前職は生命保険の営業、四国IL香川の異色女性球団社長「総合優勝を狙いたい」

今年3月、香川オリーブガイナーズの球団社長に三野環氏が就任した。独立リーグとはいえ、プロ野球チームの社長に女性が就くのは極めて珍しい。就任から3か月、前期を戦い終えての率直な感想を聞いた。

香川オリーブガイナーズの三野環球団社長【写真:広尾晃】

野球界では稀な女性球団社長「枠に囚われず出来ることもある」

 今年3月、香川オリーブガイナーズの球団社長に三野環氏が就任した。独立リーグとはいえ、プロ野球チームの社長に女性が就くのは極めて珍しい。就任から3か月、前期を戦い終えての率直な感想を聞いた。

――社長に就任されて3か月が経ちました。

「最初は右も左もわからない状態でした。”こういうことをしよう”としても困難があってできない、みたいなことを繰り返し、スタッフに教えてもらいながらの3か月でした。ようやく課題点も長所も見えてきたところです」

――観客動員はいかがでしたか?

「昨年前期の動員数との比較としては、ほぼ横ばいでした。ただ昨年最多動員を記録した読売巨人軍(3軍)との交流戦が、今年は(前期ではなく)後期にあるので、満足ではありませんが悪い結果ではないと思っています。読売巨人軍(3軍)との交流戦が行われる後期を含めた通期では、動員増の見通しです。ただグッズの売り上げに関しては、昨年前期よりも10%程度増えています。

 前期はやはりマニー・ラミレス選手参戦の効果があったように思います。高知戦はお客様の入りが良かったですね。マニー選手が出ない試合もあったのですが、出ることを期待して来られるお客様も多かったようです」

――チームは最終的に3位でした。

「野球そのものに関しては、球団代表をはじめ、西田監督、コーチに一任していますが、去年より下回る結果は避けたかったですね。チームは急に強くはならないでしょうから、一つ一つやっていくしかないですね。
それは、誰よりも選手、監督が分かっていることですし、皆それぞれに目標を持って日々トレーニングに励んでいますから、私はそれをバックアップするために環境を整えることを考えていくだけです」

――以前はどういう仕事に就いておられたのですか?

「元は生命保険の営業職でした。香川オリーブガイナーズは、昨年オーナーが変わったのですが、新オーナーから“社長をやらないか”と声を掛けていただいたんです。すごくびっくりしました。オーナーから”野球界には女性オーナーはいるが女性社長はいない。新しい風を吹き込みたい”と言われました。

 保険の営業は個人事業主でしたから、マネジメントや経営の経験も多くはない。球団社長は何をするかという認識もありませんでした。だから、昨年10月半ばにオファーをいただいた時は、一度お断りをしたんです。でも、熱心にお声を掛けてくださったこともあり、野球の素人だからこそ、枠に囚われず出来ることもあるのでは、と考え方も変っていき、お引き受けすることにしました」

「球団をすごく大事にしてくださるファン」の存在に感動

「就任したばかりなので、現場を知りたいし、野球のノウハウも勉強したいと思っています。今の自分に何ができるかなと考えて、球場の入り口でファンの皆さんにごあいさつをしたり、清掃をしたり、グッズ販売も担当しています。じっくり試合を見る機会はありませんでしたが、来季に向けては試合やグラウンド内のことも学びたいです。

 感動したのは、ファンの方が毎試合来てくださって、お手伝いしてくださること。7回表終了時にジェット風船を飛ばした後は、ファンの皆さんが拾ってくださいますし、ファウルボールの警告の笛もファンが率先して吹いてくださいます。球団をすごく大事にしてくださるファンがいらっしゃることに感動しています。

 まだ私は直接チームや選手にかかわることは多くありませんが、個性が一人一人違いますし、みんなが子供のようにかわいいです。みんなの頑張りをもっと多くの人に見てほしいと思いますね」

――経営面で気を付けていることは?

「球団の経営指標には、観客動員数、チケット収入、選手の強化など様々な要因がありますが、全体的なバランスが大事だと思います。編成会議にも出席していますので、今後は監督、コーチと深い話をしていきたいと考えています。

 香川オリーブガイナーズは11年連続でNPBに選手を送り出しているので、すごくプレッシャーを感じます。今年もドラフトで指名されるようバックアップしていきたいと思います。 

 スポンサーへの営業には、前職の経験が役立っています。既存のスポンサーにご挨拶したり、新規を開拓したり、そちらは得意な業務ですので、まずは財政面を整えるためにも新規開拓を広げていきたいですね」

――ご家族はどのように仰有っていますか?

「夫と高校生の娘がいます。夫は当初から私がすることを支え、応援してくれています。娘はボランティアスタッフとして手伝ってくれます。学校の先生が『今日、お母さんテレビに出てたよ』と教えてくれるそうです。家族の支えも張り合いになります。

 去年の最多入場者数は約1700人でした。後期はこれを上回って2000人の動員を目指します。チームとしてはもちろん、後期優勝、総合優勝を狙いたいですね」

広尾晃●文 text by Koh Hiroo

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