「王朝の香り」に危機 防虫効果「ヤマクニブー」品薄

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 沖縄で古くから衣服の虫よけとして使われている香り草「ヤマクニブー」(和名・モロコシソウ)。例年この時期になると那覇市の平和通り商店街の店頭に並べられ、独特の香りを漂わせているが、今年は異例の不作と農家の高齢化に伴う生産者の不在が重なり、ほとんど市場に出回っていない。昔ながらの沖縄の文化、生活の知恵がこのままでは消滅してしまうのではないかと、生産農家だけでなく、長年の愛用者からも不安の声が聞こえてくる。

 ヤマクニブーは琉球王朝時代から女官たちに愛用され、戦後も各家庭で防虫剤や芳香剤として親しまれてきた。本部町伊豆味地区のみで生産・加工され、毎年約2千束が県内で販売。だが、5年前までは7軒あった生産農家も高齢などを理由に次々と引退し、今年は仲本兼市さん(79)一家3人が唯一の生産者となり、出荷総数は3分の1以下の600束にまで低迷した。

 仲本さんによるとヤマクニブーは天候に大きく左右されるため栽培が難しく、安定的な栽培技術の確立が急務だと言う。今年は雨が少なく、例年より収穫が減った。また生産農家は皆70、80代と高齢なため、後継者探しも喫緊の課題だ。

 平和通り商店街で60年以上のれんを掲げ、毎年500束近くを販売しているてるや食品も今年は140束しか確保できず、約30人が予約待ちだ。2年前まで1束350円だった商品も、品薄のため昨年は400円、今年は500円と段階的に値を引き上げた。店主の高良善貢さん(51)は「毎年楽しみに買いに来るお客さんに売り切れを告げるのは本当につらい」と嘆く。

 長年愛用し、毎年県外の友人にも送っている大城光子さん(72)は予約待ちの人数を知り、今年は購入を断念した。「自然由来で環境にも優しいヤマクニブーだが、値上がりが続けば、県民は買えなくなってしまう」と寂しそうに話していた。(当銘千絵)

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