『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』 深い心の闇から作り出される、刹那的な美しさ

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(C)British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd. / 2016

 バレエ界で「反逆児」「異端児」と呼ばれているセルゲイ・ポルーニンというダンサーを、映画『血の絆:サリー・マン』でアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門にノミネートされたスティーヴン・カンター監督が追ったドキュメンタリー映画です。

 ウクライナの貧しい家庭に生まれ13歳で親元を離れて、たった一人でイギリスで生活していたセルゲイ。計り知れないプレッシャーと戦いながら、バレエに打ち込んだ彼がどのような努力をしてバレエの才能を伸ばし、同時に彼の心がどのように壊れていったのか。貴重なプライベート映像と、包み隠さずに当時の思いを話すセルゲイや家族、友人たちのインタビューから、天才が常に抱えていた苦悩と孤独が浮き彫りになってくるのです。

 当時、セルゲイが22歳でロイヤル・バレエ団を退団した時、メディアはドラッグやアルコール、そしてタトゥーなどの問題行動を次々に上げてセルゲイを吊るし上げて叩きました。まだ20代の繊細な若者はバッシングでさらに傷つき、自滅していきます。そんな彼の姿を見ながら、私は一人の人間を袋叩きする最近の報道を思い出しました。問題行動の裏には、私たちが想像することもできないような苦しみがあったことをこの映画はきちんと映し出します。ラストシーン近くに挿入される、写真家デヴィッド・ラシャペルがホージアの「Take Me to Church」を使って撮影したセルゲイのダンスは必見。彼の心の深い闇が生み出す、無垢で刹那的な美しさを是非感じて欲しいです。★★★★★(森田真帆)

監督:スティーヴン・カンター

出演:セルゲイ・ポルーニン

7月15日から全国順次公開

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