対馬沖サンゴ礁で白化現象

 世界最北端とされる対馬市豊玉町志多浦のサンゴ礁の一部が昨夏、付近の海水温が30度を超える日が続き、「白化現象」を起こし死滅したことが国立環境研究所(茨城県つくば市)などの調査で初めて分かった。

 同研究所などによると、志多浦の小綱漁港沿岸(北緯34度線付近)のサンゴ礁は、縄文時代後期にあたる約4300年前からサンゴの骨格が積み重なって形成されており、高さ約5メートル、幅約10メートル、長さ約200メートルに及ぶ。

 同研究所が2007年に発見し、サンゴ礁に3メートル四方の調査区域を設けて定点観測している。2016年1月時点では褐色の生きたサンゴで覆われていたが、同年12月時点では3割ほどが石灰質の白い骨格だけになる白化現象を起こしていた。同年7、8月は台風接近が少なかったため海水がかき混ざらず、対馬周辺の海水温が30度を超す日が通算30日ほど続いた。そのためサンゴに共生し光合成で栄養を補給する植物プランクトン「褐虫藻(かっちゅうそう)」が消えたことが原因とみられる。

 同研究所生物・生態系環境研究センターの山野博哉センター長は「対馬周辺の海水温は過去100年で1・2度上昇している。30度超の海水温が2週間以上続くと、褐虫藻は光合成できなくなる。水温が低いはずの北の海域で白化現象が起きたことは異常」と指摘している。

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