【燕三条地区産業と鉄鋼卸の役割】〈地域に貢献、充実感ある会社へ〉《三条商鉄組合・野崎正明組合長》

――120年以上の歴史ある三条商鉄組合の構成と加入のメリットについて。

 「会員拡大を目指し17年度から1社増加し50社。ほとんどのメンバーが三条商工会議所鉄鋼部会に参加。両団体の共催事業として両団体の予算で、鉄鋼部会以外の商工会議所メンバーにも声を掛けながら各事業を実施。我々にとって効率的でメリットがある。商鉄組合本体としては(1)時局講演会(2)技術講演会(3)経済講演会を企画。その他、商鉄組合には特殊鋼、一般鋼材・厚板、薄板、パイプ、原料の5委員会があり、それぞれが独自に年2回程事業を行う。昨年度は高炉メーカーから講師を招き、それぞれの委員会に特化した内容で講演いただいた。また、商鉄組合全体事業として数年に一度視察研修旅行を開催。国内外の鉄鋼関連企業を視察。今年度は9月にダイフクを見学予定」

――地域を支える役割も担う。

三条商鉄組合・野崎正明組合長

 「行政の要望で日本鍛冶学会の後援組織となり理事を派遣。組合だけの事業だけでなく、歴史ある団体として役割を果たす」

――昨年は野崎忠五郎商店として産地を巡るイベント「工場(こうば)の祭典」に参加。

 「実行委員会の要望を受け、鉄鋼卸では初参加だった。製造業の源泉である鉄鋼問屋の立場から請われた。2日間の参加で100人を超える見学者があり、三条市長も来訪。鍛冶学会の際も参加。鉄鋼卸も見学先としてニーズが出てきた。今年も工場の祭典に参加する」

――鉄鋼卸の役割とは。 

 「経済が縮小していく中で製造業など後継者難による廃業が少なくない。いかに多くのニーズを鉄鋼卸として応えていけるかが最大のファクター」

――鉄鋼における県央地域の特色は。

 「商鉄組合の皆さんは鋼板、一般鋼材など各品種や分野に特化し、それぞれ自社の強みを打ち出している。そうすることでユーザーの要望に応えられると思う」

――近年、県央地区のユーザーは海外への意識が高い。

 「一例で地場産業の作業工具の場合、三条市や商工会議所が海外に企業の組織の在り方、技術面の指導を行いつつ、人的交流から一歩一歩、海外戦略に移っている。国内はもとより海外に展開しなければ少子高齢化で使用量が減少する。頑張っていこうという企業は海外意識が高い。当社の子会社、信鋼商事も韓国で法人登録している。どの業界というわけではなく、経済そのものが〝世界は一つのマーケット〟という考え方が必要だ」

――海外との取引で注意点とは。

 「資金面と商品で違う。資金面の場合、最初はL/Cでリスク管理。数年の信頼を構築してからT/Tに移行。商品の場合、数パーセントの不具合であった場合、手直ししてマーケットに乗せる場合も。誰が出ても成功するわけではなく会社の規模、扱い商品で条件が変わる。一つひとつのカテゴリーでしっかり把握。人的リスク(政治、思想が違うこと)も」

――近年、素材高騰等、環境変化が激しい。

 「当地は全国でも有数の企業が集まるエリア。その中でこれだけ健闘しているのは為替、素材変動にさらされながらも、しっかりとした自社製品に対する考え、技術力を蓄えてきた証。原材料価格上昇を克服してきたのは製造業各社の技術力、製品の良さだと思う。また、リスクをしっかり見据えている企業も多い」

――県央地域は有効求人倍率が全国でも高水準(2倍前後)だ。

 「それだけ人手不足。女性の重用や外国人に目を向ける企業も。あるいはシニアの雇用延長が有効な手段。地方創生を訴えて久しいが人口減、労働力確保を切り口として一考して欲しい」

――三条商鉄組合青年部は東名阪と交流が盛んですね。

 「それぞれの地域の産業は地元鉄鋼卸が支えてきた自負があるだろう。しかし地域にこだわらず情報交流し、メーカーに対する考え方を伝えるという意味では(発信力の)スケールメリットが生かせる」

 「県央エリアは、他の製造業の街と比較し全業種で生産高の落ち込みがない。それだけものづくりで優秀な企業が集まる。絶えず前向きに商売、技術開発をやっているユーザーを相手にさせていただいている。我々もそれに応えるべき。リアルタイムな情報共有が一番大事」

――マッチングの機能が求められる。

 「製造業がコストダウンを模索した場合、素材から見た提案、あるいは外注することでメリットを享受する考え方もある。他の得意先に対し、我々が橋渡しをすることも可能だ」

 「人材育成は経営者が養成することも必要だが、基本的に日々のデイリーワークの中で自らが学ぶ。何をしなければならないか、自分の置かれた立場で何をすべきか。時に経営者が軌道修正。営業の個性がぶつかり合い、触発し、新しい発想が生まれることを期待。提案力を磨く組織づくりを模索している」

――これからの鉄鋼卸は。

 「地域に求められ、地域に貢献できる会社、仕事を生きがいとし、充実感のある会社を目指している。雇用を継続することが大きな役割。絶えず5、10年後を見据えていく」

© 株式会社鉄鋼新聞社