【中部地区鉄スクラップ業界の展望】〈日本鉄リサイクル工業会中部支部長岡田健司氏に聞く〉ニーズの変化に対応した機能強化で事業存続

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 中部地区鉄スクラップ市況は一時の低迷期を脱し、今年5月下旬時点で地区実勢相場は2万4千円台(H2)で推移。薄日が差しているようにも見える。しかし、鉄スクラップ業界を取り巻く環境は、鋼材需要の伸び悩みや、慢性的な発生減による集荷競争でヤード業者の利幅が圧縮傾向にあるなど、厳しい状況にさらされているのも事実だ。今後の需要見通しや、業界が直面する荒波をどう乗り越えるのかを中部地区鉄スクラップ業界のトップである岡田健司日本鉄リサイクル工業会中部支部長(岡田金属社長)に聞いた。(齊藤 直人)   

――足元の環境について。

日本鉄リサイクル工業会・岡田健司中部支部長

 今年に入って、スクラップ環境が大きく変化している。直近2年間は、鉄スクラップ市況はH2=1万円台で推移した時期もあり、低迷が続いたが、足元は同2万円以上で推移する。低迷期を脱したように見える。海外の情勢に目を向けると、北朝鮮のミサイル問題などの国際情勢不安が、世界経済に影響を及ぼすリスクが高まっている。また、中国政府は品質基準を満たしていない「地条鋼」(鉄筋棒鋼用に使用される半製品)を生産する工場・設備を今月末までに閉鎖する計画を打ち出した。地条鋼の生産に要した鉄スクラップが行き場を失うことになり、原料需給が一気に緩和する可能性もある。いぜん先行きを楽観視できる環境ではない。

――先行き不透明感が続く中でも、良い材料は。

 これまで中国ミルの過剰生産が中国産鋼材の安値販売攻勢につながり、日本国内の鉄スクラップ・鋼材市況安を招いていた。中国政府主導でミニ高炉を廃止し、鉄鋼製品の生産を抑制する動きがある。一見、良い動きにも見えるが、余剰屑の発生増が見込まれる。40%の輸出関税があるため、余剰屑が中国国内からすぐに東南アジアなどへ、鉄スクラップの輸出が加速するとは考えにくいが、現段階では余剰屑の行き先が定まっていない。しかし、長期的視点に立って先を見れば、中部地区ではリニア中央新幹線の関連工事や航空機関連産業を中心とする設備投資が控える。直接、間接的にかかわるにしろ、我々の活躍の場はまだ多い

――市中発生減が長引いており、集荷競争を招き、仕入れ値と、販価との値差が縮小傾向にある。今後各社はどう事業を継続すべきか。

 非常に難しい問題だ。しかし、日本全体を見たときに中部地区は製造業の集積地で発生がゼロになるとは考えにくい。我々が長年培ってきたノウハウを最大限生かし、ユーザーにとって安心できる体制を早期に整える必要がありそうだ。ひいては原料発生元の顧客と継続して取引ができ原料の安定調達につながるではないのか。

多能工化で企業体質強化を

――具体的には。

 サービス、デリバリーだ。製造工場に原料を集荷する際に、集荷先工場が製品を出荷する時や部材を搬入する時には、相手先の操業に支障をきたすことなく、原料を集荷しなければならない。集荷先担当者と密なコミュニケーションを図り、何時に引き取れば良いのかなどを綿密に打ち合わせる必要がある。

 建屋解体現場での原料集荷もしかりだ。ただ原料を引き取るのではなく、一緒に解体しているという意識を持つ必要がある。後述するが、今やどの業界も安全や環境に配慮した操業を重視している。そういった現場づくりに、我々も寄与する集荷体制が求められているのではないのか。

 市中発生が多い時代は、原料を持ち込まれるのを待つ、受け身の姿勢で良かったかもしれないが、今は通用しない。集荷原料の再資源化処理プラスアルファの機能が求められている。原料排出元である顧客との付き合いの中で、我々を『屑屋』と見る会社と、『パートナー』と見る会社があるように見える。後者のように、いかに必要とされるヤード業者になるのかが重要だ。そうなるためには、コンプライアンス遵守しながら、引き取った原料をしっかり処理する安心感を与えられるかがポイントになる。

 また、顧客としっかりとしたコミュニケーションをしていれば、さらにスムーズな原料引き取りができるようになる。我々に求められている機能、ニーズは常に変わっている。それに着実に、丁寧に応えていくことが、事業の存続の一手ではないのか。

――業務提携などで事業を存続させる動きもある。

 取り巻く環境が同じであれば、抱える問題は当然同じで、今後事業をどう存続させるべきか議論することは重要だ。企業間同士で手を組むだけで終わるのではなく、共同営業による物件獲得や、共同輸出など、より一歩踏み込んだ事業活動にしなければならない。

――海外での事業展開はどうか。

 すでに東南アジア諸国で事業を展開している企業がある。現地にも競争相手が多い。日本と進出国との文化や宗教の違いがあるため、市場調査・分析をしっかり行い、綿密な事業計画を策定する必要がある。アジアに進出している日系電炉メーカーは、日本から原料を輸入して調達していると聞く。原料集荷網、販売網をしっかり構築しなければないのは確かだ。

――コンテナを活用した共同輸出は、新たな収益の柱となりうるか。

 中部地区の港湾の中には、コンテナの積載用の港湾設備が整っており、輸出ができる環境ではあるが、非常にコストが高い。現時点でベトナム以遠の地域にコンテナで少量輸出しても、購入先はコスト面で日本産スクラップを輸入するメリットがない。原料ユーザーである電炉メーカーが集積する中部地区は、日本で有数の原料消費地だ。スクラップの発生源が比較的多い地区でもある。事業環境が他地区と比べて格段に恵まれており、我々が国内ですべきことはたくさんある。

――人手不足が顕著だ。

 我々の業種は、かつての言葉でいうなら3Kの現場といっても過言ではない。しかし、従業員が働き易い環境づくりを経営者がすべき。外国人労働者を受け入れている会社もある。我々の魅力を発信すると共に、どんな仕事をしているのか丁寧な説明が必須。思うように採用活動が進まない中で、限られた人員で操業するために、従業員の多能工化を進める必要もありそうだ。

――魅力ある業界への取り組みは。

 中部支部の会員企業の若手社員向け交流組織「フューチャー・プロジェクト」を発足させ、今年3月に業界の歴史を振り返る勉強会として第1回の会合を終えた。ヤード業者のみならず、電炉メーカー、商社の皆さんにもご参加いただいたため、会社の垣根を越えたつながりができ。非常に有意義な会になった。さらに魅力ある会になるよう活動内容に磨きをかけたい。個社でできることは限られるが、支部単位であればできることはかなりあると手ごたえを得た。早ければ、この夏にも第2回会合の開催を計画している。

――最近は安全衛生面も重要視される。

 鉄スクラップはいつも同じものを扱うわけではない、細かいもの、大きいもの、重いもの、軽いものなど、常に作業環境が変わるため、事故が発生しやすくリスクが高い。しかし、作業手順を守れば、事故の発生リスクはぐっと減る。また、間もなくバーゼル法が改正される見通しで、雑品の取り扱いなどが厳格化される。各社で時代時代に合った操業や作業手順の作成が求められる。必要に応じて支部主催の安全衛生講習会を開催し、会員各社の安全衛生面を支援したい。安全は会社を守る最大の武器であることを忘れてはならない。

――10年後の業界への期待は。

 限りある資源を再資源化するリサイクルの根本は10年経っても、100年経っても変わらない。我々の会員の中には、1世紀以上操業している企業があるなど、いち早くリサイクルの先端で仕事をしてきた。しかし、我々の知名度は、高いとは言い切れない。リサイクルへの関心が高まっている追い風を利用しながら、循環型社会に貢献している業界であることを、もっともっとアピールし、知名度を高め、皆がより誇りを持てる業界になるよう尽力したい。