【幕末、戊辰、明治】ふるさとを読み直す(7月17日)

 来年は戊辰戦争で県内が戦場となってから150周年に当たる。慰霊や顕彰、歴史的な意義の再検証などを目的に実行委員会をつくったり、講演会を催したりする動きが各地で活発になってきた。主催者の予想を超える来場者が集まった企画もあり、ふるさとの歩みに寄せられる関心の高さを物語る。

 全国的に知られる戦いの場所や人物だけでなく、身近な地域での戦闘や、庶民の混乱と被害を伝える逸話が各地で語り継がれる。幕末から明治にかけての激動期の出来事や社会の変化が、本県や日本の今にどう結び付くのかを改めて探り、多くの人々に的確に知らせる取り組みが大切だ。

 戊辰は60年で一回りする年などを表す「十干十二支[じっかんじゅうにし]」の一つで「ぼしん」または「つちのえ たつ」と読む。戦争開始の年は、元号が慶応から明治に改められた年でもある。当時は旧暦で、1カ月前後の違いがある西暦の1868年に対応するとされる。

 大玉村のあだたらふるさとホールは企画展「ふるさとの慶応4年」を8月20日まで開催中で、6月下旬に地元の研究者の講演会を開いた。白河市の実行委員会は「カフェで歴史を語る夜」と題した講話会を始めた。

 県歴史資料館(福島市)が定期的にまとめる冊子「福島県史料情報」には「村人たちの戊辰戦争」と題した連載がある。庶民が軍夫として駆り出されたり、食料や生活物資が徴発の対象とされたりした様子を古文書でたどる。

 戦況や戦闘の模様を振り返るとともに、幕藩体制の揺らぎから近代国家の成立にかけての流れの中で、地域史や社会史の視点でも戊辰戦争を考える試みが大切だ。

 明治新政府の指導者である大久保利通は、日本遺産に認定された「未来を拓いた『一本の水路』」の安積開拓、安積疏水開削事業に関わっている。大久保は幕末の倒幕運動を進めた薩摩藩士だった。人物や出来事に対する評価は時代や地域によって異なったり、複数の説があったりする。研究の成果や新しい史料によって見直される場合もある。学問としての歴史と、ドラマなどで描かれる歴史には、手法や役割に違いがあることを踏まえる必要がある。

 郷土史に携わる団体や個人は古文書や遺物、伝承などを手掛かりに史実を解き明かしながら、先人の喜怒哀楽や誇りを確かめ続ける。地域で活動する研究者と、県外や学界の研究者をつなぐ交流や発表の場を設け、幕末、戊辰、明治の新たな全体像を本県から示すべきだ。(安田信二)

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