戦禍の空残る記憶 相模陸軍飛行場元教官の遺品写真展示

 終戦72年の夏を迎え、愛川町郷土資料館(同町半原)が恒例の企画展「戦争の記憶」を開催している。今回は同町中津にあった相模陸軍飛行場の関係者遺族らから寄贈された写真や墜落した練習機の部品など103点を展示、戦争の悲惨さを伝えている。

 初公開の写真は24点。同飛行場で教官を務めた田原全由さん=大分県在住、昨年6月死去=の長男、田原聖司さん(69)=愛知県在住=が昨年末に寄贈した。

 飛行服姿の田原さんとその教え子たちとの写真は終戦間際、激しい訓練の合間に撮影された。広い飛行場でエンジンを始動する最新鋭の戦闘機「疾風」も写っている。

 写真は田原さんがアルバムに整理・保存していたもので、死亡後に家族が見つけて寄贈。台紙の余白に該当者の氏名や消息などが記されており、同飛行場に関連する貴重な資料になった。

 また今年2月、相模原市緑区の男性(63)が提供した95式中間練習機(通称赤トンボ)の部品も展示している。木製で、横約1・1メートル、縦約16センチの三角形。丹沢で墜落した機体の回収に当たった男性の祖父が持ち帰った。自宅の物置に放置されていたが、写真寄贈を伝える本紙記事を見て、同館に連絡したという。

 山口研一館長は「練習機の墜落事故もかなりあったと思うが、記録が残されていないので詳細は不明。専門家3人に鑑定を依頼し、複葉だった上の翼の骨組み部品とほぼ特定した」と話している。

 企画展は8月31日まで。入館無料。同19日に講座「戦争遺跡と相模陸軍飛行場」、同24日に見学会「相模陸軍飛行場遺跡をめぐる」も開催する。いずれも無料で定員20人。同1日から参加を受け付ける。問い合わせは同館電話046(280)1050。

 ◆相模陸軍飛行場 陸軍が愛川町中津の桑畑などを買収して1941年6月に建設。広さは南北約1800メートル、東西約1400メートル。少年飛行兵の養成施設として開設され、戦局悪化に伴って戦闘機部隊も配備された。通称は「中津飛行場」、隊員の間では「厚木飛行場」とも呼ばれた。

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