【神戸製鋼「3つの約束」「6つの誓い」策定】〈川崎博也会長兼社長に聞く〉グループ求心力、さらに向上 グループ理念の浸透活動「最初の5年で本気度伝える」

――2006年に策定した「企業理念」を「KOBELCOの3つの約束」と呼称を変え、グループ全体に改めて浸透させる活動を今年度から始めました。

 「創立100周年を機に06年、3つの企業理念を策定したが、その後の11年間での浸透や徹底度合いは不十分だった。グループ全体として、社員全員が誇り・自信・愛着・希望の4つを持って働けるようにしたい。社員が生き生きと働き、コンプライアンス問題なども起こらない、より良い企業集団を目指す。企業が成長する上では、ある程度の遠心力も必要だが、今はもう一度求心力を働かせていくべきと考えている」

――なぜ今なのですか?

 「昨年度は中国のショベル事業での多額の貸倒引当金計上なども響いて、赤字決算となった。それを乗り越えて、今年度は鉄鋼事業も建機事業(コベルコ建機)も黒字化する見通しだ。そうした損益復調に加え、アルミ事業では板・鋳鍛・押出の3分野で累計680億円の自動車軽量化対応の戦略投資を相次ぎ決めた。今年度と来年度が、次の10年を左右する重要な2年間となる」

 「電力事業は19年度から真岡、神戸の第二期プロジェクトが順次立ち上がる。『素材』『機械』『電力』の3本柱の事業確立に向けた取り組みが実行段階に入った今こそ、11年前に策定した企業理念に立ち返って社員のベクトルを一つにしたいとの思いがある」

――関連会社での損失計上や品質不祥事が断続的に発生したことに危機感が?

 「当社グループで働いている誇りや自信、働き先としての愛着、将来への希望といったことに対する感度や思いが希薄になっているとの思いに至った。もう一度、11年前の熱い思いに立ち帰ることが重要と考えた。次の100年を見据えたときに、そうした過去の教訓に学び、企業理念をCSR、コンプライアンス、安全、品質管理などを含めた全ての企業活動に落とし込みたい」

――「3つの約束」はグループ全体の企業理念になるわけですね。

 「企業理念の企業とは神戸製鋼という一企業を指すことになり、グループ全体を包含し切れない。従い、グループ総称であるKOBELCOを入れてグループ全体の理念として、より平たい言葉で、社員一人ひとりに身近に感じてほしいという思いで名付けた」

――併せて新たに「6つの誓い」を策定しました。

 「3つの約束を果たすために守るべき6つの誓いという意味合いだ。具体的なアクションであるとともに、社員一人ひとりの行動を指し示すものだ」

――川崎会長兼社長の本気度が伝わってきます。

 「ある企業に教えを乞うたところ、その企業における会長の仕事は、企業理念を国内外グループ企業に浸透させることだと聞いた。社長としてのメッセージの出し方、社長としての覚悟、その周知徹底をどのようにして図るかを考えた。単に文書を配るだけでなく、国内外の各拠点およびグループ会社を回って、トップの本気度を自ら社員に説明して回る。今年1年間で40回ぐらいになるだろう。今年度の私の最大の仕事の一つだ」

――来年度以降は?

 「年1回、年初にメッセージを発信する程度では本気度は伝わらない。少なくとも5年間は、会長や社長といった経営トップが、事務所や工場などグループ事業拠点を直接訪れて、生の言葉で訴えていく。そうしたトップ自らの活動の積み重ねで、もう一度企業理念に立ち返り、グループ内での周知徹底を図ることで次の100年につなげていきたい」(一柳 朋紀)

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