再稼動前の玄海原発を公開

 九州電力は7日、再稼働が近づく玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の原子炉格納容器や使用済み燃料の保管場所などを報道陣に公開した。原子力規制委の新規制基準を踏まえ取り組んだ安全対策工事について説明。安全性を強調した。

 同社によると、工事は2013年1月から今年4月にかけて実施。担当者が案内し▽原子炉容器から水素が漏れた場合、水素を除去する装置▽使用済み燃料を冷やす水を外部から補給する配管▽竜巻対策のためポンプ車などを入れる保管庫-などを見せた。

 玄海原発を巡っては3、4号機が今年1月に新規制基準の適合性審査に合格し、佐賀県知事や玄海町長は再稼働に同意した。九電は今後、工事計画認可や使用前検査などを経て本年度内の再稼働を目指す方針を示している。

 県内では、重大事故の際に避難が必要となる半径30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)にある松浦、平戸、壱岐3市長は再稼働反対を表明。松浦、平戸両市に加え、UPZに入る佐世保市と佐賀県伊万里市の4市は、事故時の避難計画の実効性を高めるため、計画策定・実施に伴う財政措置を国に要望する協議会の設立に向け合意している。

 玄界灘に面した広大な敷地内をバスで進むと、上部がドーム状の特徴的な建造物が目に留まった。核燃料を収める炉をすっぽりと覆う原子炉格納容器。高さ約49メートルの巨大な外観は、損壊する姿を連想させなかったが、東京電力福島第1原発事故の印象は拭えず、近づくにつれ重苦しい緊張感が高まった。

 九州電力が7日に公開した玄海原発3号機の原子炉格納容器内に、足を踏み入れた。格納容器がある一帯は周辺防護区域として立ち入りが厳しく制限されていた。

 入域までのチェックは大きく4カ所。金属探知機を通り、手に火薬物の付着がないかを確認した。ズボン以外の衣類を専用の服に着替えて線量計を装着。放射性物質の持ち込みがないか専用の機器でチェックを受けた。厳重な管理に、私が思わず不安な表情を浮かべると、案内する所員が口にした。

 「危ない所にご案内するわけではないので」  原子炉の周辺建屋から格納容器に入るためには二重の扉を抜ける必要があった。容器内は空調を稼働させても31度の暑さ。扉を通過すると熱気が体にまとわり付いた。

 炉内が見渡せる加圧器上部からのぞくと、ほぼ左右対称な構造の真ん中に原子炉が確認できた。

 「停止中のため核燃料は入っていません」  その言葉を聞いても、不気味に静まる原子炉にじんわりとした恐れを感じた。容器内にいたのは約25分間。それでも見学後、身に着けた線量計がゼロを示したとき、安堵(あんど)感が広がった。

 発電所内は重大事故を発生させないため、新規制基準に基づいた対策が幾重にも講じられていた。安全対策は強化されていることは分かった。だが一方で、それほどまでに制御が難しい施設であることを表している、とも感じた。

 万が一の事故への不安を拭い切れないまま、周辺防護区域から出た。その際にゲート内の壁に張られた横断幕の文字が目についた。

 「『絶対にない』は絶対にない」

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