相模原殺傷1年で追悼式 心の傷癒えぬ参列者

 19人の命を奪い、家族や職員の日常を一変させた相模原殺傷事件から1年。相模原市内で24日に行われた追悼式で、未曽有の惨事で深い悲しみを負った当事者は、声を震わせながら苦悩の日々を振り返った。「守ってあげられず申し訳ない思いで、時間が止まったような1年でした」「あなたたちのことは決して忘れません」。心の傷が癒えぬままに前を向こうとする姿に、参列者からも涙声が漏れた。

 「あの日がなければ今年のサクラも一緒に見上げることができていました。あの日がなければ、穏やかな毎日が繰り広げられていたに違いないのです」 涙で声を詰まらせながら追悼の辞を読み上げた入倉かおる園長(60)は、事件前の思い出と悲しみにくれる今を重ねながら言葉をつないだ。

 「園に身を置くと、あなたの息吹を感じます。風に吹かれると、あなたのしぐさがよみがえります。まぶしい朝の日差しに、あなたの笑顔を思い出します。色とりどりのアジサイが、あなたの服と重なります」 惜別の念は、再び夏が訪れた今も尽きない。犠牲者を悼む時間さえ得られない中で日々の支援に励んでいる状況を語り、「高い空から『立ち止まるな』と叱ってください。高い空から暮らしを取り戻すのを見ていてください」と呼び掛けた。

 入所者の父母らでつくる家族会の大月和真会長(67)も「怖かったろうに、痛かったろうに。なすすべもなく命を奪われ傷つけられた方々の無念さを思うと、今でも体が震えます。遺族が味わった苦悩を思うと心が震えます」と語り、冥福を祈った。

 参列者は目を潤ませながら耳を傾け、祭壇で静かに花を手向けた。式典後、重傷を負った尾野一矢さん(44)の父剛志さんは「遺族にとっても苦痛の1年間だった。差別社会が少しでも変わるような運動をこれからも続ける」と強調。車いすで訪れた脳性まひの殿村久子さん(61)は「障害があってもなくても関係ない社会になってほしい」と願いを込めた。

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