串カツ注文はメモか手話で 京都に聴覚障害者の店

©株式会社京都新聞社

店を訪れた客と手話で談笑する前川さん(右)=京都市中京区

 聴覚障害者が経営し、同じ立場の人たちが店員として働く飲食店「串カツ&バー 前川屋」が、このほど京都市中京区にオープンした。聴覚障害者が飲食店で働くのは接客が壁になるケースもあるが、前川屋では客がメモに注文を書くシステムを導入した。経営者が修行した本場・大阪仕込みの味を客が楽しんでいる。

 前川憲司さん(47)=大津市=が経営する。平日は1人で切り盛りするが、土、日曜は、以前の勤務先の同僚など、京都府内の30代の聴覚障害者ら3人もアルバイトで加わるという。

 若い頃から「自分の飲食店を持ちたい」という夢を持っていた前川さんは2015年夏から1年半、知人男性が大阪市の通天閣近くで経営する串カツ店で修行し、食材や飲料など取引先との付き合い方などを学んだ。当時、聴覚障害がない他の店員は、前川さんとやりとりする時はゆっくり話し、客には「前川さんは聴覚障害がある。メモに書いて注文して」と依頼してくれた。

 また、店を訪れた聴覚障害のある友人らから「店側に聴覚障害者がいると気楽に行ける」と伝えられ、勇気づけられた。聴覚障害者同士が手話で話していると周囲から珍しがられ注視される悩みもあるが、店内では手話でやりとりでき落ち着けたのだという。

 修行を終えた前川さんは貯金を元手に、河原町通三条下ル近くのビル3階に約30席の「前川屋」をオープンさせた。週末の夜、聴覚障害者3人で訪れた三森芳さん(44)=大阪市=は「外食ではメニューのことを尋ねにくく困ることがあるが、ここでは何でもない日常の話も店員さんとでき、居心地がいい」と笑顔を見せた。大学の同窓会で訪れた若者グループは「メモに注文を書くシステムに違和感は全然ない。串カツもおいしい」と話した。

 聴覚障害者が経営とスタッフで携わる飲食店は全国的にも珍しいとみられ、店のフェイスブックを見て訪れる客も多い。前川さんは「誰にとってもアットホームな店にしたい」と話す。

 営業時間は午後6時~翌日午前1時。月、火曜は休み。問い合わせはmaekawaya.kusikatu@gmail.comへ。9月からは左京区の出町柳駅近くに移転する予定。

あなたにおすすめ