「北海道発 チア名鑑」特例枠で合格した27歳は“チアガール界の松岡修造”

活動範囲が広くファンからも愛されている日本ハム球団公式チアリーダー「ファイターズガール」。連載第3回は、ダンスアカデミーのインストラクターも務める鈴木栞(すずき・しおり)さん(27)を紹介する。

ダンスアカデミーのインストラクターも務める鈴木栞さん【写真:石川加奈子】

人生を変えた電話、DeNAから日本ハムへ大型移籍した鈴木栞さん

 活動範囲が広くファンからも愛されている日本ハム球団公式チアリーダー「ファイターズガール」。連載第3回は、ダンスアカデミーのインストラクターも務める鈴木栞(すずき・しおり)さん(27)を紹介する。

 一昨年オフのDeNAから日本ハムへの移籍は、関係者を仰天させた。横浜ベイスターズ時代の11年から5年間「diana」に在籍し、チアスクールの立ち上げなどにも関わった“中心選手”の大型移籍だったからだ。

「5年でひと区切り。現役を卒業してインストラクター1本で行くか、現役続行か。悩んでいた時に“あなたにピッタリのチームがあるよ”と連絡をもらったんです」と鈴木さんは振り返る。ひと足先にDeNAから日本ハムに移籍していた松田佳月さん(現ファイターズダンスアカデミーインストラクター)からの電話が人生を変えた。

 新潟出身でそれまで北海道には縁もゆかりもなかったが、新しい挑戦を始めるには最適の土地。「以前からファイターズガールの良さを聞いていましたし、パ・リーグの面白さを外から見て興味があったので。話を聞いて即決しました」と飛び込む決意をした。日程が合わずオーディションには参加できなかったにも関わらず、後日個別面談が行われ、特例枠で合格したという逸話が残っている。

「松岡修造さんみたいになりたいんです」

 それでも移籍当初は不安を抱えていたという。「当時はチアの移籍はあまりなかったですから。今まで応援してくださった方もそうですし、北海道の方が私を受け入れてくれるだろうかという気持ちはありました。でも、最初に球団の方やメンバーから“北海道に来てくれてありがとう”と言われて、衝撃を受けました。とてもうれしかったですね。古巣の皆さんも“らしく頑張って”と送り出してくれました」。

 球団ダンスアカデミーのインストラクターとの“二刀流”をこなしなしながら新風を吹き込んでいる。「私、松岡修造さんみたいになりたいんです」と公言する熱血タイプ。持ち前の明るさと元気で積極的に仲間に声をかけ、ファイターズガールに一体感を生み出している。プレイベートでも、北海道の地名を覚えがてら、メンバーと一緒に道の駅スタンプラリーのドライブに出かけるなど、すっかり溶け込んだ。

 広い北海道での活動は、球場内にとどまらない。ラジオやテレビへの出演のほか、道内各地でのイベントにも参加する。「どこに行っても、ファイターズガールの存在が認識されているので驚きました。皆さんおっしゃるのが“ファイターズが北海道に来てくれてありがとう”という言葉。関東では感じられなかった地元愛を感じて、プロ野球のすごさをあらためて実感しました」と充実感いっぱいの表情。「北海道にずっといることができたらいいなと思っています。私を受け入れてくれた北海道に恩返しをしたいんです」と続けた。

チアガールは「天職です」

 現在チームは昨季の日本一から一転、5位と低迷。球場に足を運んだファンから「なんで負けても元気なの?」と言われることもあるという。「負けている時こそ元気じゃないといけないと思っています。野球で勝てなかったから無駄になるのかというとそうではないはずです。笑顔を引き出し、楽しい思い出をつくるのは私たちにしかできない大事な仕事です」とプロ意識は人一倍だ。

 週4回はインストラクターとして3歳から60代の生徒を指導する。“二刀流”は決して楽ではないが、子供たちを育てたいという強い思いがベースにある。

「1日でも長くこのプロ野球を盛り上げたいですし、次世代の子供たちにつなげたい。現役にこだわったのは、自分の姿を見せることが一番子供たちにわかりやすく伝えられる手段だと思ったからです。ファイターズガールをきっかけに野球やダンスを好きになってもらいたいですし、ファイターズガールを目指す子供たちが増えてほしいです」

 プロ野球、ダンス、北海道、仲間、夢……。“チアガール界の松岡修造”が語る言葉はどれも熱かった。「天職です」と胸を張って言い切れる仕事に就いて、新天地で輝きを放っている。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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