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がん診断法開発、臨床研究開始 「線虫」利用、那覇の医院と東京のベンチャー

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 線虫の嗅覚を使ったがん診断法の開発に取り組むベンチャー企業「HIROTSUバイオサイエンス」(東京、広津崇亮社長)の臨床研究に、那覇西クリニック(沖縄県那覇市、玉城信光理事長)が参加している。那覇西クリニックが患者の尿検体を提供し、線虫がん検診の判断の確度などについて助言する。沖縄はがん死亡率が高い水準にあり、同院乳腺外科の玉城研太朗医師は「実用化に向け医学的根拠を集める段階の技術だが、安価な検診はがんの早期発見、早期治療につながる」と語る。

 ヒロツバイオサイエンスは、体長1ミリの線虫に人間の尿の臭いを嗅がせてがんの有無を判定するがん診断法「N―NOSE(エヌ・ノーズ)」を、2019年中に実用化する目標で研究を進めている。線虫は健康な人の尿を嫌うが、がん患者の尿の臭いには誘引行動を示す特性があることを利用する。

 鹿児島市の鹿児島共済会南風病院と共同で実施した臨床研究では、消化器がんと診断された患者の尿サンプルに対して9割を超える反応を示したという。日立製作所とは自動解析装置の開発を進めている。

 同社は4月にうるま市の沖縄バイオ産業振興センター内に研究室を設置。治験や臨床研究を支援するウェルビー(浦添市)と業務協力契約を結び、乳がん診療で県内随一の実績がある那覇西クリニックとの共同研究につながった。

 線虫によるがん検診が確立すれば、痛みがなく安価にがんの有無が判断できる。ヒロツバイオサイエンス沖縄事業部の佐々木学本部長は「肺や大腸、乳がんなどがんの種類によって線虫の反応度合いが変わってくることが分かってきた。尿提供者の症状を知る医師の助言を踏まえ、判定の手法を調整していく」と臨床研究の目的を説明する。

 09年に沖縄は乳がん死亡率で全国ワースト2位となり、その後も高い状況が続いている。大腸がんと乳がんの死亡率が増え、人口10万人当たりのがん死亡率を示すがん年齢調整死亡率(75歳未満)で沖縄は06年から14年の8年間の改善率が5%にとどまり、全国最下位だった。

 玉城医師は「早期の発見率を上げれば、がんは治せる。受診率を上げる一助として、低い個人負担でがん検診を受けられるようにすることが技術的にも政策的にも求められる」と強調する。線虫がん検診の臨床試験への協力について「将来的に安価な検診を実現するかもしれない。データが早く集まれば、実用化が早まることも期待できる」と述べた。

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