笑)が、これを管理する技術は最新設備を用いている。製品はローテクだが、最先端の設備、そして管理技術を導入し、生産している。IoTやAIの導入はこれからだが、データを分析するのは得意だろうから、新しい試みとして取り組みたい」

――商社での取り組みは。

中西氏/AI活用、商社でも重要に

中西「具体的にはこれからです。ただ、RPA(仮想知的労働者)も含めてこの流れは、予想よりもはやいスピードで進むだろうと思っている。また、単純事務作業が置き変わると言われているが、むしろ、曖昧だとか、口で説明しにくいとか、逆にそういうところが代替されていくのではないか。商社で、今後AIがどう使われるのか、どう使っていけるのか。重要課題だと思います」

山下「そうなると、さみしいですね。やっぱり、フェイス・トゥ・フェイスでやりたい。酒を飲みながら、『この人の本音はどうか』とか、考えながら仕事するほうがやはり楽しいのでは」

――流通でもIoT化やAIの活用が進みますか。

阪上「どこにどう活用するのかわからないのが現状だが…」

中西「市況を予測するというのもあるんじゃないですか」

阪上氏/流通での活用はこれから

阪上「それも含めAIを活用しようという流れにあるのだろうが、どういう分野で使うのかはまだ分からない」

松野「それだけ活用する余地もあるということですかね」

――ウーバー(一般人が空き時間・自家用車を使ってタクシー業務をする)のような形で、鋼材配送トラックの空き便を活用するなどは。

北「難しいでしょうね。違うところに持っていかれると困る(笑)。ただ、帰りの空き便を利用することはこれまでもしている」

中西「理論的には、できる余地があるのではないか」

阪上「現在、電話でやっていることをシステム化してしまうというのはあり得ると思う」

――コイルセンターでのAIやIoTなどの活用は?

北「難しいですね。昔はトンカチで設備を叩いて、不調を判断できたが、いまはできない。いまの人はやろうとしてもできない。データの蓄積があまりない中、ITを活用するのは難しい。これからデータをどう蓄積していくかということだろう。それにCC業界はまだマンパワーが優先されている」

山下「そっちのほうが安いでしょうしね」

北「そう。機械のほうが、コストが高いのが現実だ」

松野「ルールが複雑化し、個人単位でそれらをすべて把握することは困難な現在、組織としてどう意思決定するのが最善か。AIはこうした判断を迫られるような場合にいろいろなケースを想定して最善の判断を支援するための様々なアドバイスを提供するようなこともできるそうだ。AIの活用には、いろいろな可能性があるのではないか」

山下「AIの活用はまだまだだが、やはり企業としては変わっていかなければならないと思う。待っていたらダメだ」