【「中小事業者のための省エネ・省CО2セミナー」】〈三菱伸銅〉三宝製作所が省エネ活動紹介、16年200案件・880万円節減

 三菱伸銅三宝製作所(大阪府堺市)の福戸山清春技術部保全課長はこのほど、大阪商工会議所会議室で開催された「中小事業者のための省エネ・省CО2セミナー」において、「全員参加の省エネ活動」をテーマに自社の取り組みを発表した。

 同セミナーは主催が大阪スマートエネルギーセンター(大阪府・大阪市)、大阪府立環境農林水産総合研究所、大阪商工会議所。工場や事業所の担当者が具体的な省エネ事例や省エネの最新情報などについて紹介、120人が参加した。

バーナーと鋳型の距離を離しシリコンパッキンの損傷を防止、改善前(左)と改善後

 福戸山課長は最初に三菱伸銅の会社概要を説明。三菱伸銅は条・板・棒の3形状を製造する総合伸銅メーカーで、特に条・板は高いシェアを持ち国内トップの総生産量を誇る。強みは東西2拠点(若松・三宝)から製品を安定供給していること。親会社・三菱マテリアル直島製錬所で製造した電気銅は三菱マテリアル堺工場で鋳造された型銅となり、三宝製作所ではその型銅を条・板・棒へと加工する。原料供給から製造、リサイクルまでグループ内で完結している。

 「三宝製作所の従業員(472人)は一丸で省エネに取り組んでいる。省エネ活動の背景は、原発停止による電力単価アップが深刻な経費増となったためだ。現場を巻き込みながら、設備投資をすることなく即効性のある案件を選定した」(福戸山課長)。

 省エネルギー委員会が活動の中心で、メンバーは社内7部3室10課から選ばれた16人。省エネ活動の内容は大きく「連休時の省エネパトロール」「省エネキャンペーン」「省エネ改善」三つに分けられる。

 「連休時の省エネパトロール」は15年5月から実施している。年3回の大型連休期間中の設備停止時にコンプレッサーのエアー漏れと待機電力に着目した取り組みだ。15年5月はエアー漏れ指摘件数が21件、待機電力指摘件数が16件だった。16年5月はエアー漏れ、待機電力ともに指摘件数が改善された。設備が停止し静かになった時に耳でエアー漏れの個所を探るため、今のところ超音波リークテスターは不要だという。

 「省エネキャンペーン」は、4カ年にわたり実施した。11年は震災後の国からの節電要請を受け実施した節電内容を報告書にまとめた。13年はエアー削減コンテストを若松製作所と共同開催。15年は待機電力削減コンテストを、16年には省エネコンテストをそれぞれ実施した。

 「例えばエアー漏れ削減では、コンプレッサーで作る圧縮空気(エアー)のコストは見逃されがちだった。コンプレッサーの電力量は三宝の所内全電力量の約8%のエネルギー消費に相当。コンプレッサー電力比率を三宝で0・5%、若松で0・3%削減できれば年間3百万円の電気料金が削減できる。エアー漏れ発見のアドバイスなども行い、多数の応募で大きな成果を得た」(同)。

 15年の待機電力削減コンテストでは、その他の省エネ案件を含む全21テーマで月間340万円を削減した。

 主な事例では、鋳造前の溶湯口加熱においてバーナーと鋳型の距離を14センチから33センチへと離すことでシリコンパッキンの損傷を防止し水冷装置を不要にしたこと、1号連続焼鈍洗浄ラインの生産状況に応じ運転停止にメリハリを付けたことがある。

 16年は「夏の省エネ大作戦」と銘打ち200案件を実施し、880万円の効果を上げた。

 「省エネ改善」は熱間圧延工程での熱間圧延機の冷却水ポンプ3台をインバーター化した事例。アイドリング時のポンプの回転数を下げることで、電力を削減した。

 「三宝製作所では年間100万GJのエネルギーを使用する。その内、3%が省エネされている。今後もエネルギーを可視化することで省エネ案件を発掘し、全員参加型での活動を継続していく。大型省エネ投資も実行していきたい。省エネ活動は息の長い取り組みです」(同)という。(白木 毅俊)

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