「人目気にせず汗」暗闇フィットネスが人気 

 ◆暗いと「集中力高まる」とクラブ続々オープン 暗いスタジオで人目を気にせず集中でき、楽しく運動できる「暗闇フィットネス」が人気だ。大音量の音楽や幻想的な映像を流すなど、非日常の空間演出も特徴で、県内でもフィットネスクラブが相次いでオープン。体形や汗だくの顔を見られたくないと、スポーツクラブでの運動を尻込みしていた女性からの支持を集めている。

 JR川崎駅(川崎市川崎区)近くの「FEELCYCLE(フィールサイクル)」。ミラーボールが輝く暗がりの中、最新の洋楽とインストラクターの掛け声に合わせ、フィットネスバイクを45分間こぎ続ける。

 ダンスフロアのようなスタジオ内は、隣の人の表情が分からない明るさ。1年前から週1〜2回通う30代の女性会社員は、「暗くて恥じらいがなくなり、集中できる。大量の汗が出て気持ちいい」と満面の笑みを浮かべる。

 運営会社の「ベンチャーバンク」(東京都港区)は2012年、東京・銀座に1号店を出し、現在は関東、関西、北海道、東北、九州に27店舗を展開。県内では川崎、横須賀の2店舗に加え、6月に上大岡店(横浜市港南区)をオープンさせた。

 会員の7割は女性で20〜40代が中心。会費は月額1万2900円からと、大手スポーツクラブに比べてやや割高だが、平日夜や週末のレッスンはほぼ満員。広報担当者は「暗闇だが人の気配は感じるので、集団レッスンならではの一体感も得られる」と魅力を話す。

 横浜市港北区の「PRiME fitness&spa(プライム フィットネスアンドスパ)」では、明かりを消したスタジオ内で、壁に投影される映像に合わせ体を動かすプログラムを導入。映像はデジタルアート集団「チームラボ」が監修し、ダンスやヨガなど4種類ある。

 体幹トレーニングに参加した30代の女性会社員は「幻想的な映像に引き込まれ、きつい動きもできる」と満足そう。同店のインストラクターは「人目を気にしないことで集中力が高まり、上達が早い」と手応えを話す。

 なぜ暗いと集中力が高まるのだろうか。神奈川大学人間科学部の吉沢達也教授(視覚科学)によると、薄暗い空間では網膜の視細胞がうまく機能せず、物が鮮明に見えなくなる。

 吉沢教授は「視覚の情報が少なくなると他の感覚が優位になり集中しやすくなる。さらに、室内の熱気を強く感じたり音楽がよく聞こえたりして普段感じない感覚が呼び起こされ、心地よい高揚感が生まれるようだ」と指摘した。

 人目を気にせず運動不足を解消できる、暗闇フィットネス。健康志向の女性を中心にさらに注目を集めそうだ。

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