個別化医療の保険適用を検討 「ゲノム医療」加速へ神奈川県

 健康寿命の延伸と医療の最適化を目指し、県が遺伝子診断に基づく個別化医療の保険適用化に向けた検討を進めていることが5日、明らかになった。コニカミノルタ(東京都)が買収予定で、遺伝子のがん診断を手掛ける米アンプリー・ジェネティクス社による県内の事業展開を想定。国家戦略特区の一環で政府が創設した「サンドボックス」制度を活用し、全国に先駆けた規制改革の道を探る。

 県が「最先端遺伝子検査技術の社会システム化」として想定しているのは、がん治療における個別化医療の保険適用化と、健康保険組合が実施する保健事業での活用−など。

 遺伝子検査に基づく個別化医療は、がんの原因遺伝子を特定して発症予防のために部位を切除する措置や、個々のがん細胞に対する最適な抗がん剤の選択が可能になるといった効果が期待できる。国内では一般的に認められておらず、米国でも約40万〜50万円とされる治療を健康保険の適用として普及させ、「ゲノム医療」を加速させる狙いがある。

 また、健康保険事業の運営主体である保険者が実施する健康増進事業などの枠組みに遺伝子検査を組み込むことで、将来起こりやすい病気を発症前に診断・予測する先制医療の実現を図る。これらの事業の普及に伴うコストダウンが実現した際は、高額時の利用者に差額分を還付する仕組みも検討する。

 アンプリー社は、遺伝子関連の技術力に高評価を得ている企業。米国での実績を踏まえて県内展開するとみられ、検査のリスクも低いという。サンドボックスは企業などが近未来技術の実験を自由に行えるよう政府が検討を進めており、年内にも具体的運用が明らかになる見通し。5日には、黒岩祐治知事とコニカミノルタ社の山名昌衛社長らが首相官邸で菅義偉官房長官と面談し、「国は全面的に協力する」との回答を得た。

 ◆サンドボックス制度 自動運転など革新的な技術開発を促進するため、事前規制や手続きを一時的に停止したり、最低限に抑えたりして自由度の高い環境をつくり実証実験などを迅速に行わせる仕組み。サンドボックスは英語の「砂場」を意味する。子どもが砂場で遊ぶように、企業に自由な発想で新規事業に挑戦してもらうのが狙い。

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