――16年度を振り返って。
「皆さん五輪需要の波及効果を期待しているが、現状は期待通りに需要が出てこない。ここ数年同じ傾向が続いている。確かに期待ほど需要が出ていないが、我々にとってそれほどアゲインストの風が吹いているわけではなく、状況はさほど悪くないと思う。新鉄連アンケートを集計すると月によって変動するが大半は黒字。新潟地区の傾向は秋口までは良いが1~3月期は落ち込む。4月(新年度)に仕事が動かないのは毎年同じ傾向」
「重要な点は新潟県内の物件が少ないこと。実態は県外、特に関東圏の仕事で成り立っている。特に県内の土木案件は少ない。年に2、3件まとまったボリュームの物件はあるが、中小物件が少ない」
――17年度見通しは。
「17年度は昨年と同じか、それより良くなるだろう。五輪が近づいた分良くなる可能性が高い。物件は基本的に夏場、秋口以降に集中する見通し。相変わらず関東中心で地場には仕事が少ない。課題はやはり人手不足。鉄骨ファブリケーター、ゼネコンの施工能力の問題に帰結する。仕事が見えているのは確かだが、結局先送りになっている。再開発物件は20年度以降もあり、同じような状況が続くのではないか」
「鉄骨ファブリケーターの施工能力は全国で年間500万トンと言われているが、増強を行っても極端に加工能力をアップするケースは少ない。結局、期待値よりも建築物件が出てこないということになる」
――特約店の課題は。
「メーカーの値上げに対し我々の転嫁が追い付かない。需要が無ければマーケットが盛り上がらない」
――新鉄連加入のメリットは。
「顔が見え、互いに話ができる関係であることが大事。自然と商売上で自制心、抑止力が働く。会員同士が交流することで情報共有ができる。1社でできないことが新鉄連では可能。周りがどんな環境なのかは1社だけでは分からない。自社だけの問題なのかそれとも業界全体の問題なのか。品種ごとの部会(丸棒、形鋼、厚板、特殊鋼)報告でメーカーの動向、需要動向、今の局面がどういう状況か分かる」
「通常、同じ品種の担当者同士で話す機会は少ないが、融和を図り、会の運営はうまくいっている。出席率も高い。先代から続く歴史の中で、そういう場だと認識されている」
――各種講演会や若手の会が好評。
「前会長の栗山庄之助商店社長から引き継いだ若手交流会発足の経緯は、これまで総会、理事会の参加は代表者や幹部が多かったが、営業担当同士顔を合わせる機会を作ろうと始まった。互いの顔を知ることで横のつながりができる。そのような機会を増やすことで、鉄鋼業界、マーケットの大切さを学ぶ機会を多く作って行きたい。高炉メーカーの見学、危険体感など、海外視察も同様の考え。今年は若手に積極的に参加いただきたく新潟からアクセスが良い上海を見学先に選んだ」
――新潟県鉄骨工業組合と共同で講習会を開催した。
「新潟オリジナルの取り組みだ。新鉄連は建築関連の会員が多く、ミルシート発行や切板の識別色など、共通する課題、要望がある。両団体で交流を深めることは互いにメリットがある。昨年度はコラムの亜鉛めっき割れの講習を開催。今後も鉄骨ファブとの交流を重視していきたい」
――鉄鋼特約店を取り巻く環境は。
「少子高齢化が進めば必ず鉄需が減少。それにどう対応するか。鋼材特約店として何をすべきか突き詰めて考えると、結局はユーザーに必要とされる存在となり、必要とされる取り組みをしていく。どれだけのスピードで需要量が減るのかは分からない。目先すべきことはユーザーの信頼を獲得し、こういうことができると問題提起していきたい。例えば価格以外のメリットを一つひとつ考えて加えていく。他にない仕組み、加工や付帯サービスだ。人材育成も重要。会社の特色を出すということはすなわち、働いている方々が会社の方針に沿って動くということ。あくまで自社の話だが、人材育成に相当力を入れている。売り手市場と言われる中、特約店にとって〝現場〟、〝新卒〟が特に採用難。当社は社員ファーストで考える。働く場で社員を幸せにしたい」
――新潟活性化に向けて。
「空港、港湾があるもののアクセスを整備すべき。近い割に便が良くない。特に公共交通網の整備。まず人口を増やすことが大前提、そのためには人が住みやすい街に。便利にならなければ企業誘致につながらない。第一印象で良さが伝わる街になって欲しい」
――20年度以降の取り組み。
「短期でなく中期ビジョンは必要だ。お客様から信頼されるよう何かしなければと、一つひとつ突き詰めて考える。一例は加工設備の充実。人材育成は各社の年齢構成にもよるだろう。考え方としてできる限り新しい発想で物事を見て欲しいと思う。そのために研修を行う。若手や女性の登用も視野に。将来、現場、営業で女性の活用も可能性がある」
「新鉄連としていろんな場面で会員の皆さんから忌憚ない意見が出てくる。それには柔軟に対応していきたい。全鉄連の情報は、可能な限り新鉄連会員に提供している」