「東芝グループの国内取引先・出資先」調査

 経営再建中の(株)東芝(TSR企業コード:350323097、東京都、東証1部)の国内取引先、出資先が、海外子会社での巨額損失発覚後の2年間で約1割減少していることがわかった。
 東芝グループと取引(仕入・販売)実績のある国内企業は、2015年3月期で延べ1万6,709社あったが、2年後の2017年3月期は同1万4,640社(2015年3月期比12.3%減)に減少している。
 また、東芝グループの出資企業も2015年3月期は339社であったが、2017年3月期は295社(同12.9%減)に減少している。
 東京商工リサーチは保有する企業データベースから、東芝グループの取引先や出資先、出資企業の取引先の推移を、2015年3月期から3期にわたって抽出し、分析した。


  • ※本調査は、東京商工リサーチが保有する国内最大級の企業データベース(298万社)を活用し、過去3年にわたって東芝グループの仕入、販売先、出資先などを分析した。

分析対象の東芝グループ

 2015年3月期、2016年3月期は、東芝の有価証券報告書の「関係会社の状況」に掲載されている国内企業を「東芝グループ」と定義した。
 本調査時点(2017年6月21日)で、東芝は2017年3月期の有価証券報告書を未公表のため、2017年3月期は2016年3月期の「東芝グループ」のうち、リリースなどでグループを外れた企業を除外した。これによると2017年3月期のグループ企業は24社(2015年3月期は30社)となっている。

「東芝グループ」企業

東芝グループの仕入先、販売先 大手企業との取引割合が減少

 東芝グループの2017年3月期の取引先は、仕入先が7,281社(前期比3.0%減)、販売先は7,359社(同15.8%減)だった。
 2015年3月期は、売上高100億円以上の企業の仕入先構成比は6.5%(7,962社のうち、525社)だったが、2017年3月期は6.4%(7,281社のうち、466社)へ下落している。
 販売先は、2015年3月期は売上高100億円以上の企業の構成比は5.9%(8,747社のうち、524社)だったが、2017年3月期は5.7%(7,359社のうち、421社)に落ち込んでいる。

  • ※仕入先、販売先の売上高は、東京商工リサーチが保有する当該企業の最新期データを採用した。
東芝グループの取引先 売上高別

東芝グループの出資企業数 2017年3月期は300社を割り込む

 東芝グループが1株以上出資する国内企業は、2015年3月期は339社だったが、2016年3月期は307社(前期比9.4%減)へ減少。直近の2017年3月期はさらに減少し、295社(同3.9%減)と300社を割り込んだ。

東芝グループの出資先数推移

東芝グループ出資企業の仕入先、販売先 販売先の減少に歯止めかからず

 東芝グループの出資企業の2017年3月期の取引先は、仕入先が8,556社(前期比10.8%減)、販売先は9,873社(同18.5%減)だった。
 2015年3月期は、仕入先で売上高100億円以上の企業の構成比は8.0%(1万584社のうち、849社)だったが、2017年3月期は7.9%(8,556社のうち、684社)へ下落している。
 一方、販売先は2015年3月期の売上高100億円以上の構成比は8.8%(1万2,212社のうち、1,083社)が、2017年3月期は9.0%(9,873社のうち、897社)と0.2ポイントアップした。これは販売先数が2年間で2,339社減少(19.1%減)と大幅に減少したことによる。

  • ※仕入先、販売先の売上高は、東京商工リサーチが保有する当該企業の最新期データを採用した。
東芝グループ出資企業の取引先 売上高別

 東芝グループの取引先、出資企業の総数を2015年3月期と2017年3月期で比較すると、それぞれ12.3%、12.9%減少している。
 東芝の半導体メモリ事業を担う東芝メモリ(株)(TSR企業コード:023477687、東京都)の売却交渉が大詰めを迎えている。東芝は6月21日開催の取締役会で、産業革新機構とベインキャピタル、日本政策投資銀行の連合体を優先交渉先に決定した。東芝メモリの売却が実現しグループから外れた場合、さらに取引先、出資企業数は減少する。世界を代表する電機メーカーの一翼を担った東芝グループだが、産業界への影響力の低下は避けられない事態を迎えている。
 東芝グループの仕入先のうち、売上高100億円以上の比率は2015年3月期の6.5%が、2017年3月期は6.4%へ下落。販売先でも5.9%から5.7%へ落ち込んでいる。
 地域経済への影響も看過できない。東芝は3月14日に公表した「今後の東芝について」で、海外原子力事業、半導体メモリ事業を除いた事業領域を「新生東芝」と名付け、社会インフラ事業を中心に投資し、成長力を確保する方針を示した。東芝から切り離される事業で、譲受先が大胆なリストラや取引先を選別した場合、地域の雇用や取引先への悪影響も危惧される。
 東芝は日本を代表する企業だ。グループを含む取引先は全国に点在し、地域雇用の核になっている。東芝メモリ売却作業も最終局面に入っているが、地域経済のコアな企業だけに、将来を見据えた判断も必要だろう。

(都道府県別の取引先数推移は、会員制サイト「tsr-van2」で公開)

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