トピック医療・健康

社説[外国人急患への対応]受け入れ態勢の整備を

 沖縄を訪れる外国人観光客が救急病院で緊急受診するケースが増えている。

 県医師会が離島を含む県内19カ所の救急病院を調べたところ、2015年度は1492件に上った。

 13年度の351件に比べ、約4倍の伸びだ。

 救急患者は、台湾や香港など、外国人観光客の多数を占めるアジア圏出身者が多く、けがや病気など突発的な症状がほとんどだという。

 県内の外国人観光客数は16年度、212万9100人と過去最高を更新し続けている。16年度、急患はさらに増えている可能性が高い。

 県は今年3月、改定した「第5次県観光振興基本計画」で21年度までに外国人観光客を現在の倍の400万人にすると上方修正している。

 急患の受け入れ態勢の整備は喫緊の課題だ。

 ただ県内のほとんどの医療機関には外国人観光客を受け入れるノウハウがないのが実情だ。言語の壁が立ちふさがり、患者と医師のコミュニケーション不足が懸念される。患者の生命に関わる場合があるからなおさらだ。

 緊急手術や入院が必要なケースでは、医学の知識を持ち、専門用語を説明できる医療通訳やコーディネーターが不可欠だ。だが一病院で多言語の患者に対応できるスタッフを常駐させるのは困難だ。

 外国人観光客が安心・安全に沖縄滞在を楽しむためにも医療通訳をはじめ、患者に対応できるような指定病院を整備するなど受け入れ態勢を充実させる必要がある。

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 緊急受診の患者の増加に伴い、医療費の未払いも増えている。今年3月末までに、5施設21件、未収額は計827万円に上る。医療費の未払い問題は、病院経営を圧迫しかねない深刻な問題だ。

 急性大動脈解離の患者を受け入れた県内の病院は緊急手術と退院までの医療費、計512万円がいまだに回収できていないという。

 団体ツアーでなく個人旅行で来沖する観光客は、旅行保険に加入していない人が多く、医療費未払いの要因になっている。観光庁によると訪日客の約30%が旅行保険に加入していないという。県医師会が未払いの理由を「旅行保険に加入していなかった」「医療費が高く、現金やクレジットカードで決済できなかった」などを挙げていることからも実情がうかがえる。

 県は、外国人観光客の本国や旅行会社に対し、日本の医療保険制度について積極的に周知させなければならない。

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 厚生労働省は今秋、医療費の未払いの実態調査をする。県医師会は個人開業のクリニックにも広げ、全県的な調査を行うが、むしろ観光立県を掲げる県が主体となって進め、対策に乗り出すべきだ。

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて外国人観光客は確実に増えていくだろう。急患の受け入れ態勢の整備や医療費の未払いは待ったなしの問題だ。

 県や県医師会、沖縄観光コンベンションビューローは同じテーブルに着いて実態把握と対策について早急に話し合いを始めるべきだ。

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