近年、歌手活動に精力的な大女優の約30年ぶりとなるLIVE盤。初回盤はその映像版や井上陽水との対談を収録したブックレット付きで見応えも読み応えもあるが、音楽中心の通常盤でも十分に酔える。
本編の14曲は、実際のLIVEの曲順とは異なり、ほぼ年代順での収録。それゆえ、発売当時の記憶と共に、不変と変化の対比が浮き彫りになる。具体的には、原曲の音の高さやバンド演奏部分、さらに透明感ある歌声を維持しつつ、慈愛に満ちた表現など歌詞の深みが増しているのだ。また、弦楽器隊や野外ゆえの音響が、荘厳な雰囲気を増幅しているのも良い。特に、『探偵物語』や『語りつぐ愛に』は、まるで現在の彼女に当て書きしたかのような名曲だと実感する。
追加トラックは、井上陽水の書き下ろし『めぐり逢い』のスタジオ録音。彼女のムーディーな声が、好きな人と夢の中だけで出逢えることにも希望を抱かせる。本作を聴けば、大人向けの質の高い様々な文化をもっと楽しみたくなるはず。
(ビクター・3000円+税)=臼井孝