長崎大水害の雨量記録簿

 1982年の長崎大水害から23日で35年。この時に西彼長与町で観測した1時間雨量187ミリという数値は、全国各地で毎年のように豪雨災害が発生する中、現在も国内観測史上最高記録として破られていない。当時の雨量記録簿の原本が今、水害被災の記録写真などとともに、同町役場1階ロビーで公開されている。

 雨量計は当時、町役場の屋上に設置されていた。雨量に応じて自動的に針が動き、細かい升目の付いた紙に線を記入していく仕組み。雨量が50ミリに達すると線がいったんゼロに戻ってまた記録を始める。記録簿を見ると、7月23日午後7時から8時までの1時間で、線が3往復以上しているのが分かる。

 同町地域安全課長の山口功さん(58)は当時、雨量計を管理していた建設課の職員。「記録簿の数値を職員数人で読み取り、長崎海洋気象台(当時)に報告した。1時間に187ミリという雨量はあまりに多いので、後日気象台の予報官が直接記録簿を確認。それで数値が確定した」と証言する。

 長崎地方気象台によると、一般的に激しい雨と認識されるのは1時間30ミリ程度から。先日の九州豪雨の被災地で記録したのは1時間110~120ミリほど。当時長与に降ったのはそれ以上の雨だった。山口さんはバケツをひっくり返したような雨の勢いを記憶している。その後は被害確認や災害復旧の職務に忙殺され、「観測史上最大」と知った時の気持ちは覚えていない。

 長崎大水害で同町では6人が死亡。住宅や道路、河川などの被害総額は90億円を超えた。山口さんは「このような災害はまたいつ起こるか分からない。いざというときに避難行動が取れるよう、当時の記憶は伝えていかなければならない」と話している。展示は今月末まで。

© 株式会社長崎新聞社