ライチョウ繁殖道半ば ひな誕生1カ月

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 国の特別天然記念物で絶滅危惧種「ニホンライチョウ」の人工繁殖事業は、初めてのひなが富山市ファミリーパークで誕生してから17日で1カ月。1羽目が順調に育つ一方、卵の成長が止まったり、ふ化してもひなが死んだりしてしまうケースが相次ぐ。目標とする繁殖技術の確立、野生復帰への道は半ばだ。

 人工繁殖事業では乗鞍岳(長野、岐阜両県)で野生の卵を採集、同パークと上野動物園(東京都)、大町山岳博物館(長野県大町市)で成鳥まで育てた。今年初めて3施設で雌雄がそろい、人工繁殖に取り組んだ。

 これまで3組のつがいが計58個の卵を産み、同パークで6月17日深夜、初めて2羽がふ化。3施設のほか、近親交配の回避を目的に飼育施設に追加指定され、卵が移送されたいしかわ動物園(石川県能美市)と那須どうぶつ王国(栃木県那須町)でもひながふ化した。しかし富山で生まれた2羽のうち1羽がふ化4日後に死んだほか数日のうちに死ぬケースが相次いでいる。7月16日現在、生きているのは14羽だけ。無精卵や有精卵でも途中で成長が止まる「中止卵」、殻を中からつつき始めた後に死んでしまうことも多い。

 死んだひなの病理検査を行う京都府立大学の牛田一成教授は「採集した野生の卵では、無精卵や中止卵はほとんどなかった」とした上で「野生下の個体は特殊な腸内細菌を持つが、人工飼育の親鳥にはない。また親鳥の飼育下特有の栄養状態も影響を与えている可能性がある」と分析する。

 また環境省が事業計画の土台としている野生の生息数データは2000年代のものが最新。北アルプスに比べ、南アルプスでは個体数が激減しているとみられるが、原因は特定されていない。繁殖技術の研究に比べると、野生環境の調査は遅れがちだ。

 同パークの村井仁志動物課長は「過去に野生個体が激減した要因を特定し、早期に対策を講じることで初めて、人工繁殖で増やした個体を野生に返せるようになる」と指摘、繁殖の試みと並行した調査に期待を寄せる。

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