平塚市職員が二足のわらじ フリースタイルフットボール日本一の久保宇史さん

 サッカーのリフティングにダンスの要素を取り入れた「フリースタイルフットボール」で、日本一の足技を持つ男性が平塚市役所にいる。同市障がい福祉課に勤める久保宇史(たかし)さん(27)。今後も二足のわらじを履きながら、「多くの人を笑顔にしたい」という思いでパフォーマンスと地域の福祉充実に力を注ぐ。

 日本の頂点に立ったのは、平塚市役所で働き始めたばかりの2015年4月。埼玉県越谷市で行われた「ジャパンフリースタイルフットボールチャンピオンシップ」に出場し、約100人が出場した予選を勝ち抜くと、決勝ラウンドで高校生から20代後半までの31人と競い合った。

 その決勝ラウンドでは、ブレークダンスのように体を回転させて逆立ちしながら、ボールをキャッチするオリジナルの技に成功。6度目の出場にして初の頂点に立った。

 「入庁した直後で時間的な制約もあった。そんな中で、よく勝てたなと思う」と笑顔を浮かべた。

 奈良県畝傍(うねび)町(現・橿原市)の出身。元ブラジル代表の有名選手の名を用いて「畝傍のロナウジーニョ」と評される、才能あふれるサッカー少年だった。中学校時代には同県の選抜チームのメンバーにも選ばれ、もともと足元のテクニックにはたけていたという。

 転機は同県立橿原高校2年の07年夏。指導者との行き違いからサッカー部をやめ、中学生の時に買ったフリースタイルフットボールの本を再び手に取った。ダンスミュージックに乗りながらボールを使い、繰り出される技の数々…。華麗な動きに魅せられ、1日8時間も練習に費やしてきた。

 大学進学とともに上京して「プロ宣言」。今も所属しているチーム「アルティステア」の一員となり、ショッピングモールでのイベントや結婚披露宴会場などで足技を披露し、多いときには月に20万円ほどを稼ぐまでになった。

 「(フリースタイルフットボールは)就職してもできる競技。『人を幸せにしたい』という思いを今度は官公庁の仕事で追求したかった」と言う。大学を卒業した2年後の14年に、既卒者の採用枠があった平塚市に出願。プロとしての道には見切りを付け、15年4月に入庁した。

 現在、市役所で義手や義足の助成金の窓口業務を担当。仕事に励みつつも、新しい足技を思い描いてメモする研究熱心な姿勢は変わらない。

 練習時間は週3、4時間程度に減ったが、5月下旬には藤沢市の辻堂海浜公園のイベントで鍛え上げた技で観客を魅了した。毎月、数回ボランティアとして各地に出向いているという。

 「この特技を生かし、平塚市をさらに盛り上げられたら」。27歳はそんな夢を思い描いている。◆フリースタイルフットボール 足や頭など使い、ボールを上げ続けるサッカーのリフティングを基本とし、その中にドリブルの技術を応用した技や、ダンスの要素を取り入れた技などを組み入れて楽しむ新しいスポーツ。パフォーマンスの幅は無限にある。大会は、1対1で対戦して3分間の中で30秒ずつ交互に披露する「バトル」などの形式がある。

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