【非鉄製品流通の明日を語る】

中部地区業界団体トップ2氏対談

©株式会社鉄鋼新聞社

 伸銅、軽圧メーカーの目線で見ると、足元の需要は堅調。弱電関連や自動車など大口ユーザーの好調な生産を映し、高い稼働を維持している。しかし、実態を細かく見ると、国内で好調なのはヒモ付き需要の一部。多くは、エンドユーザーの海外生産シフトに合わせ、輸出向け素材の生産を加速しているのだと察しが付く。同時に、各メーカーは海外での設備投資を拡大。国内で好調が続く向け先もあるが、大量生産品の国外流出と構造的な内需低迷が重なり、国内の非鉄需要は縮小基調に歯止めが掛からない。今後もこうした流れは変わらないだろう。こうした逆風下、非鉄製品流通は今後をどう見極め、知恵を出していくべきか。中部地区の非鉄製品流通を代表するトップ2氏に対談してもらった。       

――日本のものづくりはこれから大きく変化していくように思われますが、その辺りから。

市原 日本のものづくりは、かつては大量生産スタイルが主流でしたが、時代とともに個別・少量多品種、または特徴ある独自製品の生産へと変わってきました。大ロット品のかなりの部分の生産がアジアへ流出しました。伸銅品でいえば、黄銅系製品の生産が国内に残る一方、生産性が高く品種が少ない銅管は、海外比率が高まった品種の代表例。主要用途のエアコンは廉価品のほとんどを海外で製造しているという状況です。

水野 そうした中、生産地が変わっても日本のものづくり手法や「品質を守る」という日本らしいものづくりは変わらないですね。とは言え、投資して良い設備を導入すれば高い品質が出せるという時代背景はあります。結果的に海外の製造技術は徐々に追いついてきている。今後は質だけでなく、管理などを含めた総合的なサービス展開で日本のものづくりの優位性を発揮すべきでしょう。

――流通業も、ユーザーの考えや動向をしっかり把握して対応することの重要性が増しています。

市原 経済のグローバル化が進展し、世界が変化し始めました。大手メーカー、大手ユーザーは世界を相手にマーケットを広げる半面、我々流通はその大きな流れに対応する必要が生じてきました。グローバル化は中小企業や働く人(=弱者)にとってはマイナスの影響の方が大きいと思います。大企業や消費者(=強者)にはプラスでしょうが。

水野 大手の資本が入った流通、特定ユーザーへの依存度が高い流通は現地ニーズに対応せざるを得ないのが現状です。しかし、そうではない地場流通は資金面などがネックでリスクもあるので、海外進出を容易には決断できない。グローバリズムは市場を広げる半面、強者、弱者の格差をも拡大する方向性を持つと言えるでしょう。

――グローバル化で日本のものづくりが変わる中、国内では、東日本大震災などの大災害が立て続けに起こり、ものづくりに多くの課題があることが露見しました。

水野 グローバル化のエポックとしてリーマンショック(2008年9月)が起こりました。その際には、アルミの国際相場が急落。国内製品市況の目安となる地金価格が四半期で100円下がり、需要全体が大きく落ち込みました。グローバル経済が進展したからこそ、アメリカの一企業の破たんが世界各国に大きな影響を与えたのでしょう。

市原 震災発生後の需要減も顕著でした。ただ、自動車はサプライチェーンの寸断に伴って関連需要が一気にストップしましたが、チェーンの復旧でその後急回復。一方で、仮設住宅向け住宅設備需要の発生予想により黄銅棒の需要が一時急増しました。しかし、それは仮需だったことが後になって発覚し、実需が伴わずに相当数の在庫が積み上がるという事態も発生しました。

水野 業界によって荷動きの勢いに大きな差が生じました。

市原氏/売り先、仕入先の多角化課題

市原 大震災の教訓として、さまざまな分野の需要家への販売ルートと供給ルートを確保しないと、業績の乱高下にさらされやすいと痛感しました。永続的な事業継続という視点から「売り先と仕入先の多角化」は一つの大きなテーマとなることは間違いなさそうですね。

――やはり、先行きに楽観は許されないようですが、今後国内需要はどのように推移していくと見ていますか。

市原 2020年の東京オリンピックに向けて、内需はインフラ関連などを中心に一定量発生するでしょう。しかし、中長期的にはモノを消費する現役年齢人口の減少により現状維持が精一杯ではないでしょうか。

水野 輸送用のトラックなどの需要は堅調で、関連する大手向け需要は当面底堅さを保つと言われており、軽圧メーカーのロールはタイト感が解消されそうにありません。ヒモ付き好調を背景に店売り材の品薄感が強まっており、素材手配や納期調整に追われる〝需要なき繁忙感〟がしばらく続きそうです。

市原 需要は漸減するでしょうが、ただシュリンクを続けるということではなく需要の「質」が変化するのではないかとも考えています。モノからコト、つまりサービス分野への変化ということです。今後モノをあまり消費しない高齢者はさらに増えていくのですが、医療や介護というサービスへの消費が拡大し、それらのサービス業をサポートするAIないしロボットなどの高度な技術を要するモノの需要が増加することも予想されます。

水野 その根底には、深刻な人材不足があると思います。素材メーカーは国内投資を抑制していますが、今後も生産合理化を目的とする設備増強は積極的に推進すると考えます。

――市場のグローバル化、ユーザー志向の高まり、内需縮小と環境が大きく変化する中、流通はどのような事業戦略をとるべきでしょうか。

市原氏/人手不足は大きな課題/省力化できる仕組みを

市原 製造業だけでなく、流通にとっても人手不足は大きな課題。今後も労働人口の減少が避けられないことから、省力化できるような会社の仕組みづくりを進めることが肝要ですね。例えば、受注や出庫・配送業務などは、AIとまでは一気にいかないまでも、システム化を進め合理化すべきではないでしょうか。全く別の業界の話ですが、一部の外食産業では、卓上のタッチパネルや料理を運ぶレーンのおかげで、料理の「受注」や「出庫・配送」にまったく人手を要しなくなりました。お店のスタッフが「すみませーん」とお客に呼ばれて急いで客席まで行って「お水ください」と言われてしまうお金にならない労働からも解放されましたね(笑)。

水野氏/製販一体の開発、用途開拓で需要の裾野拡大を

水野 ニーズの移り変わりが見通しにくいからこそ「仕組み改善」という足場固めをすることが先決だということには賛成です。これに加え、アルミについては歴史が浅く開発の余地が大きい素材であることから、製販が一体となった開発、用途開拓を推進し需要の裾野を広げることも、一つの課題です。

――アルミ業界を中心にメーカーの再編が進んでいます。流通でも同様の動きが進むと見ていますか。

水野 後継者不足による事業継承、資金面を理由とする吸収は当然考えなければなりません。しかし、メーカーが装置産業であるのに対し、流通は人材産業。オーナー系が多く会社によって社風も異なるため、再編するにはかなり高い壁ですね。大きな潮流にはなりにくいでしょう。

市原 メーカーの合併や経営統合に伴って流通各社の取り扱い製品が広がった結果、流通それぞれの特徴が薄れ、差別化が難しくなりました。これには危機感を覚えますね。メーカーとユーザー双方が流通を選別する時代に入ったとも言えます。選ばれる流通であり続けるには、事業の独自性を追求するだけでなく、商品開発などでもこちらから積極的にメーカーへ働きかけ、連携を強化することが不可欠となるでしょうね。それに何といっても人材育成です。先ほど水野さんも言われたように、流通は人材産業ですから。

――個社の努力がさらに必要である一方で、業界団体としての活動、果たすべき役割も小さくありません。

市原 団体活動に対する価値観が変化する中、今後の活動は交流とともに講習会や講演会などの比率がより高まってきそうです。名古屋伸銅品問屋組合では、毎年秋に若手社員を主な対象として技術講習会を開催しています。主眼は人材育成です。また、会終了後の懇親会にはメーカーの方々も招き、製販で意見交換をする場も設けています。

水野 軽商会でもメーカーを交えた勉強会を開いていますが、こうした教育事業が最も役立つという会員の意見も多く聞かれます。こうした声によく耳を傾けながら、団体の存在意義というものを再認識しなければならないと思います。

――両団体が団結して、業界発展に向けた関係強化を図ることも重要では。

市原 2団体では、すでに総会旅行や賀詞交歓会、納涼会を合同で実施しています。これまでに、両団体の会則もほぼ統一しました。会員数が緩やかな減少傾向にある中、共同での行事開催によりスケールメリットを生かしてコストパフォーマンスを高めるという利点もあります。

水野氏/業界活性化へ他団体と協業も

水野 非鉄製品の団体として一体で活動することにより、発信力が大きくなるという利点もありそうです。さらにスクラップ業界など他団体ともタイアップし、非鉄という枠組みで非鉄業界の活性化に向けて協業することも選択肢の一つではないでしょうか。

――ありがとうございました。