【中国地区鉄鋼業現状と展望】瀬戸内は鉄鋼一大生産地

製造業の比重高く地域経済下支え

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鉄鋼メーカー集積

 中国地方の山間部は日本製鉄業の源流である「たたら製鉄」で栄えた鉄の産地。中・近世に盛んに行われ、特に島根県奥出雲地方で生産された鉄は質量とも群を抜いていたという。江戸時代には日本刀や鉄、鋼製品の材料として全国に供給。明治以降、官営八幡製鉄に象徴される近代様式製鉄法の進展で衰退、第2次世界大戦後に終えんを迎えた。

 たたらで灯された製鉄の火は現代に受け継がれ、高炉はJFEスチール西日本製鉄所の福山・倉敷両地区、日新製鋼呉製鉄所、電炉メーカーは東京製鉄岡山工場、共英製鋼山口事業所、JFE条鋼倉敷製作所、ステンレスの新日鉄住金ステンレス光製造所、日新製鋼周南製鋼所、表面処理鋼板の東洋鋼鈑下松事業所、特殊鋼のビレットや鋳造品製造の宇部スチール、特殊鋼・鋳鋼品の広島メタル&マシナリーなど、瀬戸内沿岸部を中心に鉄鋼関連の一大集積地を形成している。

広島駅前再開発を象徴する新ランドマーク

 経済産業省の工業統計調査によると製造品出荷額では産業別で県全体の鉄鋼比率は広島県が15・8%、岡山県が13・5%、島根県が16・8%と高いレベルにある。

自動車好調も造船は不透明

 自動車メーカー・マツダは広島県安芸郡府中町に宇品工場を、山口県防府市に防府工場と国内2大生産拠点を置く。自動車産業のすそ野は広く、工場が立地する町には自動車城下町を形成し活気づいている。マツダは国内生産比率が高く、第6世代車の市場投入以降、快進撃が続いている。16年暦年のマツダの国内生産台数は97万7千台と、リーマン・ショック以降では最も台数が多かった前年を0・5%上回った。17年暦年の生産も100万台近いとの公算が高く、マツダとその協力部品メーカー向けに自動車用鋼板を扱うマツダスチールの加工量は前年に続き40万トン台が見込めるという。

 2014年1月にマツダのメキシコ工場が稼働。「国内優先を強める米国の出方や為替の変動が懸念材料にあるが、外的要因の不安要素を除けば、実需の部分はしっかり」(加工業者)しており、部品協力会社の稼働率は高まっている。

 瀬戸内沿岸と島しょ部は造船所の集積地であり、常石造船や尾道造船、ジャパンマリンユナイテッド呉事業所など中手、大手格が点在する広島県は、製品出荷額や付加価値額で全国トップ3入りを果たしている。引き続き新規船種建造など今年も線表の心配は少ないが、来年後半から19年にかけては不透明感が強くなるとの予測もある。中国運輸局まとめの16年度上半期の中国地方の新造船受注量は、前年同期の70分の1(5万9千総トン)に落ち込んだ。排ガスのNoX規制の国際基準適用を前にした駆け込み需要の反動減のため。各造船所は一定の手持ち工事量を確保するものの、造船市況の低迷が響いている一方、本年入りから不安定ながらも回復基調とも伝えられる。

国際バルク港整備に鉄需期待

 建築関連は、JR広島駅周辺再開発事業が大きく進行。駅南側に昨年、中四国・九州地域で最も高層の52階建て・高さ197・5メートルのビル「(BIGFRONTひろしま」、高さ167・9メートルの「エキシティ広島」(2月プレオープン予定)が完成、二つの巨大な構造物が新たなランドマークとなっている。カープ本拠地の球場移転や郊外型ショッピングセンターの増加から、新たな活性化が求められている市中心部の紙屋町・八丁堀界隈では民間投資意欲が回復。家電量販店の本店建て替えや商業ビルの高層化などの大型計画が相次いでいる。「耐震基準を満たしていないビル群が多く、建て替え需要が増えてくる」(流通筋)。

 土木関連は一服状態が続くが、国土交通省から国際バルク戦略港湾に指定されている徳山下松港の港湾整備事業が調査・設計段階に入っており「地区内では珍しく、万トン級の鋼材需要が期待される」(高炉メーカー)。(小田 琢哉)

どう見る地区鉄鋼業の潜在力/鉄鋼連盟中国地区運営委・金子堅一郎委員長(JFES中国支社長)

鉄鋼・製造業双方の集積地の利点生かそう

――当地区の鉄需ポテンシャルをどう見るか。

鉄鋼連盟中国地区運営委員会・金子堅一郎委員長

 「薄板最大需要家であるマツダが設備投資により国内生産能力を大きく増強するとは考えにくいが、今年度の国内生産台数は100万台以上と、フル生産が見込まれる。第7世代車に該当する2018年度以降の車種では更なる軽量化が求められ、鉄鋼メーカーサイドとしてはハイテン対応などを高め、新製品・新技術で貢献できるよう取り組む。厚板需要の代表格である造船メーカーのキャパシティ(生産能力)と新規受注が埋まっていない現状を比較すると、伸び代は高いため今後の受注復調に期待している」

 「中国地区は鉄鋼メーカー、顧客双方の生産拠点があり、一大鉄鋼生産地だけではなく、一大鉄鋼消費地としての側面も強い。メーカー、顧客の距離が近いことはサプライチェーンマネジメントの観点からも強み。人口比の鉄消費量も高く、今後もしっかりとした鉄鋼重要地点として生き残っていくのではないか」

――インフラ関連は大型プロジェクトが見当たらず物足りないが。

 「高速道路網整備が進んでおり、自然災害が少ない土地柄も手伝って土木関連需要は減少傾向。今年度の中国地方整備局予算は4582億円と微減。全国的には鋼矢板需要を盛り上げている補正予算も、当地区に関しては鉄需に結び付く案件が少なかった。先行き港湾、橋梁関連の大型物件の予定が少なく厳しい環境が続きそうだが、民需に期待しつつ低位安定といったところ」

 「JR広島駅前の再開発は二葉の里部分を含めて、ほぼ終結に向かっているが、岡山駅前再開発は駅前町一丁目がこれから表面化してこよう。鉄骨ファブはS・Hグレードの山積みが高く、病院、市役所関係と地元案件も多いため工場稼働率は高水準で、関係者の顔色は明るい」

鉄鋼流通の発信力強化へ/広島鉄鋼特約店組合・緑博康理事長(緑鋼材社長)

特約店の冠外し関連企業の会員拡大

――組合の現況は。

広島鉄鋼特約店組合・緑博康理事長

 「当組合は1978年に発足。加盟企業は30社近くあったが、現在は14社に減少している。組合員の中でもオーナー系は好・不景気の時代に規模の拡大、あるいは縮小と選んだ道が異なる先もある。昔は当社(緑鋼材)でもH形鋼を3千~4千トン在庫していた時期があり、これが本来の特約店の姿だろうと思う。しかし、量と価格では大手量販店にかなわず、関西大手の広島進出が組合員に与えた影響は少なくない」

 「IT技術の発達で納期短縮が果たされ、メーカー申し込みから2カ月前後には直接ユーザーに望む指定数量・寸法で入るようになり、現代では在庫を持つ利点が失われつつある。当社をはじめ、全方位在庫から特定ユーザー向け在庫への転換、単なる素材販売を脱却して付加価値をつける加工に活路を見出してきた組合員が目立つ」

――需要動向は。

 「やはり広島で特徴的なのは、マツダをはじめとした自動車産業や瀬戸内沿岸部の造船業と重厚長大産業の集積地であること。地方としては恵まれているが、何分ヒモ付き主体。かつては橋梁や造船の分野で店売りが活躍できたが、現代ではほとんどがヒモ付きへと切り替わってしまったため、多くの特約店としては、製造業関係の恩恵は建屋増築など限定的ではないか。東京五輪関連の案件に関しては図面も決まっていない段階で、広島で建築関連が本格的に忙しくなるのは来年になるのではと見ている」

――発信力強化に会員増は喫緊の課題。

 「理事長就任当初から、組合名称から〝特約店〟の言葉の縛りを外していきたいと申してきた。6月の総会で組合名を改称する予定だ。特約店以外の鉄鋼関連企業に対しても入会を働きかけることができるようになるし、新たに賛助会員枠を設けて、会員数を30社程度にまで増やしていきたい」