加熱式たばこ、吸っていいの? 禁煙巡り対応ばらつく

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JTが一部地域で販売している加熱式たばこ。吸った時に蒸気は出るが、火を使わないので煙は出ず、臭いも少ない

 火を使わず、煙や臭いが少ない「加熱式たばこ」を紙巻きたばこと同様に禁煙の対象とするかどうかで、飲食店や自治体の対応が分かれている。加熱式の位置付けを規定するはずだった受動喫煙防止強化の法案提出が今国会で見送られる方向となり、当面は個別の判断にゆだねられる。禁煙推進団体などが対策を求める一方、たばこメーカーは「健康上のリスクはあるが、有害な化学物質はほとんど検出されない」と紙巻きとの違いをアピールしている。

■悩む自治体や飲食店「国が基準を」

 加熱式たばこは、専用機器に入れたたばこ葉を蒸気などで加熱し、ニコチンを吸う。国内ではフィリップモリスが「アイコス」を業界に先駆けて全国展開し、これまでに300万台を販売した。追撃する日本たばこ産業(JT)も昨春、新製品「プルーム・テック」を一部地域に投入。来年6月までに京都府や滋賀県も含めた全国に広げる。英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)も7月、仙台市で販売中の「グロー」を大阪府などで発売予定だ。

 加熱式が急速に普及する中、禁煙・分煙を進める京滋の飲食店や自治体の対応は割れている。全店内を禁煙とする喫茶店チェーンの前田珈琲(本店・京都市中京区)は、1月にオープンした御池店で試験的にアイコスを喫煙できるようにした。前川佳久店長は「『アイコスが吸えるから』という来店客も増え始めた。吸える席は窓際の一部に『分煙』したこともあり、他の客の苦情もない」と話す。

 路上喫煙禁止条例を制定して違反者に過料千円を科す京都市は、禁止区域で加熱式の「歩きたばこ」を見つけても、注意はするが過料は科さない方針だ。市くらし安全推進課は「条例は、やけどの防止と健康への影響抑制が目的。加熱式にやけどの危険はなく、蒸気の受動喫煙が有害との確固たる根拠もない」と説明する。条例は禁止区域で「たばこを吸うこと」を禁じているが、加熱式は煙が目立たず、指導員が喫煙行為を確認するのが難しいという事情もある。

 一方、類似の条例を施行している横浜市は、加熱式も例外扱いせずに規制している。神奈川県も「無害と証明されたわけではない」(健康増進課)として、屋内を対象にした受動喫煙防止条例に、紙巻きと同様の規制対象とすることを明記した。

 対応がばらつく中、受動喫煙防止を強化する健康増進法改正案の提案は、自民党内の強い反発で秋の臨時国会へと先送りされる見通しになり、加熱式の扱いは不透明なままとなった。対応に悩む自治体や飲食店からは「国が基準を示してほしい」(滋賀県健康寿命対策室)と早期の法制定を求める声が上がっている。

■健康への影響、評価定まらず

 加熱式が周囲の人の健康に与える影響については、評価が定まっていない。

 各メーカーは、グリセリンなどの蒸気は出るが、燃焼による煙や副流煙は出ず、発がん性物質のタールも発生しないと強調。世界保健機関(WHO)が低減を求める化学物質の発生も9割以上抑えられるなど、さまざまなデータを挙げ、紙巻きとの違いを主張する。

 JTなどは閉鎖空間で加熱式を吸った際の実験結果も示し、「周囲の空気環境にほとんど影響を及ぼさない」と結論付ける。

 一方、日本禁煙学会の宮﨑恭一総務委員長は「測定方法が開示されず、メーカーのデータは信用できない。呼気にはタール以外のニコチンをはじめとするたばこ成分が含まれており、蒸気も安全を示すデータは無い」と異論を唱える。

 かつて「害が少ない」とされたフィルター付きたばこや低ニコチンたばこも健康被害をほとんど減らさなかったとして、「健康への影響が明らかになるには数十年が必要。受動喫煙対策では紙巻きと一切の区別をつけるべきではない」と訴えている。

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