県内初 図書館協会認定司書

 「常連の利用者から『この本は探しきらんやろ~』と言われると、がぜん燃えますね」-。佐世保市宮地町の市立図書館司書、田中裕子さん(41)はこの春、日本図書館協会(本部・東京)の「認定司書」に県内で初めてなった。「ただの本好きではなく、人の疑問に徹底的に寄り添えるのが司書」。こんな信念を胸に市民の探求心と向き合う。

 図書館経営の中核を担う人材を育てようと2010年に制度化。▽司書資格を持ち公立図書館などで10年以上勤務している▽研修の受講や社会的活動など研さんを重ねている▽論文など著作がある-など申請基準は高く、全国で田中さんを含め135人しかいない。

 田中さんは1996年に大学を卒業後、長崎短大図書館(佐世保市椎木町)に2年、98年から市立図書館に勤務。次第に「全国に通用するのか」と悩むようになった。その答えを求めるため県内外の研修に参加。「九州地区図書館非正規職員交流会」を有志と立ち上げ勉強会を開いたり、学校司書や市民向けに講座を開いたりするなど、社会活動にも積極的に取り組んだ。昨年受講した研修がきっかけで挑戦を決意。「遠い存在だと思っていた。周りの理解と後押しのおかげ」と喜びを語る。 ■  市立図書館では一般室担当で、得意分野は資料や情報を探す手伝いをする「レファレンス」や資料保存(修理)。知識を押しつけるのではなく、会話を重ねながら、利用者が知りたいことをいかに引き出すかを大切にしている。また、個々の司書が持つ知識をどうつなげるのか考え、利用者とのやりとりをデータベース化。誰が対応してもより多くの選択肢を提供できるようにした。「自分がいなくなっても図書館はずっと存在する。司書という仕事を、次の世代につなげていくのが私の使命」と話す。

 前川直也館長は「心から図書館を愛し、少しでもよくなるよう提案をしてくれ頼もしい。経験や知識をどんどん市民に還元してほしい」と期待を寄せる。「小さいころ読んだ題名も分からない絵本でも見つかりますよ。メロディーを歌ってもらえば曲名を検索できるシステムもあるんです」と田中さん。これからも、人々を知る喜びへと導く。

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