【北陸地区鉄鋼市場現状と展望】

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北陸新幹線/開業効果、観光面で持続/金沢市内ホテル、建設ラッシュ

 北陸新幹線金沢開業から3年目に入った。開業ブームに沸いた1年目に比べると効果は徐々に落ち着きをみせているようだ。

 日本政策投資銀行北陸支店が昨年6月に実施した「北陸地域設備投資計画調査」によると、北陸3県の2016年度民間設備投資は全産業(除く電力)で3870億円(前年度比11・0%減)と7年ぶりに減少に転じた。北陸新幹線開業に伴う大型投資が一服したためとみられる。

 ただ、平日でも多くの観光客で賑わう金沢駅などからは開業効果の衰えは感じられない。

 JR西日本金沢支社がまとめた開業2年目(16年3月14日~17年3月13日)の北陸新幹線の利用者数をみると、前年同期比7%減の858万人と1年目を下回ったが、開業前の在来線特急時代に比べて2・7倍と高水準を維持した。

ホテル建設ラッシュに沸く金沢市内

 旺盛な観光需要を反映した関連投資は依然として活発。もともと金融機関などのオフィス街として発展した金沢市中心部の上堤町・下堤町界隈では老朽化したオフィスビルの更新需要も重なり、5月末現在で建設中の案件も含め8件のホテルが計画されている。金沢駅周辺でも外資系高級ホテルなど複数の計画があり、20年にかけて市内で完成予定のホテルは10件以上と建設ラッシュの様相だ。

北陸3県/15年度鋼材受注、需要低調/4年ぶり80万トン割れ

 【鋼材受注量は伸び悩む】

 近年、北陸地区の鋼材需要は伸び悩み傾向が続いている。

 日本鉄鋼連盟がまとめた受注統計によると、2000年以降の北陸3県(富山・石川・福井)の普通鋼鋼材受注量は、06年度の102万8千トンをピークに07年度101万5千トンと100万トン台で推移していたが、08年度はリーマンショックの影響から79万4千トンに急減。

 最も落ち込んだのが09年度で60万5千トン。10年度は80万3千トンへと急回復し11年度も回復が期待されたものの、東日本大震災の影響で微減の78万1千トンにとどまった。

 その後、12年度81万4千トン、13年度87万3千トンと緩やかに回復していたが、14年度は消費税増税後の景気減速もあり85万トンに減少していた。

 15年度は78万9588トンで前年度に比べ7・1%減少した。製造業、建設業とも需要が振るわず4年ぶりに80万トンを割り込んだ。これは2000年代に入り09年度、11年度に次ぐ3番目に低い水準だ。

 県別に見ると富山県は37万6千トンで同4・4%減。品種別にみるとH形鋼が7万7千トンで3・3%増加した一方、異形棒鋼は5万6千トンで3・0%減。厚板は5万5千トンで9・6%減、冷延コイルも2万7千トンで15・3%減だった。

 石川県は29万3千トンで同10・7%減。主力の厚板は7万8千トンで2・9%減、熱延コイルは2万8千トンで28・5%減、冷延コイルは2万3千トンで26・9%減少した。H形鋼は2万1千トンで8・2%減、異形棒鋼は4万7千トンで1・5%減。

 福井県は12万トンで同7・0%減となっている。異形棒鋼は4万3千トンで横ばいだったが、H形鋼は4万9千トンで9・7%減だった。

17年度鋼材需要、増加へ/五輪など首都圏案件流入を期待

 【17年度全体需要は前年度比増】

 在富高炉メーカートップによると16年度は「製造業向けでは電子機器やデバイス、医薬品関連で設備投資があり、バス・トラック関連は好調だった前々年度に比べ生産台数がさらに2~3割増加し繁忙だった」

 「大型物件が一服した建材分野は低迷。地区大手ファブは域外物件や商社鉄骨の加工などで仕事量を確保していた。土木分野でも期待していた新幹線延伸工事で予算の厳しさから入札不調が散見された」

 では今年度(17年)の展望はどうか。同高炉トップは「全体需要は前年度より増加する」見込みという。

 近年では公共事業の縮減傾向が続いており、継続案件を除いて今期も一般公共土木は多くを望めない見通しだが、「鋼矢板はほぼ例年並みの出件は見込める。鋼管杭は大型案件である金沢港の無量寺岸壁整備や伏木富山港の港湾改修工事が進捗する」。

 建築向けでは「富山県立大学看護学部や金沢工大学園白山キャンパスなどの新築工事が進む。金沢市内でホテルの建設計画が相次ぎ、福井や富山の駅前でも計画がある。東京五輪や再開発など首都圏案件の需要流入にも期待」。

 製造業向けでは「バス・トラックは引き続き堅調で前年度比1割増の生産台数が見込まれる。建設機械も今秋の排ガス規制に向けた駆け込み需要もあり上期は増産傾向」と好調。

 目玉は金沢以西で建設が促進される北陸新幹線敦賀延伸工事。鋼材需要としては橋脚を含め高架橋工事などに使用される大量の鉄筋が大半を占めるが、高炉製品でも「昨年は回転杭を中心に1万トン弱が出件したが、今年度は出件済みを含めさらに2万トンが見込める」など、ここ1~2年がピークとなりそうだ。

 しかしながら「人手不足等の影響により新幹線工事で入札不調・応札辞退が相変わらず目立つ。発注側も予算や人員を増やすなどの弾力的に対応しなければ22年度末までの開業予定も危ぶまれる」などと工事の遅れを懸念する声も聞かれる。

特約店の展望

富山県、民間投資が上向く期待感

 【特約店の今期展望】

 富山県内では砺波東バイパスや東海北陸自動車道の一部4車線化、利賀ダム関連などの公共工事や、富山銀行の本店移転、高岡市総合体育館などの建築案件が計画されている。製造業ではジェネリック薬品や電子部品関連などの業種が好調で民間投資が上向く期待感もあり、需要台頭が待たれるところ。 

 ただ新幹線工事がなくなった県内では開業前後に比べると出件数は減少気味で、建材需要としてのインパクトに乏しいのが実情。県内の大手特約店では「今期は建築案件はそこそこあるが目玉となる大型物件が少ない。土木は公共事業費が前年度並みかややマイナスのため相変わらず伸び悩みそう。土木、建築とも我慢の時期」と厳しい表情だ。

大きく落ち込む要素ない、石川県

 一方、石川県内の大手特約店では今期の需要量について「前期に比べ大きく落ち込む要素はない」とみている。「土木向けは今年から来年にかけて新幹線延伸工事が本格化し、鋼材の扱い量は昨年より増えるだろう。鉄骨向けはホテルの計画は旺盛だが、工場等の民間設備投資案件が少なく横ばい。ホテルについては建設用地や供給量からみて今年がピーク」との見方。

 「製造業向けではバスなど輸送機器関連が相変わらず堅調を維持し、建機も足元好調。厨房機器など食品機械も底堅い。工作機械や繊維機械は前年度並み」の見通しだ。

 水道や配管材料に強みを持つ特約店でも「前期同様、今期の需要量も悪くないだろう。建築設備部門では、県立中央病院や金沢医科大学中央診療棟など大型建築工事が継続。金沢市内には複数のホテル案件がある。水道部門では市内には耐用年数を過ぎた老朽管が多く、更新需要の増加が見込める」と好調の持続を予想する。

福井県、機工需要増加の見通し

 福井県内の大手特約店では今期、「鉄鋼建材部門では建築向けは盛り上がりに欠けるが、新幹線工事関連のデリバリーが本格化するほか中部縦貫自動車道や足羽川ダム関連など土木案件が見込める」

 「製造業向けでは電子部品や自動車関連が忙しくなりそう。当社も2~4月の出足は機械工具の受注が伸長。全体でも製造業向けを中心に足元の受注残が昨年に比べ1~2割増と上向いてきている」と機工需要の増加を見込む。(藤田 英介)